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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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マインドブレンドマシン

14/04/21 コンテスト(テーマ):第五十六回 時空モノガタリ文学賞【 結婚 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1190

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 ウェディングベルが鳴り響く中、人々の祝福に送られながら教会から出てきたビノとカオンの顔は、至上の幸福に輝いていた。
「あまりに幸せすぎて、なんだか恐い」
 カオンはブーケの上に顔をふせた。
「大丈夫だ。きみの身は、この僕がまもってあげる」
 これから二人で歩む人生にどんな試練がまちうけていようと、彼女といっしょならなにを恐れることがあるだろう。ビノはあらためて決意をかためた。
 そして三年がすぎた。ビノとカオンはいまなお幸福のさなかにあった。そりゃ少しぐらい困難や壁はたちはだかったが、あのときのビノ決意どおりそのつど、二人で力をあわせてのりこえてきた。
 ただ一つ、ビノとカオンには奇妙な習性があった。夜、睡眠中に、ふと気がつくとカオンの首がうねうねとのびていることと、ビノの場合は昼間、大声で笑ったときなどに、口がまるで蟹のように上下左右に開くことだった。   
 ビノにとってもカオンにとっても、首がのびているとき、また口が蟹のように開いているときに、なんだか自分が、根源的な自分にちかづくような奇妙な感覚に陥った。
 どうしてそんな突拍子もない思いにとらわれるのか、いくら考えても二人にはわからなかった。


 
 惑星調査員のビノがはじめてリザモ星を訪れたとき、発着場で彼を出迎えたのが、リザモ王の娘カオンだった。カオンはいつも、老体の父にかわって、諸惑星からの訪問者を歓迎する役を任じられていた。
 カオンは、棘が覆う八本肢に支えられた節でつながる胴からのびた、長い首の先の頭をもたげながら、単身用宇宙船から現われたビノを、熱いまなざしで見つめた。
 ビノのほうは、全長十五メートル、たとえていえば太古の地球に生息した百足のような無数の肢と、ハサミがついた複数の手があったが、もっとな顕著なのは、蟹のように上下左右に開くその口だろう。
 ひろびろとした発着場で両者は、長いあいだ見つめあっていた。しらないものがこの場の光景を目撃したらきっと、見た目に兇悪な怪獣がこれから一騎打ちをはじめるところと勘違いしたにちがいない。
 だが、このときの二人は、そんな野蛮な心境とはほど遠かった。
 ビノとカオンは、ひと目みた瞬間、たちまち激しい恋におちいった。
「どうか、私の父にあっていただけないでしょうか」
 カオンが最初にビノにいった言葉がそれだった。もうこのときには彼女の中には、ビノといっしょになりたいというゆるがぬ気持ちがめばえていたのだ。
 その気持ちはビノもまた同様だった。惑星調査の仕事はそっちのけで、彼女といっしょにいそいそとミモザ王のいる御殿までやってきた。
 ミモザ王は心の優しい王様だった。これまで結婚をかたくなに拒みつづけてきた娘から、はじめて好きな相手があらわれたと告白されて、父として喜ばないわけがなかった。
 しかし王は、ビノの、そのまさに怪獣のような姿を一瞥するなり、八本の手足をいっぱいにひろげて嘆息した。
「娘よ。おまえの気持ちをふみにじるつもりはないが、おまえとビノとでは、あまりに見かけがちがいすぎる。これではいっしょに暮らすのは、とても無理だ」
「お父様、外見がどうしたというのです、大切なのは、心でしょう」
 王は、涙まじりに訴えるカオンが、不憫でならなかった。
 そこで側近たちを集めて、なんとか娘の希望を叶えてやることはできないものかと相談した。
「カオンさまとビノの心が、いっしょになることができたら、問題はないのですね」
 念を押してからその側近が惑星連合に連絡して一週間後にとりよせたのが、いま王たちがまえにしているマインドブレンドマシンだった。
「この装置によって、二人は、ひとつの精神世界を共用することができます。それは二人がおなじ姿となって、生活するというものです」
 ビノとカオンのように生まれた星がちがい、相互の姿が大きく異なるもの同士が縁あって結婚をのぞむケースがふえつつある昨今、必要にかられるようにその装置は発明されたのだという。
「二人は幸福になれるだろうか?」
 いってから王は、すでにそのことじたいが二人にとって幸福だということにハッと気がついた。
 ビノもカオンも、装置の使用に文句があるはずがなかった。装置の使用はいたって簡単で頭にヘルメットをかぶるだけでOKという簡便さもありがたかった。二人はさっそく、マインドブレンドマシンの装着台にのりこんだ。
「なんだか怖いわ」
 さすがに怖気づくカオンにむかって、ビノは力強くこたえた。
「大丈夫だ。なにがあっても、きみの身は、この僕がまもってみせる」
 スィッチは入れられた。マインドブレンドマシンの作動を告げる振動音があたりの空気をふるわしはじめた。
 明るく、はずむように繰り返されるその音色は、まるで教会で打ち鳴らす祝福を告げる
鐘の響きによく似ていた。


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