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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
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MALADROIT

14/07/13 コンテスト(テーマ):第六十回 時空モノガタリ文学賞【 涙 】 コメント:6件 光石七 閲覧数:1521

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 朝教室に入ると、クラスメイトの視線が私に集まった。
「ひより、その髪どうしたの?」
聞かれて当然だろう。ロングで通してきた私が突然ショートになったのだから。
「ただのイメチェン、気分転換。いい加減鬱陶しかったし」
用意していた答えを返す。
「だけど、今まで切っても整えるくらいで短くしたこと無かったじゃん。もしかして失恋?」
「まさかあ。ひよりのキャラじゃないでしょ」
「ひよりはそんな女々しいことしないって。フラれる前に自分からフッちゃうタイプ」
「だよねー。でもこの髪型、すごくいいよ。ひよりに合ってる。これでバスケしたら、下手な男子よりカッコいいかも」
みんなの言葉に愛想笑いで対応しながら、胸がちくりと痛む。――やっぱり私ってそういうイメージか。
(ひよりは強いから……)
恭ちゃんの声が頭の中でリフレインする。

 子供の頃から恭ちゃんが好きだった。二つ年上の幼馴染で、幼稚園、小学校と一緒だった。一つ違いのお姉ちゃんは体が弱くてあまり一緒に外遊びができなかったけれど、その分恭ちゃんが遊んでくれた。バスケも恭ちゃんから教わった。上達すると恭ちゃんが褒めてくれて、それがとてもうれしかった。一緒に練習するのが楽しかった。男の子が内気なお姉ちゃんにちょっかいを出してくると、恭ちゃんと二人で立ち向かった。
「ひより、やるなあ。あいつらタジタジだったじゃん。雪乃、いい妹持ってよかったな」
恭ちゃんのお褒めの言葉が心地良かった。もっと恭ちゃんに認めてもらいたくて、勉強も一生懸命やった。クラスの係を積極的に引き受けた。恭ちゃんが髪の長い子がタイプだって言うから、髪を伸ばした。
 中学から恭ちゃんとは別々だったけど、家が近いからたびたび顔を合わせていた。じゃれ合いのようなやりとりも変わらなかった。恭ちゃんに色恋の気配は無く、私は密かに自分が恭ちゃんに一番近い女の子じゃないかと思っていた。恭ちゃんのために頑張ってきたし、恭ちゃんも私を選んでくれるかもしれない。けれども「好きです」とか「付き合ってください」とか言うのは照れ臭かった。
 でも高校生になって、きちんと想いを伝えたいと思い始めた。恭ちゃんが県外の大学に行くかもしれない。部活の合宿中に告白の決意を固めた。そして帰ってすぐ恭ちゃんを呼び出したのだけど……。
「ごめん、ひよりの気持ちには応えられない」
玉砕だった。
「ひよりのことは好きだし、妹のように思ってる。だけど、僕が一番大事にしたいのは雪乃なんだ」
まさかの名前を恭ちゃんが口にした。
「雪乃は優しい分繊細で、不安やストレスがすぐ体に出る。そばで支えてやらないと」
混乱する頭で恭ちゃんの言葉を分析しようとした。
「……それって恋愛感情? 本当にお姉ちゃんが好きなの?」
「うん、好きだ。雪乃の笑顔が。雪乃にはいつも笑っててほしい」
即答されてしまった。お姉ちゃんも恭ちゃんに好意を抱いていることはうすうす感じてたけど、気持ちを出さないようにしてるようだったし、私のほうが恭ちゃんと話すことが多かった。二人が両想いなんて……。
「実は昨日、雪乃に『彼女になってほしい』って言ったんだ。OKしてくれたよ。雪乃から聞かなかった?」
「合宿に行ってたから……」
「そうか、悪かった。……でも、ひよりは強いから大丈夫だよな?」
――強い? その言葉に反発を覚えながらも、私は恭ちゃんに言い返すことも泣いて縋ることもできなかった。恭ちゃんと別れた後、そのまま美容院に向かった。

 合宿が終わったら正式にレギュラーを発表するというお達し通り、部活の終わりに監督が全員を集めてメンバーの名前を告げた。
「ひより、おめでとう!」
「やったね!」
「一年からは一人だけ。試合に出られない先輩もいるのに、すごいじゃん」
帰り道、友達が祝福してくれる。
「ひよりは頭もいいもんね。いつも学年十位以内でしょ?」
「出来過ぎだよ。文武両道、手先も器用で、責任感が強くて友達思い。しっかりしてて、クラス委員に推されるのもすごくわかる。あ、髪切ったら少年ぽくて、余計頼もしい感じ。惚れちゃう」
「柚香、ちょっとアブナイよー」
みんなに合わせて笑顔を作ったものの、心は笑ってなかった。――勉強もスポーツもできる。気が強くてしっかり者。だからって……傷つかないわけじゃない。涙を見せないからって、平気なんじゃない。
「あれ? 雨降ってきたよ」
空からの雫たちはあっという間に勢いを増した。
「うそっ、今日そんな予報だった?」
「傘持ってきてないよー」
みんな足を速めた。――今なら少しくらい泣いてもいい。雨だって言い訳できる。
「ひより、急がないと濡れちゃうよ。……ひより?」
ほんの少しのつもりで緩めた心のネジは、一気に弾け飛んでしまった。


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このストーリーに関するコメント

14/07/14 草愛やし美

光石七様、拝読しました。

こういうパターンは辛いですね。頑張って来たのは全て彼のため。わかるなあ、こういう女の子の気持ち。でも、違った方向だったんですね。
でも、ほんと、どうして、男の人って、守ってあげることに情熱を傾けるのでしょうね。強そうに見えたって、中身はわからないのに……。弱弱しく繊細な方がはっきり言って恋には強いようです。
しおりさん、辛いけど、あなたでなけりゃ駄目って人も必ずいますから、今は何の慰めにもならないだろうけど……、そう声をかけてあげたいです。

14/07/14 草愛やし美

( ̄0 ̄;アッごめんなさい。「ひより」ちゃん、思い込みで誤字してしまいました。(_ _(--;(_ _(--; ペコペコすみません。

14/07/14 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

MALADROITって、調べてみたら不器用な、っていう意味なんですね。
まさに、不器用な女の子、でもめっちゃ一途で健気で、かわいい!
素直に泣くことができすに
>今なら少しくらい泣いてもいい。雨だって言い訳できる。
このセリフ、ひよりのそんなキャラクターを物語っていて
決まった!ってかんじでした。
いつかそんなひよりのよさをわかってくれる人がちゃんと現れますよ〜♪

14/07/14 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

こんなに素敵なひよりちゃんなのに、意中の人にフラれちゃうなんて・・・

男の人って、自分が守ってあげたいと思うようなタイプに弱いんでしょうね。
ドンマイ、ドンマイで、今度はひよりちゃんがが守ってあげたい男の子との出会いを期待してます。

2000文字で上手くまとめられた秀作だと思いました。

14/07/15 gokui

 読ませていただきました。
 最後の一行がこの物語のすべてですね。人間って、男とか女とか関係なく弱いものなんですよね。どう見せているかの違いだけで。ひよりちゃんは、強く見せて彼にアピールしていたのに、それが逆効果だったとは。でも、今後もひよりちゃんには強くいてほしいですね。

14/07/15 光石七

>草藍さん
コメントありがとうございます。
少女漫画チックな雰囲気を出したかったので、彼のために頑張る気持ちがわかるとのお言葉はうれしいです。
本当の中身、本当の心まではなかなかわかりませんよね。恭ちゃん、ひよりを近くで見てたはずなのに……
ひよりへのエール、感謝です。もう少し時が過ぎれば、ひよりの心にも入っていくと思います。

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
タイトルの意味まで調べてくださり、恐縮です。
元々“別れの時は雨が降ればいい 涙流しても あなたにはわからないから”というある曲の歌詞から話を書くつもりでしたが、素直に泣けないひよりのキャラが捨てがたくなり、最後に無理やり雨をこじつけた感じです(苦笑)
気に入っていただける一文になったようで、うれしく思います。
ひよりをまるごと受け止めてくれる人が現れてほしいと、作者も願っています。

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
運動音痴の私はひよりが羨ましいのですが(苦笑)、ひよりはひよりで悩みや苦しみがあるわけで。何があっても傷付かない人っていないですよね。
ひよりが守るのか、ひよりが守られるのか、どちらかわかりませんが、ひよりを理解してくれる人が現れたらいいなと私も思います。
秀作とはもったいないお言葉です。

>gokuiさん
コメントありがとうございます。
最後の一文はわかりづらいかなと少し不安でしたが、読み取ってくださったようでホッとしました。
自分を強く見せるひよりの姿勢は根が深いでしょうが、友達の前で泣いたことで、弱さをさらけ出してもいいんだということを少し覚えてくれたらなと思います。

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