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FRIDAYさん

こんにちは。FRIDAYといいます。 ときどきどこかのコンテストに投稿しようと思います。 興味と時間が許すなら、どうぞお立ち寄り下さいませ。   “小説家になろう”でも遊んでいます。宜しければそちらにも御足労いただけると嬉しく思います。 http://mypage.syosetu.com/321183/

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夜を歩く

14/07/15 コンテスト(テーマ):第六十一回 時空モノガタリ文学賞【 夜に光る 】 コメント:0件 FRIDAY 閲覧数:909

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 月は半欠けだった。星もあまり見えない。けれども街灯のお陰で暗くはない。
 蒸し暑く、肌には常にうっすらと汗を浮かせている。
 夏の夜だ。
 どこかから、蛙の鳴声が響いている。
 小川沿い。
 人影は二つ。
「――だから、お前は飲み過ぎだって」
 男が、肩を貸してやっている女に呆れた声をかける。対して女は、
「だって、皆が飲め飲めって言うからさあ……」
 声は芯がなくへろへろとしており、足元もおぼつかないようだ。
「それでノセられたお前が飲むから面白がるんだ。今度からは適当なところで上手く逃げろ」
「テキトーなとこって?」
「適当は適当だろ」
「わっかんないよー、そりゃあ、ユー君はお酒に強いからいいんだろーけどさー」
 急に声を大きくし、拳を振り回す女。ああもうこの酔っ払い、と男は女の腕を下げさせる。
 何かの飲み会の帰りなのか。したたかに酔っている女を、男が送り届けているところらしい。
「俺は別に強いわけじゃないけどな……自分で歩けなくなるほど飲むなって話だ。今度からは気を付けろ。ただでさえ世の中物騒な上に、血気盛んな男共だってなあ――」
「へーいへい、気ぃつけますよぅ」
 唇を尖らせ、女は実にぞんざいに返す。はあ、と男は深いため息をついた。
 と。
「――んん?」
 突然、女があらぬ方向を見て立ち止まった。不意のことで、肩を貸している男がつんのめりかける。
「おっ、と、っと。いきなりなんだお前、」
「今なんか光った」
 あ? と訝しげな表情になる男に構わず道端の草陰を注視していた女は、「ほらまた!」と声を上げ男の肩から腕を引き抜いてそこへ駆け寄る。
「おいおい、いきなり何なんだ。光ったって、人魂だとか鬼火だとか……不用意に近づくなよ、おい」
 ぶつぶつ言いながら、男もそちらへ寄る。
 数歩。
 道端にしゃがみこむ女の背後に立ち、覗き込む。
「おいおいまさか、適当なこと言ってリバースしちまってんじゃ……」
 やや表情をひきつらせる男に対し、女は、しー、と言った。
「捕まえたよ」
「捕まえた? 何をだ。人魂をか」
 本気とも冗談ともとれない男の言葉はスルーして、女はこちらへ身を回し、椀にして閉じた両の手をゆっくりと開いた。
 ぽぅ、とそこで光るものが、確かにある。それは、
「――蛍?」
 男の呟きに、女は嬉しそうな笑みを浮かべながら頷いた。
「びっくりだよ。こんなところにもいるんだね。この子だけじゃなくて、他にも結構いるみたいだし――」
 言われて、男も草陰へ視線を向ける。すると確かに、陰の中に光るものが結構いる。
「蛍か――いつ以来かな」
 呟く男に、ふふ、と笑いながら女も頷いた。
「こんな珍しい体験をしたのも、私のお陰だね。感謝しても宜しくてよ」
「するかよ酔っ払い」
「ケチ」
 笑う女の手から、蛍が音もなく飛び立った。明滅する光が、ふらふらと舞い上がる。
 それにつられたのか、草陰にいた他の光たちも一斉に舞い上がった。
「わあ――」
 小さく、女が歓声を上げる。
 一瞬、とも言えるほどの短い時間。
 乱舞する蛍の光で、幻想的な風景が形作られる。
 男ですら思わず嘆息をもらす光景の中、しゃがんだ姿勢のままの女が、振り返って男を仰いだ。
「――綺麗だね」
 蛍に彩られた女の笑顔も、また言いようもなく綺麗で。
 男は思わず視線を逸らしながら、そうだな、と答えたのだった。


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