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リアルコバさん

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ヒノモトの恋

12/06/15 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:2295

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《カタカタカタカタ》 タブレットと音声認識であまり見掛けることの無くなったキーボードの音が、今となってはモダンにさへ見えるコンクリートの部屋に響く(120年か)この建物の建築時期が西暦2000年であることを資料で読んだ事がある。
【ヒノモトムサシ】 それがこの物語の主人公である。



「あ〜ぁやっぱりこうなっちまったか」ヒノモトが溜め息を付いたのは半年前の4月1日。 タブレットに国政メールが届いたからだ。【おめでとうございます。婚姻法第69条に基づき772629の女性と本日付で婚姻届けを受理しました。双方の合意があればお逢いする事が出来ますつきましては・・・】


少子化による人口減少は国家存続の危機となり、国は30歳を迎える未婚の男女をランダムに選び出し一年間結婚させる人権も何もない強行策に出た。今でこそ一年間はお見合いや事実婚が認められているが、30年前は《増子化法》といい、選ばれた男女の精子と卵子を集めて人口母胎で受精させ子供をつくるだけの法律だった。その第一期生にあたる者の苗字は皆《ヒノモト》であり、公僕になるために二十歳まで国に不自由なく育てられるのだ。

《見合い希望》 にチェックをしたが半年たっても連絡はない。相手が見合いを希望しないらしい。(どんな女性なんだろう)両親がいる一般家庭で育った子は《ヒノモト》姓との結婚を嫌う傾向は、統計にも顕著に現れている。 しかしランダム抽選だから現時点では知られてはいない。いやもしかすると相手の女性も《ヒノモト》の可能性もある。 どちらにしてもこのままでは精子だけ取られて顔も見ることのない子供を一人作るはめになりそうだ。

「逢ってみてぇよなぁ」 ヒノモトも人並みに恋はした。しかしヒノモト以外の姓を持つ女性は、差別的なまでに近寄らずヒノモト姓の女性は寂しすぎた。「結婚したら新しい名字になれる、子供を育て笑顔ある暖かい家 憧れるよな」 ついこの間ヒノモト同士で結婚して鈴木に変わった同期に、つい愚痴をこぼす。「調べてやろうか」酔った勢いと同情も混じる鈴木の提案に笑顔で嘆願した。

【国家国民ナンバー管理センター】個人情報を管理する最高機密部署が鈴木の職場だ。【772629】のデータベースを調査名目で閲覧し頭に叩き込んだ。

「解かったぞ、一般人だ。名前は北條」「ほう・・・じょう・・・格式ありそな家だな」「いやそうかもしれないが今は横浜で一人暮らしだ。二年前に両親は亡くなっている」「なぜ」「そこまではウチのデータにはないよ。写真は 勘弁してくれ持ち出したら首が飛ぶ、可愛い娘がいるんだからさ」それでもその情報はヒノモトにとって充分な物だった

ヒノモトは恋に落ちた。北條直美と云う見たことのない女性に。
【北條直美様 貴女を一目見たときから僕の胸は高鳴りました。何の縁もなく見知らぬ貴女に恋をするのは失礼な事ですが、昔から言われている一目惚れと云うものでしょうか】電脳日記に架空のラブレターを書くことで、自分の心をなんとか誤魔化す毎日が続いた。勿論鈴木の活躍は抹消してある。電脳日記は世界に配信され、同じような日記に埋もれてなんのコメントも戻っては来ない。

精子提供の期日は迫り、あと数ヵ月で法的婚姻も解かれる頃の事。
其を奇跡と呼ばずしてなんと云おうか。

【同じ名前へのラブレターってなんか嬉しいですね】
電脳日記にコメントが付く。(まさかあの北條さんではあるまい)
冷やかしだと承知でヒノモトは彼女とメール交換を始めたわけだ。

【私ねこれでも資産家の娘だったのよ。投資に失敗した父が自殺し後を追うように母が病気で死んじゃったの】
ヒノモトの身体に電流が走った。
【今は法的婚姻中だけどもうすぐ終わるの、あんな法律大っ嫌い。 そしてお金持ちじゃなくなったらさっさと消えていく男達も大っ嫌い】

産業は廃れ投資にと云う経済活動が中心の昨今、投資失敗した家庭は惨めであることは役所の窓口で知っていた。

彼女の愚痴が落ち着いた頃 ヒノモトは勇気を振り絞ってキーボードに打ち込んだ。
【僕も法的婚姻中です。ナンバーは《5200634》そして僕は両親を知らない《ヒノモト》です。どんなに悲しい思い出でも親や家庭の話は羨ましい気がします。僕の見知らぬ婚姻相手はナンバー《772623》本当に逢いたくてお見合いを希望したけれど、返信は有りません。相手がどんな人であれ家庭を持ち 慈しみあい子供を育て笑いの絶えない家族が欲しいと思っています】



このあとどうなったと思いますか? それは皆さんで考えて下さい。
ヒント?それは鈴木に聞いて下さい。彼は何度も披露宴のスピーチの練習をしたそうですから・・・。


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