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ナツさん

昼ドラ系も、ほっこり系も、大好きです。 拙い文章ですが、読んでいただければありがたき幸せ… ぜひ、ご賞味ください・Д・ノ

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夢が覚めるまで

14/05/05 コンテスト(テーマ):第五十七回 【 私を愛したスパイ 】  PRIVATE:I’S賞 コメント:0件 ナツ 閲覧数:908

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「あちらのお客様からです…」
バーテンダーは私にそう言いながら紫色のカクテルを差し出した。クラシックが静かに鳴るこの店には私以外に数名の客がいたが、1人を覗いて皆、連れがいた。だから私はそのカクテルの送り主をすぐに見つけた。
軽く会釈をするとニコリと笑う、二十代後半と言った所だろうか?彼は私に近づいてきた。
「それ、そこまできつくないですよ?」
私は正直、飲むのをためらっていた。
「初対面の女性を酔わせて、頂こうなんてそこまで落ちぶれてるつもりはありませんよ?」
冗談なのか本気なのかわからない笑み。
「ええ、いただきます…」

ぼわっと口に広がる大人の味…
アルコール度数は、さほど高くないはずなのに。
初対面のナンパ男と普通に喋れている自分に驚く。
「…へぇ。会社のアドバイザーを?なら、様々な企業のことを知り尽くしてるんですか。」
「そんなですよ?私なんて半人前にもならないですから。…今回のクライアントも酷くて。」
守秘義務…家族にだって喋られないことが口から溢れ出る。と、同時に彼に惹かれている自分に気がつく。

どこまで喋ってしまったのだろうか。いつの間にか寝てしまっていた私は彼の声で目が覚めた。
「…お持ち帰り?そんなんじゃねぇって。…話?ふっ。聞けなかったよ。俺としたことがな…」
半目を開け、彼を見る。悲しそうな。愛おしい。
「…彼女はやめとけ…お前には渡さねぇよ。」
私はウトウトと再び夢の中へと落ちていった。彼の優しい声を耳にかすめながら。

「…んー。あれ?ここ…」
目が覚めると自分の部屋だった。ベッドサイドのテーブルを見るとメモ書きが置いてある。
『くれぐれも俺のような男に引っかからないように気をつけなよ。けれど、君は何も話さなかったね。残念だよ。マートニック。』

「マートニック…?!」
企業を狙うスパイとして有名だった。日本に来ているとは。女を落とすテクニックはピカイチだと言う彼はいわゆるハニートラップを使う男だと聞いていた。
「…夢だったのかも…ね…」
『You were the woman who failed me for the first time.The dream is a coming thing.』
〜君は初めて僕を堕とした女性だったよ。覚めない夢はないんだね。〜


「待ち人は来ないものなんですね。」
彼とであったBARはすっかり行きつけになってしまっていた。バーテンダーは私の言葉に何も答えず、頷く。私の手の中で煌めく紫色のカクテルを見つめる。
カランコロン…
目の前のバーテンダーのグラスを拭く手が止まり、コツンコツンと革靴の音だけが響く。
「ご一緒してもよろしいでしょうか?」
顔を上げることが出来ない。
「大丈夫ですよ。貴女から聞き出そうなんてもう思わない…いや、思えないですから。」
ゆっくりと顔を上げ、彼を見つめる。
ニコリと笑い、そうして彼はまた私を夢の中へと引きずりこんで行ったのだった。


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