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小李ちさとさん

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性別 女性
将来の夢 砂漠で死ぬこと。
座右の銘 おれが おれがの がを すてて おかげ おかげの げで くらせ

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人生、人生

14/05/27 コンテスト(テーマ):第五十八回 時空モノガタリ文学賞【 転がる石のように 】  コメント:0件 小李ちさと 閲覧数:1124

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やはり人間、ロックでなければ。

誰にも流されない。誰にも惑わされない。
自分だけの流儀で、自分だけの道を貫き、自分だけの信念を遂げる。
それこそが人間のあるべき姿だ。誰に何と言われようと、人と言うのはそうあるべきなのだ。

と、ラジオから流れた某有名アイドルの曲を聴きながら演説した。
隣でドラムをコピーしようと手足をぱたぱたさせていた彼女は、「うーん」と首を傾げて言った。


「自分の意志で動くのは大事だけど、転がる石じゃあ駄目だよ。それじゃあ丸くなっちゃうじゃん」


……ロックだ。この女こそロックだ。

その姿勢に感銘を受けた俺は即座に彼女に告白し、戸惑う彼女を「まずはお友達から」と説き伏せて、半ば強引に交際を開始した。
そうまでした3年後、俺は自分の夢だけしか考えきれなくて、彼女を捨てて上京する。
スタートは割と華々しくて、そこそこもてはやされて、なかなかイイ線いって。
けっこうモテたし、お金も入った。ライブをやればどこも満員になったし、CDもそこそこ売れた。このまま続いていくって、信じて疑わなかった。


「……にも関わらず、このザマだよ」
何にもなくなった。もう夢さえもない。
あんなに俺を燃やしていたものは、いったいどこに消えてしまったんだろう。
後はずっと転がり落ちるだけ、なんだろうな。
「はは。笑えるだろ、もう、笑うしかないだろ」
罰が当たったのかもしれない。あの頃、彼女を傷つけたことへの。
何も言わずに勝手に決めて、さよならも言わずに別れてしまった。親に勘当されて家で同然で上京した俺には携帯料金など当然払えるわけもなく、彼女との連絡も、すぐに取れなくなってしまった。
あんなに強引に付き合った俺のことも、とっても大事にしてくれたのに。
ライブには必ず来てくれて。良いところも悪いところも、全部きちんと言ってくれて。
新曲の感想は必ず3回聴いてから言う、ってルールが彼女の中にあって、そういうところも好きだった。聴き終わるまで隣で待ちながら、彼女の表情をずっと眺めていた。笑顔もあったし、泣いた時も、苦い顔の時もあったっけ。
弱気になった時は絶対励ましてくれて、ほんとうに、いつも、いちばんに俺の味方だった。

なのに、俺は。
なのに、君は。


「何でそんな顔で笑うんだよ」
「言ってやりたいことは、いろいろあったんだけど」
彼女はそう言って一旦言葉を切った。何かを探すように斜め上を見上げてから、俺を見つめて嬉しそうに笑う。
「今は君に会えたことのほうが嬉しいや」
今までずっと遠かったからね、と彼女は言う。その言葉が後ろめたくて、視線を外す。
「わたし、けっこうライブも行ったんだよ。ツイッターもフォローしてたし。軽くストーカーだったんですけど」
「……ごめん」
「いきなり君がいなくなって、相当落ち込んだ。お先真っ暗だ、人生終わりだってくらい泣いた」
「ほんとうに、ごめん」
「謝って許してもらえるって、思ってる?」
「思ってない」
「……思ってよ」
はっとして顔を上げた。
彼女が淋しそうに笑っていた。
「じゃなきゃ、もう君といられないじゃん。好きな人とはずっと一緒にいたいよ」
「……それは、俺へのプロポーズ?」
「そう取ってもらっても構わないけど」
「普通、こういうのは、男がすべきなのでは」
「普通とかどうでもいいよ。わたしが言いたいから言ったんだ」
あぁ、彼女は相変わらずロックだ。自分の信念で生きている。
「俺、何にもないけど」
「何かがなくっちゃいけないの?」
「辛いかもよ?」
「君がいなくても辛いよ。だったら、一緒にいて辛いほうがいいよ」
「しんどいと思うし」
「それもおんなじ話」
「……俺に愛想尽かしたり、嫌いになったり、するかも」
「ねぇ、今更そういうこと言う?」
呆れたように、彼女は笑った。
「そういうことは、どうでもいいの。君はわたしといたいの?いたくないの?」
「いたいです」
「わたしのこと、好きなの?嫌いなの?」
「好きです。好き。大好き」
「じゃあ、決まり」
彼女は立ち上がって俺の手を取った。
「どこまでも行こうじゃないの。転がる石なんか、蹴っ飛ばしてやる」


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