1. トップページ
  2. あゆみちゃんとあくまくん

浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

性別 男性
将来の夢  
座右の銘  

投稿済みの作品

0

あゆみちゃんとあくまくん

14/03/28 コンテスト(テーマ): 第二十七回 【 自由投稿スペース 】  コメント:1件 浅月庵 閲覧数:1005

この作品を評価する

 ぼくの名前はあくま。あゆみちゃんが付けてくれた名前なんだ。
 ぼくがあゆみちゃんの家に来たのはつい一週間前のことだった。

「ふかふかするー! きもちー!!」あゆみちゃんはぼくが家に来るなり、飛びついてきてぎゅっと抱きしめてくれた。
「乱暴にしちゃダメよ。ちゃんと優しくしなきゃね」
「はーい!」
 そのあゆみちゃんのお母さんの一言がきっかけだったかな。それからというものあゆみちゃんはぼくのことを大事に大事にしてくれるから、仲良しの友だちになれたんだ。

 ぼくはあゆみちゃんが好きだし、あゆみちゃんもぼくのことが好き。
 今日はあゆみちゃんとお母さんがデパートにお買物に行くみたいだ。あゆみちゃんはきれいな赤色のお洋服に身を包み、小さな鞄を背負って、右腕にはぼくが抱えられている。

「こらこら、あゆみ。あくまくんはお外に出しちゃダメでしょ」
「なんでー? あくまくんはあたしのお友だちなんだよ」
 あゆみちゃんは腕に抱えたぼくをよしよし、って撫でてくれるけど、お母さんはカンカンだ。
「お友だちなのはわかるけど、あくまくんはお買物に連れて行けないのよ」
「やだやだ! あくまくんもいっしょ」
「駄々こねてもダメなものはダメ。あゆみが良い子にできないなら、お買物行かないよ」
 ほっぺを膨らまして怒るあゆみちゃんは、仕方なくぼくをお家に置いて行く。ぼくはお留守番。
「また後でね、あくまくん」手を振るあゆみちゃんの後ろ姿を見つめるぼく。あゆみちゃんは帰ってきたら真っ先にぼくにおかえりって言って笑ってくれるんだ、それを知ってるからぼくも寂しくなんかなんかない。

「あゆみ、ご飯中にあくまくんを膝に乗せるなんてお行儀悪いぞ」
「やだー。あくまくんといっしょにご飯食べたい」
 あゆみちゃんは膝に乗せたぼくにご飯を食べさせてくれようとするけど、お父さんはカンカンだ。
「あくまくんはもうお腹いっぱいだって言ってるよ。ほら、こんなにお腹パンパンになってるじゃないか」あゆみちゃんのお父さんがぼくのお腹を撫でる。
「違うの! あくまくんはお腹減ってるの」
「あゆみ、ご飯なんか食べさせたら、あくまくんの服が汚れちゃうよ。せっかくお洗濯したお洋服を着せたのに、カレーまみれになって良い匂いしなくなっちゃうぞ」
 ほっぺを膨らまして怒るあゆみちゃんは、仕方なくぼくを部屋の隅の方に下ろす。
「ごめんね、あくまくん。また後でね」
 あゆみちゃんに頭を撫でられたぼくはじっと待ってる。ご飯を食べ終えたあゆみちゃんがすぐにぼくと遊んでくれることを知ってるから、ぼくは全然寂しくなんかないんだ。

 あゆみちゃんはお外に遊びに行くときもご飯を食べるときもお風呂に入るときも片時もぼくを離したくないくらい好きでいてくれるし、そんなあゆみちゃんがぼくは大好きだ。
 一緒にお庭で日向ぼっこしたり、お昼寝したり、色鮮やかなキャラクターの絵が描かれた服、星や月の描かれた薄いピンクの服、黄色い花柄の服、可愛いお洋服も代わる代わる着せてくれる。ぼくは男の子なのにカラフルな服ばっかり着せられるからちょっと恥ずかしいんだけど、暖かい太陽の匂いがする服を着たぼくを、あゆみちゃんが良いにおいがするーって言って抱きしめてくれる。ぼくはそれがとっても嬉しいんだ。

 お風呂から上がってあゆみちゃんはテレビに夢中。でも、ちゃんとぼくはあゆみちゃんの膝の上にいるよ。
 あゆみちゃんが笑っているとぼくも嬉しいし、あゆみちゃんが怒っているとぼくも怒るし、あゆみちゃんが泣いているとぼくも悲しくなる。だからぼくはできるだけあゆみちゃんにはいっぱい笑ってほしいな。

「あゆみ、そろそろ寝る時間よ」あゆみちゃんのお母さんがソファーに座るあゆみちゃんの肩に手を置く。
「まだ眠くない」そう言うあゆみちゃんの目はトローンとしていて、今にも夢の世界に行っちゃいそうだ。
「ほらほら、もうおめめが重たくなってるでしょう。あくまくんもねむいねむいって言ってるから、一緒におやすみしなさい?」
「......うん」すっかり遊び疲れたあゆみちゃんはぼくを抱えて寝室に歩いて行く。
「あゆみ、おやすみ」お父さんがそう言うとあゆみちゃんはおやすみ、と言って布団に倒れ込んだ。今日もいっぱいぼくと遊んでくれてありがとう。また明日も一緒に遊ぼうね。

 薄く開かれた襖の隙間から、あゆみちゃんのお父さん、お母さんの声が小さく聞こえてくる。
「それにしてもあゆみ、あくまくんにベッタリだな」
「本当にね。あんなにおもちゃいっぱいあるのに、どうしてあくまくんなのかしら」
「まぁそれも、子どもにしかわからないんだろうな。でももっとわからないのは、なんであくまなんて縁起の悪い名前付けたんだろう」お父さんは腕を組んでハテナマークを浮かべる。
「あら、まだ話してなかったかしら。あゆみにはちゃんと、ま・く・らって教えたわよ。だけど、舌たらずのあの子が上手く発音できなくて、あ・く・まくんになっちゃったのよ」
「ま・く・らとあ・く・まか。まぁ、確かに似てなくもないな」そう言ってお父さんとお母さんは楽しそうに笑う。

 本当のぼくの名前はまくらって言うらしいけど、あくまはあゆみちゃんに付けられた名前だから、それが一番しっくりくる。
 ぼくはあゆみちゃんの小さな頭の下で、小さな寝息を聞きながら、ずっとずっとあくまくんと呼び続けてくれることを願ってるんだ。いつか君がぼくを手放すことになるのも分かってる。それでもぼくは、ずっとずっとあゆみちゃんと一緒にいれることを夢見てるんだ。



コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/03/28 浅月庵

あるコンテストで落選したのでこちらにUPします。

ログイン