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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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二十二世紀の「ヒト」

14/07/24 コンテスト(テーマ):第六十二回コンテスト 【 未来 】 コメント:2件 坂井K 閲覧数:995

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 私が弁当の準備をしていると、上司のマツナガから連絡が入った。メールを開く。「事件だ。早く来い」との文字。返信しつつ息子の顔を見る。「ゴメン。お弁当作れそうにないよ」「いいよ。パン買うから。それより、気を付けて。お母さん」ありがとう、息子。

 俺にとって、妻は最高のパートナーだ。彼女は完璧だ。顔も。スタイルも。性格も。そして、性の相手としても。だから俺は彼女を放したくない、いや、彼女から離れられない。妻だって、そう思っているはずだ。きっと。――なのに、二人の間に出来た息子のことは、心の底から好きにはなれない。どうしても。

 署に着くと、すでに犯人は連行されていて、取り調べが始まるところだった。私の姿を見つけ、マツナガが手を挙げる。「おう、来たか。取り調べ、立ち会うか?」「――それより、子供はどこです。無事なんですか?」「ああ、傷は多いが、致命傷は受けていない」私は胸を撫で下ろす。

 二人きりでいるとき、息子に顔を見つめられると、つい言ってしまう。「向こうを向いといて」と。あいつの顔は、妻よりも私に似ている。せめて妻の方に似ていれば、今よりは可愛く思えたかも知れないのだが……。

 取り調べは部下のヨシオカたちに任せ、私は医者の立ち会いのもと、虐待を受けた子供から話を聞く。「カズマくん、今、話せるかな?」資料によると6歳、私の息子と同い年だ。――が、随分小柄で、痩せている。「うん」少年は小さな声で頷く。「お父さんから、どんなことをされたのかな?」嫌な役目だ。

 俺が妻を好きになったのは、自分とは全く違った存在だからだ。ヒトは、自分の持っていないものを持っている存在に惹かれる。それは彼女も同じだ。全く逆の存在だからこそ、彼女は俺を好きになった。容姿も。性格も。そして、種族も。

 少年は、小さいけれどしっかりした口調で話し出す。「お父さんはね、毎日僕をいじめるの。口をふさいで、お腹の辺りをつねったりするの」「見せてくれる?」彼は着ている服を捲り上げ、つねられた跡を見せてくれた。「酷い……」思わず口に出ていた。

 俺は人間。妻はロボット。今では珍しくもない組み合わせだが、15年ほど前はまだ珍しく、「結婚は止めとけよ」と、よく言われたものだ。が、俺は彼女が本当に好きだったから、躊躇することなく結婚し、幸せな新婚生活が始まった。――そう、幸せだった。息子が生まれるまでは。

 少年は俯いていた顔を上げた。額の半分ほどが透き通っていて、頭蓋骨が見えている。――彼は人間とロボットとのミックスなのだ。今世紀初頭以降、ロボットは、外見では人間と見分けがつかなくなった。結果、ロボットを愛する人間が急増した。国は、「生物型ロボット法」を施行し、歯止めをかけようとした。

 俺たちが結婚した当初は、人間とロボットとの間に子供を儲けることは不可能とされていた。子供を持とうと思えば、養子をとるか、自分たちに似せたロボットを作ってもらう以外、方法が無かったのだ。俺はそれでいいと思っていた。――なのに、技術者の連中め、余計な技術を確立しやがって。

 生物の形態を模したロボットは、半身を透明にして内部を明らかにし、一見してロボットであると認められなければならない。――それが、「生物型ロボット法」の要旨だ。この法律の狙いは、「内部の機械類を見せることで、人間がロボットに愛情を抱きにくくする」というところにある。

 人間とロボットとの間で生殖が可能になったのは、俺と妻が結婚して8年ほど経ったころだ。俺は、妻を生殖可能な状態にすることには反対だった。が、妻の懇願に負け、手術を許した。そして1年後、息子が誕生した。

 国の思惑に反し、「生物型ロボット法」が施行されても、ロボットを愛する人間は減らなかった。少子化を憂慮した国は、次の手を打った。それが、「人間とロボットとの間の生殖技術の確立」だった。ロボット技術と生殖技術が共に世界最高レベルだったこの国にとって、その技術の確立は難しいことではなかった。

 息子が赤ん坊のころは、好きになろうと努力した。が、心の奥底に、どうしても受け入れられない部分が残った。似ているが故に違いが際立つ。そして、俺はその違いを受け入れられない。息子は俺に似ている。だからこそ見たくない。身体中の様々な箇所にある透明な部分を。その下の骨や筋肉を。

 ミックスの子供を虐待する人間の親は、決して少なくない。が、決して多くもない。大多数の子供たちは、両親に愛されて暮らしている。私の息子もそうだ。「人間とロボットとの間の生殖技術の確立」それが人間にとって、また私たちロボットにとって正しかったのかどうか、私には分からない。――ただ、私たち純粋なロボットも、ミックスも、もちろん純粋な人間も、全て平等に「ヒト」である。私はそう思っている。


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このストーリーに関するコメント

14/07/28 かめかめ

ミックス息子はつねられてどうなってたのか気になります。
皮膚部分をつねられたのか?透明部分か???

14/07/28 坂井K

コメントありがとうございます。

つねられたのは、おそらく人間の皮ふの部分です。皮ふに出来る痣を見て初めて、父親は、息子が自らの血を引く「ヒト」であることを実感できたのでしょう。

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