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栗野 奈津さん

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猫嫌いな男の話

14/04/18 コンテスト(テーマ):第五十五回 時空モノガタリ文学賞【 予感 】 コメント:0件 栗野 奈津 閲覧数:1044

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僕は猫が嫌いだ。
仕草、匂い、あの態度、全てが嫌いだ。姿を想像するだけで鳥肌が立つ。
それなのに、隣の松本さんときたら・・・。
これでもかというほど身の回りを猫グッズで埋め尽くし、パソコンの壁紙は勿論猫。
しまいには「うちの猫が子供を産んだ」とかいって僕に猫を飼うよう勧めてくる。
全くいい迷惑だ。もし松本さんが上司じゃなかったらすぐに持ち帰らせただろう。

「斉藤くん、みてよ〜うちのマリー。可愛いでしょう?」
お昼休みに入ってすぐ、松本さんが見せてきたのはやっぱり猫の写真
「・・・」
「ちょっと、なんとか言ってよ!せっかくみせてあげたのに!マリーがかわいそう」
松本さんは怒って自分のデスクに写真をしまった。
「猫、嫌いなんです。・・・って、これ何回目ですか?」
「あのね、斉藤くん、私、本当に猫が嫌いな人にはこんなこと言わないわ」
この人は何を言っているのだ。
「本当に嫌なんです。猫の近くに行くと蕁麻疹が出るんですよ」
そう、僕は猫アレルギーなのだ。
「ふーん。あ、そう。まぁそういうことにしておいてあげてもいいわ」
そう言うと松本さんは「よっこいしょ」と立ち上がった。
「猫好きになったら教えてね、まだ1匹貰い手を探しているの」
松本さんはウインクをして去っていった。
いい歳したオバサンがウインクしても・・・なんて口が裂けても言えない。

定時が過ぎ、だんだん人がいなくなってきた頃、ふと、松本さんのデスクの下に写真が落ちてあるのに気づいた。
手に取ってみると、やはり猫の写真だった。けれど、その猫には見覚えがあった。
数日前、松本さんが僕に引き取ってくれと頼んできた猫だった。
緑色の目をした黒と灰色のアメリカンショートヘアだった。
あいつに、とても似ていた。

僕は5年ほど前まで猫を飼っていた。といっても、外猫だった。
子猫の時からうちの庭にやってきてよくボールで遊んでやった。
僕にとても懐いていて、僕が帰ってきたとわかったらすぐに近寄ってきて喉を鳴らした。
可愛くて可愛くて仕方がなかった。
しかし、ある日の夜のことだった。
いつものようにボールで遊んでいたのだが、勢い余ってボールが外に飛び出してしまった。
一目散にそれを追いかける猫、そして正面から走ってくる車。
猫は、車のライトに反応して立ち止まり、車と猫の間が徐々につまっていく・・・
僕は全く体が動かなかった。ただただ、この様子がスローモーションで流れていくのを、
みていることしかできなかった。
目の前で大切な家族を失ってしまった。自分はなにもできずに。
それからだ、僕が猫アレルギーになったのは。
きっと、神様が僕を猫に近づけないようにしているのだ、と僕は思っていた。
そしていつしか、猫が嫌いになっていったのだ。

はっと我に返ってあたりを見回すと、周りには自分しかいなかった。
もう11時を過ぎていた。いけない、明日は早朝からゴルフの接待がある。
今日はもう切り上げよう。

会社をでて、夕飯を買いにコンビニへ向かう。
大きなスクランブル交差点が赤信号に変わり、立ち止まった時だった。
暗い道路の真ん中に子猫がいるような気がした。なんとなく、ヤバイと感じた。
車道側の信号が青に変わった時・・・おもわず僕は走った。
クラクションが鳴り響き、急ブレーキの音が響き渡る。そんなのかまいやしない。
やはりそこには猫がいた。車のライトをじっと見つめる子猫が。
僕は子猫を急いで抱き上げ、横断歩道をそのまま渡り切った。
10mかそこらの短距離だというのに、恐怖と運動不足とで息ができない・・・。
そして、ようやく息を吸ったとき、今まで何もなかったかのように車は走り出し、人々は再び話し出した。
ふと、けたたましい音楽が携帯電話から流れてきた。
「・・・っはい、さ、斉藤です」
「ねぇ!いまどこ!?」
焦った声が電話から聞こえた。松本さんだ。
「うちの子が窓から脱走しちゃったの!あなたに飼ってもらおうと思ってた子よ!わかるでしょ?探してくれないかしら、もし車にでもひか・・・」
「ここにいます」
松本さんが言い終わる前に僕は言った。
「僕の、腕の中にいます」
「・・・え?」
「緑の目をした黒と灰色のアメリカンショートヘアですよね?」
「えぇ・・・あら、本当に?はぁー、よかった〜。本当によかったわ」
「はい、本当に、よかったです」
「猫アレルギーもでてないみたいだし、その子、可愛がってあげてね。それじゃ」
「えっ?」
ブチっと通話が切れた。
なんて勝手な人なんだ・・・でも確かに蕁麻疹はでていない。
もしかして、松本さんが仕組んだのか?
僕はそっと子猫を見てみる。
腕の中の子猫はじっと僕の顔をみつめて、にゃぁと鳴いた。
どうでもいいや、と思った。


「帰ろうか」
僕はそう言って子猫と一緒に歩き出した。


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