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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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スパイ135: 諜報員名『卑弥呼』

14/05/30 コンテスト(テーマ):第五十七回 【 私を愛したスパイ 】  PRIVATE:I’S賞 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2067

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 乙姫子は、苦渋に満ちた表情でスペクテーの部屋をノックした。ここは、某海底数メートルに設置されているPKR基地(パクリの略)、ボスであるスペクテーは、部屋の奥にある豪華な椅子にふんぞり返り座っている。暗くてその顔は見えないが、無類の愛猫家であるスペクテー。相変わらず膝の上に愛猫を乗せている。現在、飼われているこの猫、真っ白な毛並はもちろんだが、瞳の色が左右違うオッドアイが素晴らしい。右眼は真紅のルビ色、左眼が澄んだサファイヤ色で、見事な真紅と深い蒼色をしている珍種、彼の一番のお気に入りになっている。スペクテーは猫を撫ぜ乍ら乙姫子を見つめ、低い静かな口調で話しかけた。が、明らかに声に怒りが籠っている。
「何度、失敗したら気が済むのだ、乙姫子。いつまで待てばよいと思っているのだ。山鯛国のエアーメタル養殖所の極秘文書を奪えという使命を忘れスマホゲームにうつつをぬかし遊んでいるのではないだろうな。今度失敗すれば、次はない、消えてもらうしかない、あと三ヶ月で完遂しろ」
「三ヶ月では……」
「優秀な諜報員のお前にできないはずがない。命がかかっていること肝に命じておけ」
 ◇ 
 山鯛国は、昔から養殖技術が発達した国。不可能と思われた鮪、鰻の養殖を可能にし、今や、海底に眠るエアーメタルを養殖できるまでにした。結果、山鯛国は、世界のエネルギー事情を牛耳る国と化した。その技術を盗もうと世界中からスパイ達が隠密潜入し、我先にその丸秘技術を盗もうと凌ぎを削っているのだ。
 乙姫子は、PKRの任務使命であるエアーメタル養殖技術を盗むために、様々なスパイの潜入を繰り返してきてきた。初めに潜入させたかぐや姫子は、かなりの美貌の持ち主で、山鯛国の政治家たちをたぶらかし求愛させることに成功したところまではよかったのだが、竹藪の中のゴールドバンブーに隠した密書が発覚、月へと逃亡した。秘密を握られた竹取の翁の殺害を企て用意した毒薬も暴かれ富士山頂で燃やされ処分されてしまった。かぐや姫子は、月界のうさぎに山鯛国の見張りを託し、面が割れているため某国へ整形の旅に出た。
 次に任じられた夕鶴姫子は潜入してすぐスパイ取締り強行猟師班により、林に隠していた鶴羽毛編みの潜水服を発見されてしまい、養殖所の海中へ身を投げた。羽衣天女姫子の場合は、虹の松原の砂浜でガールズバーならぬ天女バーを開業し養殖所の職員から秘密を聞き出す『サンドポール作戦』を決行したが、金銭執着欲が強かったため、ぼったくりを警察に摘発されてしまい、着用していた極薄スパイ服まで証拠品として奪われ逮捕された。かくして、業を煮やしたスペクテーに乙姫子が呼び戻されたのだ。 
 ◇
 乙姫子が、苦渋の顔でスペクテーの部屋を去るやいなや、彼の膝の上にいた猫が立ちあがり、ドアの下部のキャット専用扉を押し開け廊下に出た。鋭い視線を左右に投げかけ辺りの様子を伺った後、猫用トイレが設置されている洗面所に入る。猫は、猫専用扉を使えば、たとえ鍵のかかった部屋であろうと自由に出入りできる。洗面所から、猫用扉を使い、ついにはメインコンピュータが設置された隣室へと潜り込んだ。入室するやいなや、オッドアイの赤い右目を肉球で擦る。何と真紅の石がポロリと床に落ちた。眼球は二重構造になっていたのだ。目の奥には、金色に輝く本物の瞳が光っている。猫は、床の上のレッドルビーを裏返しそこにある小さな突起に肉球を押しあてムチッと押した。ルビーはすぐさま点滅を始めた。
 猫は、洗面所の点検口を開けるとそこから、滑るように階下へ。地下要塞の、地下から海へ抜けられる船着場まで滑降したのだ。滑降しながら、猫は左眼の青い石を取り出し、、停止した通風孔の蓋にその蒼い石を嵌め込んだ。とたんに黒い蓋はムクムクと動き出し楕円形に形状を変えた。それは潜入時に隠しておいた超小型猫用高速艇だった。
 猫は操縦席に乗り込むとすぐに出発させた。搭載された高性能ナビで瞬く間に海中へと躍り出た。高速艇が、基地のはるか海上に浮き上がったのとほぼ同時に、後方の海底から火柱が上がった。起爆装置が押された赤色眼球型超高性能爆弾が、PKR基地を爆破したのだ。
 やがて、山鯛国諜報本部からの、迎えの大型ヘリが猫の乗った高速艇の上空に到着。猫を引き上げた。猫の名は、スパイナンバー135の、諜報員卑弥呼だ。山鯛国では、優秀な猫の諜報員が世界各地に潜入し活躍している。猫ほどスパイに適する生物はいない。誰にも気づかれず密かに相手の基地奥深くまで侵入してに任務を完遂している。特に、諜報員として卑弥呼は代々、エリートとして君臨している。卑弥呼は、大和の大昔から山鯛国を救ってきたのだ。
 ヘリの上より下界を見下ろし卑弥呼が完遂した時の決め台詞を叫んだ。

「ひぃ〜みぃ〜ごぉ〜(135)にゃんむ終了にゃ〜〜!」


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このストーリーに関するコメント

14/05/31 鮎風 遊

目出度く、にゃんむ終了ですね。
古代の山鯛国はこんな構造になっていたのですね。
となると、今この辺をうろついてるニャンコもその子孫。
スパイ同盟結びたいですわ。

山鯛国、気に入りました。

14/05/31 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

山鯛国のスパイはキレ者ですね。

可愛いし、身軽で何処にでも潜入できる。
こんなスパイがいたら太刀打ちできません。

面白く、最後まで読ませて頂きました。

14/05/31 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

有名な姫がスパイだったとは! 
童話のもうひとつの顔を見たようで面白かったです。

でもどんなに優秀な人間でも猫の身軽さには敵いませんね。

14/06/04 草愛やし美

>鮎風遊様、拙い掌編お読みくださり感謝しています。

コメントありがたいです。今回のテーマも難しくて、大汗ものでようやく捻り出せたのが、このパロディ版でした。
山鯛国、猫が活躍する国ですから「鯛」は自分でも気に入ってます。なにしろ「鯛」ですから、縁起も良いかと。苦笑 コメントありがとうございました。

>泡沫恋歌様、コメント嬉しいです。

やはり卑弥呼ともなると、飛び切りのにゃんこでなければとオッドアイの目の色にも宝石色で対応しました。豹柄の素敵な猫にするか、それともライオンのたてがみ状の毛並みのものにするかと、一瞬迷いましたが、和の国ですから、豹やライオンより、白でと決めました。←どうでもよさげなこと考えてます私ですわ。苦笑 楽しんでいただけたとのお言葉が私にとっては一番です、ありがとうございました。

>そらの珊瑚様、拙いパクリ話に最後までおつき合いくださり嬉しいです。コメントまでいただき感謝しています。

猫の身軽さとあの小ささ、凄い超能力さえ感じます。犬のような忠実さを持ち、あのように気まぐれでさえなければ、必ずや優秀な諜報員になれるはずですよね。フットワークの軽さは犬より素晴らしいはず……。

>凪沙薫様、はい、な・な・なんじゃこら……です。

拙きパクリ作品になってしまいました。私を愛したスパイ、もう007しか思いつきませんでした。昔見たあのハラハラ感を今一度私の手でと張り切りましたが、すぐに思考が止まりました。難しかったですねえ、あのような偉大な作品シリーズに近づくこともできず、この卑弥呼に託すことになってしまいました。この作品では、楽しんでもらえたらという一心で書いていますので、自己満足だけはしています。というか──よくぞ、こんな拙い内容で、最後まで引っ張り書けたことだと我ながら感心しています。大汗たらたら〜〜です。
コメントありがとうございました。

14/06/06 ドーナツ

右の猫  面白い!

滅茶面白かったです。
毎回  独特の発想には頭が下がります。
こういう話、シリーズで是非、、なんちゃって。
すごく楽しませてもらいました。ありがとう。

14/06/08 草愛やし美

ドーナツ様、お読みいただき感謝。

猫ものはドーナツさんや泡沫恋歌さんの得意分野ですが、今回私も愚策ながら参加させていただきました。スパイ=007の頭しかない私。何とかパロディにと七転八倒して捻り出しました。大汗 少しでも、面白く感じて楽しんでいただけたなら、創作冥利につきます。嬉しいコメントありがとうございました。

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