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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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超局地激雨顛末記

14/04/15 コンテスト(テーマ):第五十四回 時空モノガタリ文学賞【 激しい雨がふる 】 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1848

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「──たくもう、なぜだ」
「わかんねぇ、俺に聴くなよ」
 激しい雨はこの一か月振り続けている。初め、彼らには全く原因がわからなかった。
 ◆
 担任の荒木がため息をつく、誰にもわからない。なぜか、この激雨は春姫中学にだけ降っているのだ。隣接する小学校も公園も団地もどこもかも他は晴れているというのに、この学校だけが雨だった。
 雨は段々激しさを増し、校庭は泥沼状態でサッカーの練習もできない始末だ。溝から溢れた雨水がグラウンドの砂を押し流し正門に向かって濁流ができている。流れは上手い具合に側溝から近くの春姫川に流れているので、これだけの降水量があっても校舎はどこも浸水していなかった。
 春姫川とは名ばかりで、通称ドブ川と呼ばれている汚い流れだ。校舎は無事でこの狭いエリアだけの異常気象では警報も出せないのか、休校にならず授業も平常通りだ。だけど、生徒達は授業が手につかない様子だ。雨音のうるささもあるが、みな不安なのだ。何かとてつもなく恐ろしいことが自分の学校に起きるような気がして怖がっていた。
 その日の朝、二年B組の榎木という生徒が、蒼白の顔で担任の荒木に訴えた。
「先生、何度言えばわかってくれるんだ。この雨の原因は水瀬が泣いているからなんだ。昨夜、俺の家に雷神って奴がやって来て、お前の学校にずっと出張させられて迷惑だ、どうしてくれる、早く水瀬って奴を泣き止ませろって……」
「榎木、お前、夢を見たんだ、雷神なんていない、それが、世の常識だ」
「先生、俺の家の庭に昨夜、落雷したのを知らないの。あれは、雷神が、恐ろしい顔で俺を怒鳴りつけた時に落ちたものだよ」
「確かに落雷あったのは、お前の家だったな……」
「だから、原因は水瀬なんだ、あいつが泣き止めば雨がやむって」 
水瀬は、クラスのボス的存在の片桐率いるグループから苛めにあっていた。苛めは、ほぼ日常化し、苛められても反応がなくただ項垂れているだけの水瀬に、今や、クラスのほぼ全員が苛めに加わっている状況と化していた。
「あいつ、トイレに閉じ込めたままだった……」
 片桐の言葉に、みなが、男子トイレに走った。一番奥のトイレ個室から、片桐が水瀬を引っ張り出した。
「水瀬って、表情わかんねぇ奴だぜ、ほんとに泣いているのか?」
 誰かの声がする。水瀬は泣いているようには見えないが、体が小刻みに震えている。
「こいつ、体で泣くタイプかも」
「そんなのあるのか」
「だって、泣いているって見てわかれば、余計苛められるだろ」
片桐が水瀬の前に立ちはだかると怒鳴りつけた。
「いつまで泣いているんだ! 泣き止め」
 その言葉を皮切りに片桐の取巻きが口々に罵った。
「そうだよ、いい加減にしろよ」
「お前が泣き止まないから、俺らの学校はこの有様なんだ、おい、わかっているのか」
 クラス委員の松田が間に割って入った。
「ちょ、待てよ。そうやって脅すと、水瀬の奴は、余計泣き止まない」
「そうだよ、苛めが原因なんだからさ」
「ってことは、苛めた奴らが謝るしかねぇじゃん、苛めたのって誰だ?」
「俺ら、全員だろ」
「いや、先生は……」
「何、きどってるんだ、先生だって苛めてきたじゃねぇか」
「見て見ない振りって一番の悪だろ」
「じゃ、どうすれば……」
「おたおたするくらいなら、ちゃんと生徒指導しろよ」
言い争っていると、窓の外に鋭い稲光が閃き爆音が轟いた。校庭に落雷したようだ。そして、ついに、春姫川が氾濫し、泥水が校舎に浸水して来た、水は、すぐさま、二年B組の教室にまで迫って来た。雨は益々、激しさを増し、稲妻が炸裂し、窓ガラスがピシッと音を立てひびが入り次々と割れていく。雷神の怒りが増しているのは明白だ。女子生徒達が泣き叫ぶ。
「ヤダ、私達、ここで死んじゃうの」
「助けてー」
 ◆
「水瀬を何とかしなくては」
 榎木の言葉にみなが一斉に頷いた。
「水瀬に謝って苛めをやめるしかない」
「もしかして、水瀬って雷神の縁故者……」
 誰かの呟きに皆の血の気が引いた。片桐が真っ先に水に濡れた床に手をつき、土下座した。
「水瀬、許してくれ、俺……、家が面白くなくて苛立って、お前は無反応でなんも言わないから平気なんだってかってに考えてた。でも、お前泣いてたんだ、ごめんなもう苛めないから、雷神に何とか言ってくれよ」
 片桐を皮切りに、女子は絶叫に近い泣声で、男子生徒もわめくように泣きながら、ひたすら水瀬に謝り続けた。大声なんか出したこともなかった水瀬が窓に走り寄り叫んだ。
「僕のため? 頼んでもいないのにやめてくれよ、みんな大事な僕の友達なんだ、許して雷神様」
 突然、雨がやんだ。クラスのみなが歓声を上げ水瀬の元に駆け寄った。涙や鼻水を垂らしながら、口々に礼を言っている──それは、雷神の出張が終わり、再び世に平和が蘇った瞬間だった。


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このストーリーに関するコメント

14/04/15 笹峰霧子

SF的なすごいストーリーですね。
現実の学校のいじめでもこんな風にハッピーに変わればいいのですけどね。

14/04/15 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

こういう卑劣な虐めを雷神様が懲らしめてくれれば、ホントに効果てき面ですよね。
だけど、雨続きというのも堪らんわ。

水瀬くんと雷神様にどんな絆があったのでしょう。
最後はみんなで謝って、水瀬くんに感謝したのでもう虐めは無くなることでしょう。

みんなで仲良く晴々とした最後で良かったです。

14/04/15 ナポレオン

拝読致しました。
ハッピーエンドで、非常にスッキリ読めました。本当に実際の社会もこんな感じならいいのに……
途中までクラスメイトたちはどんな残酷な目に会うんだろうとか思っていた自分が恥ずかしい(;_;)

14/04/16 鮎風 遊

すごい超局地、面白かったです。
学校だけに降る雨、一度経験したいです。
だけど、いじめはいけませんね。
それにしても学校時代の大雨は、
全部誰かがいじめられてたのかも知れません。
こんな学校伝説ができれば、いじめ防止になるかも。

14/04/16 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

車を運転していると、時折局地的などしゃぶりに会うことがあります。
もしかしたら雷神が人の行いの何かに怒ってたのかも?
水瀬はもしかしたら雷神の子供だったのでしょうか。
面白かったです。

14/04/17 朔良

草藍さん、拝読いたしました。
いじめをこらしめる雷様、よいですね!
こういう怖い存在が今はいなくなってしまっている気がします。
すっきりした気持ちで読み終えました!
面白かったです。

14/04/21 gokui

 読ませていただきました。
 字数制限があるためか、場面転換が唐突に感じられましたが、ちゃんといじめというテーマもあり、おもしろかったです。謎な世界設定も妙な味があり、作者の意図していないと思われる、おもしろさが出ていたのではないでしょうか。

14/04/22 草愛やし美

>笹峰霧子様、コメントありがとうございます。

気持ちとして、こういったことでも起こって「苛め」が、なくなればと願望あります。苛めは陰に籠るので、やはり、白日のもとに判明すれば、かなり防げるのではないかと……。簡単な問題ではないですが、願いを書いてみました。

>泡沫恋歌様、お読みいただき嬉しいです。

コメントに雷神との絆の文字を見まして、水瀬君は、謎から、続きが書けそうに思いました。彼でまた何か創作するの面白いかもですね。貴重なコメントをありがとうございました。

>ナポレオン様、お立ち寄りいただき感謝しております。コメント励みになります、ありがとうございます。

創作する者として、どんな傾向でも書けなければいけない、というか、書ければいいのですが、なかなか難しいです。基本、自分は、ハッピーエンドが好きなので、そっちへ行きたくなります。でも、テーマによっては、残酷になものしか書けなかったものもあります。この作品は、終わり方が善でホッとしています。

>鮎風遊様、コメントをありがとうございます。

すごい超局地ですよね、最近の気象情報は地域によって出されるように進んできています、そのうち、○○中学の上空だけとか警報なんて出せるようになるかもしれませんね。たまに、雨の境界線に出会うことあります、電車で一駅で降った、降らないが現実化しています。気象もますます複雑になってきているということでしょうね。

>そらの珊瑚様、コメントありがとうございます。

車であうことありますね、さっきまで晴れていたのに、雨。あれまあと思っているうちに走り去り、しばらくするとまた晴れている道へ、なんて。山間などでは、結構経験します。観光バスで、立ち寄り場所行った時だけ、晴れて、乗れば雨ということありました。基本、私は、晴れ女なのかなあと思います。苛めがなくなればと願います。

14/04/22 草愛やし美

>OHIME様、貴重なコメントありがとうございます。

そうなんです、罪悪感の思念によってもこういうSFって起こる可能性あります。世間で聞く不思議な事実は、そういうことから発しているのかもしれませんね。
私が相方から聞いた話ですが、中学で苛めにあっていた人に大人になった時、会ったそうです。下駄履いて着流し姿でびっくり。ヤク○さんになっていたそうです。声をかけられ飲みに行った時に、「苛めていた奴らに復讐するため、強くなったろ思うたんや、これやるようになってから、あいつらに会いに行って、この下駄脱いでポカスカ殴ったったわ」と笑ったんですって、相方は、「ああ、苛めなくてよかった」と胸撫で下ろしたとか。やはり、苛めた方より、苛められた者は生涯忘れないのではないかと思います。根深いものありますが、今回は水瀬君はとっても良い子で頑張ってもらいました。汗 泣き顔なんて見せたら、苛めではきっと余計面白がってやられると聞いています。苛めは許せませんね。

>朔良様、お読みいただき感謝です、コメント嬉しいです。

雷神様がいて、実際こういう形でも苛めなんてなくなればと思います。怖い思いでもさせてこらしめなければ、苛めはやまないのではないかと思うと悲しくなりますが……。楽しんでいただけたとのお言葉励みになります、ありがとうございました。

>gokui様、お読みいただきコメント感謝しています。

作者が、思っていない部分で……、そうなのです、戴いています色々な方々のコメント参考になります。
読み手はいつも客観的なので、主観的にしか見られない自分にとり、あっ、そうか、それもありかとか思わせて戴くこと多いです。勉強になり、次の創作への励みや意欲に繋がります。
本当、字数制限には毎回、四苦八苦しています、汗。説明文など、大幅に割愛しても何とか繋がっているようにと苦労します。勉強になるとは思いますが、悩みますねえ。コメントありがとうございました。

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