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桜井 隆弘さん

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プランB

14/04/21 コンテスト(テーマ):第五十五回 時空モノガタリ文学賞【 予感 】 コメント:4件 桜井 隆弘 閲覧数:1204

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 直美は博司の机の引き出しから、証拠を押さえた――サファイアのネックレス。
「私の誕生石はパールなんだけどね。どなた様にあげるのかしら?」
 直美は精一杯の皮肉を込めながら、光り輝くその石をまじまじと見つめた。すると、ネックレスに何か刻まれていることに気が付いた――『愛』の文字。
「あら、ご丁寧に……」

 直美と博司は結婚して3年目の夫婦になる。子供こそいなかったが、直美は何の不満も無くこれまで過ごしてきた。だがオツムの弱い直美にも、最近の博司の行動は怪しく思えていた。博司が仕事から帰ってくる時間が、毎日遅くなった。好きだったタバコも吸わなくなった。女の勘なのだろう――直美は博司を疑うようになっていた。
 そこへ来て、このネックレス。確かに博司はプレゼント好きな男だ。誕生日は勿論、結婚記念日には花束をくれるし、携帯電話まで博司が選んでくれた。だが、これは私の為ではない――問い詰めてやろうと直美は思ったが、それより喧嘩になった時に言ってやろうと思った。ネックレスを元のあった引き出しの奥へと戻すと、直美はハッとため息をついた。

「ただいま」
 例のように、今日も遅くに博司が帰宅した。今まで『愛さん』と一緒に居たのだろうか――博司の顔を見ながら、直美はそんなことを想像した。
「明日はお休みよね?」
「あー、明日は夜から会社の飲み会になっちゃったんだ」
 こいつ、やるな――直美には予感がした。

 翌日、洗面台の前で念入りに髪をセットする博司に、直美は冷たい視線を送っていた。
「なんで飲み会にジャケットで行くのよ」
 その先端を博司に向けて、トゲのある言葉を吐いた。
「ん? 何か言った?」
 のん気な答えに、直美は苛立ちを込めて言った。
「別に」

 駅へ向かう博司を、直美は尾行していた。確かに証拠品は押さえた。だが、それより強い犯行現場を目撃できるかもしれない。予感に揺らぎはなく、それが直美を動かしていた。
 博司が電車に乗り込むと、直美も隣の車両へと駆け込んだ。やっぱりおかしい――会社へ行く方向とは反対だ。連結口から博司を覗き込むと、携帯で電話をしているようだった。まったくマナーの悪い旦那だ。昨日ネックレスを見つけてから、旦那のやることなすことが直美には気に食わなく思えた。
 博司が駅に降りると、直美も降りた。すると、博司からメールが来た。
「直美、悪いんだけど、今からイタリアン・ボーノっていう店に来てくれないか? 住所は……」

 博司は直美に気付いてないようだったが、直美は意味が分からなかった。だが断る理由も無い――この駅からすぐみたいだし、向かってみようと思った。ただ、自分は家にいることになっているので、少し遅れて向かうことにした。

 お店に入ると、博司が待っていた。
「どうしたの? 飲み会だったんじゃないの?」
「今日は何の日か、分かる?」
 直美の質問を、博司は質問で返した。
「9月でしょ? 誕生日でもないし、結婚記念日はもう少し先だし……」
 思わず考えてしまうオツムの弱い直美。
「プロポーズした日だよ……永遠の愛を誓った日」
 博司の答えに直美は納得したが、最後の言葉が急騰ボタンを押した。
 他の女に気持ちを浮つかせることの、どこが永遠の愛だ――?
「あら、そう。じゃあ言わせてもらうけど、私の誕生石はパールで、サファイアじゃありません!」
 博司は驚いたようだった。
「あ……知ってたのか。じゃあ」
 そう言って、博司はサファイアのネックレスを直美に差し出した。
「何よ、だからサファイアじゃないって言ってるじゃない」
「誕生石ってさ、月によって決まるのが有名だけど、365日決まってるんだよね。直美の6月19日はサファイアなんだ」
「え、そうなんだ……」
「それとさ、手紙書いてきたから、聞いて」
 そう言って、博司は胸の内ポケットから手紙を取り出して、読み出した。

「直美へ。結婚してもうすぐ3年が経ちますね。直美には家のことを何から何までやってもらって、文句も言わずについてきてくれて、本当に感謝しています。3年前にプロポーズしてから、俺の気持ちは何一つ変わっていません。安物だけど毎日残業して、タバコを控えて買った誕生石です、受け取ってください。これからも、永遠の愛を誓います。博司より」

 博司の粋なサプライズ、そして『愛』の意味を知って、直美は泣いた。
「ちょっとトイレ」
 博司は気恥ずかしそうに席を立った。ふと直美は、過去にプロポーズ記念日なんて無かったなと思った。

 トイレに入ると博司は再び電話をかけた。
「もしもし、愛? 直美にGPS携帯持たせといて良かったよ。サファイアのことまでバレてたし、危なかったなー。大丈夫、プランBで誤魔化したから。今日誕生日なのに、ごめんな。昨日から嫌な予感がしてたんだよな」


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このストーリーに関するコメント

14/04/22 草愛やし美

桜井隆弘様、初めまして、拝読しました。

最後に声をたてて笑ってしまいました。プランBですか、な〜〜るほど、そういう設定を考えてから行動しているんですね。今時の、旦那様って。ゲーマー世代は、きっと、賢いのでしょうね。予感も素晴らしいものかもしれませんね。私達団塊の世代にとっては、女の勘だけで何とかなったのですが、なかなか困難な時代になってきていますね。
女の勘プラス予感も駆使しなければいけないのでしょうね。旦那様、一枚上手?でもね、きっとそのうち、復讐されるかもですよ〜。
プランは幾通りあったのか、今とても気になっています、まさか、AからZまでじゃないですよね。苦笑
面白かったです、楽しませて戴き、ありがとうございました。

14/04/23 桜井 隆弘

草藍様、メッセージありがとうございます!

新米なので、総選挙1位の草藍様からプロフィールの書き方など参考にさせていただきました。
いやー、世代を問わず、追及されて困ることの言い訳は何かしら考えてるんじゃないですかねー。
プランはBまでですよ!
博司は直美のオツムの弱いところを知っていて、侮っていたので。
それで仰る通り、不倫相手・愛の博司への復讐を予感させるオチで終わりたかったのですが、尺が足らず・・・。
2000字の中に、深みを出しながらコンパクトにまとめるというのは、難しいなーと実感しました。
しかしプランZまでとは、草藍様の方が24枚上手ですね。笑

14/05/03 光石七

拝読しました。
浮気と見せかけて実は……という展開を予想していたのですが、ラストに大笑いしてしまいました。
タイトルにも納得です。
旦那さん、用意周到ですね。
楽しませていただきました。

14/05/05 桜井 隆弘

光石七様、読んでいただきましてありがとうございます!
最初は光石七様の言うような展開にしようかなと思ったのですが、もうひとひねり加えてみました。
まあ本当に用意周到なら、ネックレス簡単に見つかっちゃダメなんですが。笑
光石七様も愛猫さんに浮気されないよう気を付けてくださいね。

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