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nissy121212さん

ショートショートが好きで、色々書いています。 よろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢 作家として食べていくこと。
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何でも屋

14/06/09 コンテスト(テーマ):第三十二回 【 自由投稿スペー ス】 コメント:0件 nissy121212 閲覧数:748

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 俺の親父は、何の仕事をしているのかよく分からない。聞いても教えてくれなかったし、家に帰るのもいつも遅い。俺は次第に親父を疎ましいと思うようになった。

 俺は大学生になり上京して実家を離れると、もう実家へは戻らないと決めた。俺は親父のようにはならない。立派に独立してみせる。

 まずは、仕事の訓練だと思って、アルバイトを見つけよう。そう思った俺は、求人誌を眺めた。すると、ある求人広告が目に飛び込んで来た。


「何でも屋募集。給料は歩合制。あなたを変えてみせます!」

 俺は何でも屋という怪しげな仕事に応募する事を少しためらったが、歩合制の給料と、「あなたを変えてみせます!」という力強いキャッチコピーに魅かれて、気が付くと電話を掛けていた。

 数日後、俺は面接に向かった。場所は都心のオフィスビルだった。それも三十階建てビルの最上階だ。俺は今までそんな所に行った事もなかったので、若干の緊張と興奮を抑えられなかった。

 面接官は若い女性で、終始にこやかだった。聞かれた質問は、たった三つだった。

 「あなたはどんな仕事がしたいですか?」

 「何でもやれる自信がありますか?」

 「父親を尊敬していますか?」

 最後の質問は唐突でよく意味が分からなかったが、俺は正直に尊敬していないと答えた。
落とされるかもしれないが、それは覚悟の上だ。
 数日後、合格の電話があり、すぐにでも来てくれと言われた。
 俺はもちろん嬉しかったが、初めての仕事に不安がないといえば嘘になる。
 とにかく独立への第一歩だ、頑張ろう。俺は自分に言い聞かせた。

 
 仕事は、正に何でも屋だった。水道工事の依頼もあれば、介護、犬の散歩、買い物代行など、いわゆる家事に関する仕事を全て請け負うのが、何でも屋の仕事だった。

 俺は、最初は不慣れで失敗もしたが、次第に仕事にも慣れ、色んな仕事を任されるようになった。

 ある日、上司に呼び出され、これは重要な仕事だからへまするなよ、とくぎを刺された。
 依頼人の家の地図を見て、俺はぶったまげた。俺の実家ではないか。依頼主は母親になっている。

 俺は何で自分の実家の家事を仕事としてやらなきゃいけないんだと思い、気まずさから、仕事を断ろうと思った。しかし上司は頑として受け入れなかった。これは君にとって大事な仕事なんだ、行けば分かる。そう繰り返す上司の瞳には、光るものがあった。俺はしぶしぶ了承した。

 実家での仕事はどこかこそばゆいものがあったが、俺はプロとして掃除、洗濯、犬の散歩などを全て完璧にこなした。考えてみれば、実家にいた時は、どれ一つとしてやった事がなかった。俺は仕事を終えた時、実家の温もりを感じていた。やっぱり実家はいい。

 しばらく余韻に浸っていると、奥から両親が出て来た。二人とも目に涙を浮かべている。

「よく頑張ったわね。東京でちゃんとやっていけるか、お母さん心配だったのよ。」

「俺は信じていた。なんといっても俺の子だからな。」

「だから心配なのよ。」

「それはないだろう。ところで、お前に一つ相談がある。」親父は俺の方に向き直ると、意味深な笑みを浮かべてこう言った。

「正社員になってくれ。これは社長命令だ。」


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