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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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廃墟にて

14/03/26 コンテスト(テーマ):第三回OC 【 廃 】  コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1551

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 県道から脇道に入ると、殺伐とした林道が続いていた。某テレビ局の取材班はその先の今はもう廃墟と化した国立病院に向かって進んでいた。機材を抱えたまま車が入れない道を歩くのは骨が折れる。取材班の表情がいつになく厳しい。
 足元に得体の知れない冷気が絡みつく。そして押し潰されそうな重い気圧。何かが、正体不明の何者かが夜な夜なこの辺りを徘徊するという噂だ……。
 そのなにかをテレビカメラにとらえたら大成功だが、とらえられなくても充分そこまでのプロセスだけで週末の恐怖特番は成立する。
 なにしろ可愛いアイドルが同行しているし、霊能者の先生だって白装束で、時たま祈祷みたいな言葉を唱えながら歩いている。口はあくまで一文字に引き結んだままで。
 だがアイドルの凛にいつもの愛くるしい笑顔はない。マジに怖いのだ。この番組の出演を何度も断ったのだが、辣腕プロデューサーの新城に押し切られてしまった。
「もう少しで問題の病院跡に着くぞ。充分に気を付けて。建物は相当老朽化が進んでいるから。壁や天井が崩れる可能性だってある。くれぐれも事故だけは起こさないように!」
 取材班のリーダーが皆に注意を促していると、いきなり白髪の霊能者の先生が
「しっ!静かに!」
 と叫んだ。「何かがいる」霊能者は呻くように言う。取材班が固唾を呑んで前方の闇を見つめると、廃屋の壁を背に真っ白い顔をした少年が立っていた。そして陰気な顔をしてこちらをじっと凝視している。
「で、でたーっ!」
 取材班の一人が大声を出した。恐怖にかられて、あわてて逃げ惑った。アイドルは発狂したみたいに甲高い声を出して泣いた。そして石につまずいて転がった。可愛い泣き顔が怖い。
 そこで怒鳴ったのがやっぱりリーダー。
「馬鹿野郎!! 慌ててないで早くカメラ回せ、すごいぞ!! おい、これは本物の超スクープ映像だろう!! 他局を出し抜けるぞ。ライト照らせ」
「いやライトはだめです。霊が怖がります! 消えたらそれっきりかもしれませんよ!」
 そう言うカメラマン。
「そうか、わかった暗視カメラ使え。忘れていた。はやいとこだ」
「先生!! お祓いしてください。ヤバイですよ。これは」
 他の誰かがそう叫んだ。
「お祓いなんて後にしろ! なにがなんでもあの少年を撮るんだよ」
 リーダーのプロ根性がそう叫ぶ。
「もうやだー!! もうお家に帰りたい!!」
 アイドル凛の悲痛な叫び。
 ああ、少年はそのままで青白い顔を動かさない。そして無言でこちらを指さす。
 パニックの中で繰り広げられる撮影。


 翌日、地元の新聞にこんな記事が載っていた。

 有名な霊感少年が、廃屋と化した病院跡で幽霊達に遭遇したと証言。
 尚、霊の数は複数で少年によれば昔、某テレビ局の取材班が廃墟を撮影していたところ、廃屋の天井や壁が崩れ、不幸なことに全員生き埋め同然に亡くなり、その霊達であったと言う。
 霊能者の白鳥氏や、アイドルの凛もその霊たちに混じっていたと言う事だ。


 追記、少年によればそのテレビ局の取材班は廃墟を何者かを探して、今も彷徨っているという事である。近々にその少年の証言を基にした、霊能特番が放映される予定。

                      おしまい


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このストーリーに関するコメント

14/03/27 朔良

yoshikiさん、こんにちは
拝読いたしました。

廃墟の幽霊譚…と思いながら読んだら…。そっちかー! 
いや、幽霊譚は幽霊譚ですね(^m^)
面白かったです。

14/03/27 泡沫恋歌

yoshikiさん、拝読しました。

途中まで、幽霊が出るぞ・・・出るぞ・・・怖々と読んでいました。
それで、あの少年の登場!

キタ━━━(゜∀゜)━━━!!

と、思ったら・・・意外なオチに驚きました。

すごく面白かった!

14/03/27 yoshiki

朔良さん。コメントありがとうございました。

どうしてもひねりたくなるのは私のくせです。

「幽霊が出た―」といったのが幽霊だったみたいなお話(^v^)

14/03/27 yoshiki

泡沫恋歌さん。コメントありがとうございました。

意外なオチにいつも悩んでいる私です。
そういってもらえてとてもうれしいです(*^_^*)

14/03/28 タック

yoshikiさん、ご投稿ありがとうございます。拝読いたしました。

まさかのラストですね。テンポの良く、それでいて丁寧に書き込まれた展開があってこそのオチだなあ、と表現力に脱帽しました。しかし、こういう霊も存在するかもしれませんね。幽霊は生前の行動を繰り返すといいますし。

14/03/28 yoshiki

タックさん。ありがとうございます。

おっしゃる通りで前半息づまる展開にしないと、オチが生きてこないと思い書きましたが、もう少し工夫できたかなあなんて、書いた後で思う私です。ともかくありがとうございました。霊って意外と自分が霊だと気付かないかもです(^v^)

14/03/28 草愛やし美

えっ!? そっちがそうなんですかΣ(- -ノ)ノ エェ!?
yoshiki様、拝読しました。そして、オチで驚きました。ハイナ(。´ФДФ)

いやそらもう、驚きしかないでしょう。面白かったです、ありがとうございました。

しかし、霊とか廃屋に探したがる友人(女性)いるのですが、一緒に行くのだけは勘弁してほしいですわ。おお、怖!!

14/03/29 yoshiki

草藍さん。コメントありがとうございました。

ええ、そっちなんです(^_^;)

むかし、地元の戸塚に病院跡があり、幽霊の噂が立ち、みんなで行こうかという話にまでなったことがありましたが、こわくていけませんでした(^_^;)

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