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滝沢朱音さん

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Bloody Mary

14/04/26 コンテスト(テーマ):第五十五回 時空モノガタリ文学賞【 予感 】 コメント:0件 滝沢朱音 閲覧数:1386

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「多分、あたしを抱いたらもう満足なんでしょう」

「…………」

「男としての刻印を残したことで」

「…………」

「あなたはさらりとおうちに帰ってゆくんでしょう」

「…………」

「ケーキの箱を手に、やさしい笑顔で」

「…………」


――男の左手の薬指には、指輪が光っていた。女にはなかった。


「多分、あたしは嫉妬をもう抑えられないでしょう」

「…………」

「女としての刻印を独り占めしたくて」

「…………」

「あなたはあたしの姿に鬼を見出すでしょう」

「…………」

「鈍色のナイフを手に、かなしい笑顔で」

「…………」


――男は冷静を装いつつ、目は怯えていた。女はただ美しかった。


「仮初めの約束、満たされるのは束の間」

「…………」

「返り血を浴びたら、永遠にさよならできる」

「…………」


――女の声が、甘く変わった。


「でも、それだけじゃ、やだ」

「…………」


――女の肩が、少し近づいた。


「通り過ぎるだけじゃ、やだ」

「…………」


――女の手が、男の膝に置かれた。


「ずっとそばに居たい」

「…………」


――女は男に向き合い、その顔を覗きこんだ。


「多分、それは贅沢な願いなの?」

「…………」



 男は目を背け、残りのカクテルを飲み干した。

「……悪いけど、お先に」

 男は席を立とうとしつつ、目の端で女をそっとうかがった。



――じっと見ている。鬼のような目だ!!


「……マスター、これ、彼女の分も」

 男はカウンターにかなり多めの代金を置き、立ち去った。




 逃げ出すその背を見送り、バーのマスターはため息をついた。

「また初対面の客におごらせて。ナンパがウザいからって悪戯が過ぎるよ」



 女は笑った。

 女優志望の彼女が飲んでいるのは、朱色のBloody Mary。

「そんな予感がした、ってだけの話よ」


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