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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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マリアージュ

12/06/07 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:8517

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 ――どうして私がこんな席に座ってなきゃいけないの?

 今日はいとこの美帆の結婚式だ。
 彼女は純白のウエディングドレスに身を包み、誇らし気に笑みを浮かべている。そして、その隣でデレデレ笑っている新郎が、私の元カレの和貴――。
 親戚でなければ、こんな結婚式には絶対に出席したくなかった。怒りでグラスを持つ手が震えた。

 美帆は父の妹夫婦の娘で私より一歳年下。叔母は夫婦喧嘩する度に美帆を連れて、実家である我が家に長期里帰りをした。そのせいで美帆とは姉妹のように育ったが、我儘な美帆には迷惑していた。欲しい物は手に入れないと気が済まないという性格、私のお気に入りのぬいぐるみやアクセサリーはいつも横取りされてきた。そして、恋人まで……。

 ああ、美帆に和貴を合わせるんじゃなかった!
 私たちは付き合って二年目のカップル、そろそろ結婚も視野に入れての交際だった。和貴は起業家でIT関連の会社を経営していた。業績も順調らしく、高級レストランで食事を奢ってくれる。
 その日、デートの帰りに入ったレストランに偶然、美帆が男と食事をしていた。私は彼女に気付いたが素知らぬ顔で奥のテーブルに着いた。思えば、あの時イヤな予感がしたのだ。
 自称モデルの美帆はスレンダーなボディに派手なファッション、完璧な化粧美人。舌足らずなしゃべり方がセクシーだと男によくモテた。
 私はというと特徴のない地味の娘だと思う。美帆の輝くオーラの前では、私なんか霞んで見えるだけ……。

 食事をしていると男女の言い争う声が聴こえてきた。――女の声は美帆だった。男の声もするが、美帆のヒステリックな声に掻き消されて何を言っているのか聴こえない。
 和貴は振り向いてチラチラ見ている。ケンカしている美人が気になるようだ。
 いつの間にか、静かになって美帆の姿が見当たらない。食事を終えてレストランを出たら駐車場にいた。今まで恋人がいることは美帆には内緒にしていたが仕方なく美帆に和貴を紹介して、立ち去ろうとしたら、
「ねぇ、ムシャクシャするの。一緒に飲みに行かない?」
 いきなり美帆が誘ってきた。私は乗り気ではなかったが、和貴は気軽に誘いを受けた。
 三人で近くのショットバーに行ったが、和貴が美帆に見惚れてばかりで不愉快だった。お酒の弱い私は二人のペースに付いていけなくて、十二時過ぎに眠いからとタクシーで先に帰ってしまった。

 その日を境に和貴の態度が一変した。
 メールを送っても返信がない。電話をかけても今忙しいとすぐ切る。デートは仕事だからと断られた。どうも様子が変だと思っていたら――ある日、叔母が美帆が今度結婚すると父に伝えにきた。相手の名前を聞いて絶句した。何んと! それが和貴だった。

 そして、今、二人の結婚披露宴の招待客の席に座っている。
 本来なら美帆が座っている新婦の席に私が座るはずだったのに……。悔しくて、許せない、自棄酒だ! ワインをガブ呑みしながら、こんな結婚式なんかぶっ壊してやると思っていた。
 その時、披露宴会場の照明が消えた。今から、新郎新婦によるキャンドルサービスが始まるようだ。ふと浮かんだ、この手に持った赤ワインを純白のドレスにぶっかけてやれ! と、悪魔が私に囁いた。
 キャンドルに火を付けながら招待客に挨拶をして回る。――幸せの絶頂の二人が近づいてきた。
 やってやる……。並々に注いだワインを持って、ふたりが来るのを待つ。さすがに、和貴は私を見てバツの悪い顔をしたが、厚顔無恥な美帆は自慢げに微笑んでいる。憎らしいほど美しい花嫁だった。チクショウ! 立ち上がった瞬間、酔いで腰がフラつき、バランスを崩し、隣に座っていた男性に頭からワインをかけてしまった!
「す、すみません!」
 大失態! ナプキンで男性の頭を拭きながら謝った。
「僕は大丈夫。ずいぶん飲んでいたから大丈夫かと心配しながら見ていたんです」
 私の失敗に動じる風もなく、男性は屈託なく笑った。――その目が優しくて、自分がやろうとした行為が恥ずかしくて、泣きそうになった私。

 連絡先を訊いて後日謝りに行った。彼は和貴の大学時代の友人で話している内に気が合って自然に交際するようになった私たち。
 一方、美帆たち夫婦は半年経たずに離婚した。原因は妻の浮気と借金とかで……。派手で浪費家の美帆は半年間の結婚生活で多額の借金を作った。そのせいで和貴の会社まで左前になったという噂を耳にした。気の毒とは思うが、美帆を妻に選んだのは和貴自身だから仕方ない。

 半年後、私は純白のウエディングドレスに身を包み、幸せに頬を紅潮させていた。そして、その隣で屈託なく笑っている新郎が、ワインを頭から被った男性――。

 捨てる神あれば拾う神あり、運命とは不思議なもの。
 マリアージュ、こんな流れもあるのです。


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このストーリーに関するコメント

12/06/09 泡沫恋歌

おおくぼゆういち 様

コメントありがとうございます。

マリアージュはフランス語で男女の結婚などを表すmariageという言葉ですが、ワインとの食べ合わせなどを表現するときにも使われる言葉です。

そういう意味で結婚式のシーンから始まるのと、男女の組み合わせとワインをかけた男と結ばれるという意味合いから、タイトルを「マリアージュ」と
決めました。

この作品は私のオリジナルです。
キャラクターの名前などは作品のイメージに合わせて考えたものです。
なにゆえに、キャラクターの名前を「あゆ」と「白井君」にした方がよいのですか?

どういう理由でそのようなことをおっしゃるのか理解に苦しみます。

12/06/10 ドーナツ

結婚式場に座っている「私」の境遇は ほんとに気の毒としか言いようがないです。
ワインかけてやりたいという気持ち、同じ女としてすごくよくわかります。
だけど、あそこでほんとにかけてたら、神様が怒って、いい人にで合わせてくれなかったかも。縁はいなもの味なもの、きっとワインの味がするんでしょうね。

結婚もワインと料理の組み合わせと似てますね。
「私」と和貴はミスマッチだったんですよ。
ワインを間違ってかけてしまった彼氏は、「私」という料理にぴったりのワインだったのかな とそんなことを感じました。

12/06/11 泡沫恋歌

ドーナツ 様

コメントありがとうございます。

そうです! 
結婚もワインと料理の組み合わせと似てますね。

たぶん、幸せになれるカップルも相性です。
結婚は相性次第だと思いますね。

12/12/27 笹峰霧子

読み始めははらはらしていましたが
結末を読んで救われる思いがしました。

文章の展開がとてもうまいので
引きつけられました。

13/01/07 泡沫恋歌

霧子さん、コメントありがとうございます。

恋人をいとこに盗られた主人公の屈辱感と悲しみを最後には
団欒円で終わらすことができて良かったです。

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