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糸白澪子さん

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きらら

14/06/12 コンテスト(テーマ):第五十八回 時空モノガタリ文学賞【 転がる石のように 】  コメント:2件 糸白澪子 閲覧数:1825

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コン。
じりじりと陽光が降り注ぎ、ベタベタした空気が澱んだまま辺り一体を包んでいる。鈍色のアスファルトから陽炎が踊っていた。
コン。
軽い音を立てて転がる石はまるで私を皮肉っているかのようだ。似た者同士、こんなのとは似たくもない。数m先で止まった石は私を睨んでいる。直径5cm程度のそいつは明らかに私より小さいのに私を見下しているかのようだ。
もう一度蹴ってやろうと近づく。一陣の風が吹いた。手に力が入る。どうせ私にはこんなことしか出来やしないのだ。石を蹴って、転がして、たったそれだけ。誰にも勝てやしないのだ。何にも、特化してはいないのだ。横並びだと思っていた奴に追い抜かれた。いや、単に私が落ちぶれただけかもしれない。地面の上にころころと、ころころと。陳腐で、しかもこうやって在ることしか出来ない。風に押されて水に流されて、そしてこうやって人に蹴られるのだ。人に。
ジージージー
ミンミンミン
ジージージー
澄んだ音を濁音が消すように、みんみん蝉と油蝉が鳴いている。何処を見ても同じ色の快晴の天球が私を押しつぶしそうだ。太陽が、灼熱の太陽が私を熱する。体の中が沸いている。そんな錯覚が私を操った。
ガッ。
足の下に石の固さを感じる。踏みつけているのに尚こいつは私を見下してかかるのだ。
ガッ。
どれだけ力を込めて踏んでも私を見下している。
ガッ。
尊大な顔をして私を睨んでいる。
ガッ。
私が力を入れれば入れる度に反抗する。
ガッ。
私の足に痛みを与えることによって。
ガッ。
どうして…。
どうして私ばかりこんなに惨めな思いをしなくてはいけないんだ。
南中している太陽は、空気が滞留しているのをいいことに我が物顔で真上に居座ったまま動かない。握った拳から汗が落ちた。依然として蝉の濁った音に満ちている。
急に、風が後ろからやってきて、そして過ぎていった。いや正しく言えば背後から来た自転車がチリチリとベルを鳴らしながら私の横を走っていった。
『どけよ』
自転車は私に吐き捨てた。
ついに体の中が沸点に達した。眼球が飛び出んばかりに目を開き、顎に力が入って、ギリリ、ギリリと音を立てた。手の平に爪が食い込んでいく。


一滴の血が、音も無くアスファルトの上に落ちた。


気がつくと私は力いっぱい石を蹴り上げていた。全てがスローモーションだった。蹴り上げられた石は宙を切っていく。自転しながら前へ前へと宙を切っていく。私の体の熱も、少しづつ少しづつひいていく。あれほどまでに感じていた太陽の熱も、蝉の声も、もう何も無かった。唯、一つの石が前へと飛んでいた。
ごつん。
石が地面に落ちると、えらく鈍い音がした。それが何か、私を読んでいるように聞こえた。ふらふらと近づいてみると、そこにはさっきの石が見事に二つに分かれていた。その断面が晶々と輝いていた。
雲母だった。
白い雲母が太陽の光を浴びて晶々と輝きを放ちながら石の断面に散らばっていた。
ミンミンミンミン…
澄んだ声がはっきり聞こえる。
見上げれば、遠くに入道雲が柔らかに浮かんでいる。


私の頬には、優しい涙が伝った。


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このストーリーに関するコメント

14/06/12 糸白澪子

訂正します

少しづつ少しづつ→少しずつ少しずつ

14/06/17 かめかめ

気持ちがわかるような気がします

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