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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
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すさまじい怪物

14/03/31 コンテスト(テーマ):第二十八回 【 自由投稿スペース 】 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1185

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 すさまじい怪物は、無数のぎざぎざの牙が突き出た口をいっぱいにあけると、頭上にむかってゴォッと炎をはきかけた。
 めらめらと燃え盛りながら炎は雲の腹をまっかにそめて高々とほとばしり、朝だというのに大空を夕焼けに変えた。
 すさまじい怪物は、それだけでは物足りずに、こんどは大地に向けて炎を噴いた。
 たちまちあたりは火の海と化し、川はみるまにモウモウと蒸発し、沼も湖も、ただの地面にぽっかりあいた大きな穴にさまがわりしてしまった。
 すさまじい怪物は、体内からわきあがる、おさえきれない衝動をどうすることもできずに、あらんかぎりの物凄い声で吼えたてた。
 その咆哮は四方何十キロにもわたってとどろきわたった。
 すさまじい怪物が足をひと踏みすると、大地のあらゆるものが激しく揺れ動いた。
 どんな固い岩も、こなごなに砕け散り、どんな険しい山も、すさまじい怪物の一押しで、たわいもなく崩壊してしまった。
 すさまじい怪物は、全身にみなぎるすさまじいパワーを感じてまたひとつ、大きく吼えたてた。

 おれの吐き出す炎で燃えつくせないものはない。
 おれのこの腕で押し倒せないものはない。
 おれのこの足で踏みつぶすことができないものはないのだ。
 

 すさまじい怪物は、毎日、猛々しいうなり声をはなっては、地上を縦横無尽にのしあるいた。
 なにもかもをぶちこわししたいという破壊本能は、かれをかたときもその場にじっと
させておかなかった。
 すさまじい怪物はきょうも、空にむかって炎をふきあげた。
 雨の日も風の日も、かれの吐き出す炎は雲という雲をずたずたに切り裂いた。
 すさまじい怪物は、しかし、いつも退屈していた。
 敵となるどんな生き物も、この星にはいなかった。
 この星のどこにも、すさまじい怪物のパワーを試す相手はいなくて、せっかくの闘争本能も、むなしく空回りするばかりだった。
 ここには、青葉をしげらせる木と、その木にたわわにみのる果実と、色あざやかな花々、そしてやわらかな草が一面、ゆたかに地上をおおいつくしていた。
 もともとこの地は、寒冷の地で、植物の育ちにくい環境だった。
 それがすさまじい怪物の跳梁によって、そびえたつ山々はしだいに崩れてなだらかになり、岩も石もまた細かくくだけてそのうち水はけのいい土に変質していった。
 植物たちがここまで繁殖したのも、そのような大地と地質の変化が大きく影響しているのはまちがいなかった。
 そのほかにもうひとつ、これを忘れてはならないだろう。
 毎日のように、すさまじい怪物が吐きまくる炎の熱は、凍てついた大地をあたためるにあまりあった。一種の温室効果をもたらしたといってもいいだろう。
 おかげであらゆる植物たちは生き生きと発育し、地上は新鮮な大気に潤っていった。 
 すさまじい怪物は、破壊をもとめて行動していたはずが、結果的に地上の植物たちにとってはじつに建設的な効果をおよぼしていたのではないだろうか。
 すさまじい怪物は、もちろんそんなことはしるはずもなかった。
 かれの食糧となるものは肉でも骨でもなく、肥沃な大地をうめつくす植物しかなかった。それにはミネラル、ビタミン、カリウムその他かれの成長と健康に必要な栄養素をたっぷりと含んでいた。
 またどの木にもやどる果実は、熟すとあまくジューシーで、とても美味だった。
 すさまじい怪物はきょうも、空と大地にむかって、そのあまりある力のはけ口をもとめて、ゴウゴウと炎をふきだした。
 破壊本能―――その根源的な欲望にかりたてられてかれは、世界のすべてにむかって火を吐き続けた。
 そうすることで、この地上のすべての生命をすくすくとはぐくみ育ていることに、なにも気がつがずに。 


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このストーリーに関するコメント

14/04/01 j d sh n g y

設定というかテーマが面白い。

14/04/01 W・アーム・スープレックス

jdshngyさん、

はじめまして。コメントありがとうございました。

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