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ナポレオンさん

まだまだ未熟者ですがコメントもらえると嬉しいです。 忙しくてなかなか投稿できませんでしたが半年ぶりに復活してみました。 しかし、皆さんレベルが高いです^_^;

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フューネラル・ウェディング

14/05/16 コンテスト(テーマ):第五十六回 時空モノガタリ文学賞【 結婚 】 コメント:7件 ナポレオン 閲覧数:1131

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――結婚とは人生の墓場である。

冗談交じりに言われ続けてきたそんな格言も、今の時代の若者にとっては限りなく真理に近いものになっていた。


芽生え始めた夏の若葉が、穏やかな風に薫る6月の昼下がり。郊外の静かな丘の上にたたずむ白い教会では、今まさに若い二人の結婚式が執り行われていた。

カラーン、カラーン。

金色の鐘の音に祝福されながら愛の言葉を誓い合う二人は、人生最大の幸福の最中にいた。
新郎は、大手の食品会社で働く営業マン。その爽やかなルックスと人当たりの良い性格で、営業成績はいつもトップクラスだ。その努力が報われ、現在は若くして係長を務めるほどに会社からも期待されている、優秀な好青年である。
一方で妻は小さな病院のアイドルとして、医療事務をこなす可愛らしい女性だったが、このたびの結婚をもって惜しまれながらも寿退社。これからは夫のため、家庭を切り盛りする主婦としてその華奢で美しい腕を振るうのである。

やがて教会の扉から出てきた二人に対し、沿道で待っていたたくさんの友人たちは、涙ながらに祝福の言葉を贈る。そのあまりに幸福な姿に半ば嫉妬を感じつつ、皆、心の底から二人の幸せを祈るのだった。
「さて。皆さん。いよいよ式もクライマックスとなります。人生の門出に立つお二人にお手持ちの花びらをプレゼントしてあげてください」
司会の掛け声とともに、フラワーシャワーが始まった。宙を舞う色とりどりの花びらはそのみずみずしい姿を初夏の太陽に反射させ、きらきらと輝かせた。

「綺麗ね」
うっとりとした調子で新郎に寄り添う新婦が言う。
「君の方がね」
白いタキシードの新郎がきらりと歯を見せて笑った。

カラーン、カラーン。

鐘が鳴る。その時、再び歩き出した二人の前に全身黒づくめの男が立ち塞がった。
「あの人、刃物を持っているわ」
沿道にいた一人の女性が叫んだ。見ると、男の手には大きなナイフが握られている。
「お前らのような幸せな連中を見ていると腹が立つんだよ!まずは女の方からだ!」
男が新婦の方に刃を向けると。びくり、と新婦の体が震えた。穏やかだった式場が一転、緊張に包まれた。
「死ねっ!」
突進する男。飛び散る鮮血。沿道から飛び交う悲鳴。そして――。
そして、呆然と立ち尽くす新婦と震える足で彼女をかばう勇敢な新郎の姿が、そこにはあった。
「どうして、こんなこと……」
「お前を……愛してる」
崩れ落ちる新郎を抱きかかえる新婦、流れ出る鮮血で純白の衣装が赤く染まっていくのもも厭わず、二人は最期のキスを交わした。
こと切れた新郎の亡骸を支える新婦に先ほどの司会が駆け寄り、そっと蓋の空いた小瓶を渡す。
「嗚呼、あの人のいない世界なんて生きていても何の意味もないわ」
天を仰ぎ、やや棒読み気味の台詞を言うと、新婦は瓶の中の青い液体を一気に飲み干した。ゆっくりと夫の上に重なりあうように崩れる彼女の姿を見届け、沿道からは割れんばかりの拍手と、お互いの愛のために死んでいった二人を湛える歓声が上がった。
そして、新郎を刺した男性は素早く式場のスタッフに取り押さえられ、暗幕の中に引き摺られていった。

やがて、司会の男性がマイクを取り、ゆっくりとした重々しい調子で口を開いた。
「今この瞬間、新郎様、新婦様は最後まで仲睦まじく愛し合ったまま天へと召されました。しかし、何も悲観なさることはありません。結婚は人生の墓場と言いますように、お二方ともそのまま結婚していたらやがてお互い憎しみ合い、傷つけ合う日が来たことでしょう。お二人が今日この場で亡くなっていったことは、お二人の人生にとって最良の結末だったのだと思います。それでは皆様、人生最大の幸福を抱え、美しい世界へと旅立った二人を、今一度盛大な拍手でお見送りください!」
盛大な拍手とともに、沿道の友人たちは涙ながらに二人の名を呼び喝采した。そして結婚式は涙溢れる感動的なシーンを最後に、閉幕した。

カラーン、カラーン。

再び鐘の音が響き渡ると、いつの間にやらスタッフによって運び出された二人の死体がきっちりとした死に装束を身にまとい、白い棺に入れられた状態で教会の扉から現れた。

「皆様お待たせいたしました。新郎、新婦のお色直しも澄んだところで、これよりお葬式に移させていただきたく思います。会場まではバスで若干のお時間がかかりますので、どうか皆様方にはお二人を霊柩車の方にお乗せする間にトイレ等済ましていただくことをお願いいたします」



――結婚は人生の墓場。

そんな社会の風潮を反映して立ち上げられた、フューネラル・ウェディング・デザイン株式会社は結婚式の終わった夫婦をその場であの世送りにし、お葬式から火葬、埋葬までを同時に行ってしまうという豪快なブライダルプランでもって、現代の若い世代から好評を得ているという。


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このストーリーに関するコメント

14/05/17 草愛やし美

えっ、ええ!? ええええ!!?? 
ナポレオン様、拝読しました。そして、素直に驚きました。
今の現代社会を、これほど皮肉った話は、ないでしょう。結婚しない若者が、増えている一因に、結婚に夢を持てないがあるそうですね。周りの悲惨な結婚生活を見るにつれ、自然とこういった気持ちになってしまうようです。
いっそのこと、最も幸せな瞬間で飾ることができればという、この豪快なブライダルプランで結ばれたお二人は、きっと墓場の中で喧嘩するかもしれませんねえ(実感伴ってますかも……)。苦笑
ブラックなお話ですが、現代社会をうまく反映されていて、面白かったです。

14/05/18 ナポレオン

草藍さま
コメントありがとうございます。
驚いていただいてありがとうございます。確かにあの世に行った後に喧嘩しそうですね(笑)
ちょっとブラックすぎたかと思いましたが、面白いと言っていただけてうれしいです。

14/05/20 泡沫恋歌

ナポレオン 様、拝読しました。

いやいや面白かったけれど・・・これはアカンやろ?
幾らなんでも、新婚生活も楽しまない内に墓場行きは残念過ぎると思うけれど・・・

でも、ストーリーのテンポが良くて楽しめました。

14/05/22 ナポレオン

泡沫恋歌様
コメントありがとうございます。
……やっぱりアカンかったですか。今回スポンサーの企業様がいるので、余りにブラックな話は控えようとしたんですが、ついつい(汗)
まぁ楽しんでいただけて何よりです。

14/05/30 ナポレオン

凪沙薫さま
コメントありがとうございます。
……うん、入賞は絶対ないでしょう。
ちなみに、「結婚」というテーマでもっと変なものも考えたので時間があれば自由投稿スペースに投稿するかも……

14/06/05 かめかめ

驚天動地の結末!

この式、莫大な予算が必要でしょうね〜
犯人の人が一生をかけるわけですから。

14/06/09 ナポレオン

かめかめ様
驚いていただきありがとうございます。衝撃的な内容にしようと思いました。殺人については会社(決して未○総研とは関係ありません)が揉み消すので大丈夫です!

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