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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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いったい僕は何人殺したのだろう!?

14/03/14 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1895

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『逃げる女の髪の毛をグイと掴み女を引き倒した。恐怖に引き攣った女の顔が欲情をそそる。俺は、第三の殺人は刺殺と決めていた。用意したサバイバルナイフを振りかざし、女の背中に突きたてると、女はグエーとこの世のものと思えぬおぞましい声を発した。
 第一の殺人は、絞殺、第二の殺人は毒殺、第三が、この刺殺だ。やり口が違っていれば、捜査連中は連続殺人と思われないはずだ。ヒヒヒ、俺は腹の底から湧きあがる歓喜の笑い声を堪えるのに必死だ。こんな田舎町の林道とはいえ、誰かに聴かれるかもしれない。いや、俺は馬鹿か、すでにこの女の断末魔が響き渡ったではないか、だが、それは予定通りのこと。断末魔は、夜の帳を切り裂かなければならない。でないと欲望の渇きが満足しない、俺の欲望は底なし沼のように全てを呑み込んでいく。女の断末魔を聴く時、俺は欲情を覚え死に逝く女を抱く。この狂気に満ちた中でエクスタシーに達し、女を底なし沼へと沈めてやる。こんな快感、誰も知らないだろう』


「いや、待て、グゲーって声の方が感じるぞ、そこを直せ」
「グエーってとこか?」
「決まってるだろう、ここで一番肝心なのは断末魔の声だ、それをいかに表すかがこの作品を輝かせるってもんだ。お前のような低脳にはわからんかもな、だが俺にはわかる、こういうのを買って読む奴はエロと残虐を過激にすればするほど喜ぶのだ、涎を垂らしながら変態の奴らが読む、そして自慰でもすりゃいいのさ、ウヒヒ」
「もう嫌だ、やめさせてくれ。今まで僕は何人殺したのだろう、数えられないくらいだ、耐えられない」
「何言ってるんだ、お前は誰のお蔭で、有名作家になれたと思っているんだ。俺様がいなけりゃ、今頃まだそこらのサイトでちんたら小便臭いお子ちゃま相手に、可愛いねだとか、ちょうなのよとか、ママだのパパだの、いい子してまちゅよーなんて、糞みたいなこと書いていたはずだ。俺様が、お前に美味い飯も食わせ、洒落た服の一枚も着せてやってるってのに、今更嫌だとは何てこと言ってるんだ、お前は贅沢と名声を捨てられない。そんな勇気はないはずだ。作家、月矢彗の名前を捨てることはお前の今までの栄光も存在も消えてしまうってことなんだよ、わからんのか! 馬鹿め」
「僕は、絵本作家になりたかっただけなんだ、君のような猟奇作家はいらない」
「よくそんなこと言えたな、書いてやった作品が、佳作なっただけで大喜びしてたのはどこのどいつだ? 次の作品もお願いしますって、どの口が言った? えっ、お前のこの口だろう。膨大殺戮大賞に投稿したいって言ったのもお前自身だぞ。忘れもしない五年前のあの言葉、一度でも入賞したいんだ――そうお前は俺の前で跪いて頼んだだろう。入賞した金でお前は、ステーキを食って落涙して歓喜を味わったはずだ。忘れたとは言わせんぞ」
「だけど、毎日、猟奇ものばかり、一体僕は何人殺せばいいんだ。もう嫌だ、電子書籍の上とはいえ、殺人、レイプ、エログロ、汚いものばかり。あの美しいファンタジーや、優しい思いやり、悲しいけれど心洗われるような綺麗な童話、そんな世界とは全くほど遠いカテゴリーに僕はもう耐えられないんだ。今日、勇気を出して、出版社に出向き直に絶筆することを言うつもりだ」
「お前のような腑抜け作家に、ゴーストライターの存在のことなんか言えるものか、言ったところで誰が信じるものか。お前が肩を落として帰宅するのを俺は楽しみにしてるよ、グハハハ」
 ◇
 決意した僕は、激突出版社に出向き、轟編集部長に事情を説明した。
「月矢先生、ゴーストって、そんなこと信じられませんよ。冗談はよして、次回作を早く書いて下さいよ、先生の愛読者さん達が待っておられるんですよ」
「どうせ、奴らはみな変態だ。僕は本当はファンタジーが書きたかったんだ。だのにあいつが、あの霊がどこかからやってきて、俺に憑依したんだ。生前書きたかった猟奇物を書かせろと言って脅したんだ」
「しかし、月矢先生、ゴーストライターがゴーストだなんて冗談にもなりませんよ」
「僕はようやく勇気を出したんだ。ゴーストの存在を発表すると。お願いだ、絶筆を了解してくれ、轟部長」
「絶筆……」
 轟は、絶筆と言ったまま唸り続けていた。作家月矢は真顔で訴えている、一番の売れっ子作家を失うことは激突出版にとって大打撃だ、損失は免れないだろう。
「ゴーストか……」
 ◇
 激突出版は、しばらくして膨大殺戮電子書籍のウエブ上でお知らせを出した。
『好評執筆いただいています月矢彗先生は、体調不良のため、しばらくの間、休筆させていただきます』

 しばらく後、轟は、密かに自室に降霊術師を呼んだ。


  了


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このストーリーに関するコメント

14/03/14 草愛やし美

お断り:この作品には、残虐シーンや性描写が含まれています。画像は、右は、ロイヤリティーフリーイラストの「CLIPERTLOGO」様よりお借りしました。http://jp.clipartlogo.com/ 他の画像はアマゾンよりお借りしています。

14/03/14 クナリ

部長は、編集者の鑑ですね(^^;)。
売れっ子作家の皆様はもしかしたら、擬似的にでも、このような状態なのかもしれません…。

果たして、ゴースト様が著作権を要求してきたときはどうなるのか…!(おい)

14/03/15 鮎風 遊

確かに、猟奇物語か童話か?
どちらで書きたいか?

お前の本性は猟奇、だけど自分をさらけ出す勇気がなければ良い作品は書けないぞ、と友人に言われてたことがあります。
未だ勇気がなく、童話世界で遊んでます。

そっかー、ゴーストという手があったんだと思いながら読ませてもらいました。
だけど、すぐバレるでしょうね。

ということで、人気出なくとも、
猟奇と童話の間の微妙なところの味わいを求めて行くことにしました。

考えさせられました。

14/03/15 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

ゴーストのゴースト作家が憑いて猟奇小説を書かせるって、怖い話ですね。
そう言えば、以前に知ってる創作者の方で背中に作家の霊がとりついて、作品を
書かせてくれてるとか、おっしゃってた人がいましたが・・・ねぇ〜。

私も松本清張とか、超売れっ子作家のゴーストが欲しいものです( 〃´艸`)

たいへん面白い作品でした。

私だったら「ぎえぇぇ―――」と断末魔の叫びを書くかなあー。

14/03/15 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

人間のゴーストライターが世を賑わしておりますが、まさか本当のゴーストとは!
轟はそのゴーストを呼んで自ら書こうと思ってるのでしょうか?
前半のショッキングなシーンが読んでいるうちにどことなくコミカルになり…面白かったです。

14/03/15 kotonoha

いやいや書いている猟奇ものばかりなのに凄い愛読者だと言うのは皮肉なことですね。
草藍さんがこんな小説に挑戦とは驚きです。

ちょっと怖いでしたがゴーストライターがゴーストである点が凄いと思いました。

14/03/16 朔良

草藍さん、こんばんは。
拝読いたしました。

ゴーストライターが幽霊っていう発想がすごい! さすが草藍さんです。
刺激の多い作品を求める向きは多いかもしれませんが、自分の目指すものを書けなくなるのはやっぱり辛いですよね…。

…幽霊さん、今度は編集長に憑りつくのでしょうか。
ある意味、編集長さんが一番勇気があるかも^^;

14/03/22 草愛やし美

お読みくださった皆様、ありがとうございます。花粉が酷く、脳みそが動きません。眠気が襲う日々に閉口しています。コメントの返信遅くなりまして、申し訳ありませんでした。

>クナリ様、そうです、この部長は編集者として素晴らしい方だと……かもですね(; ̄ー ̄川 アセアセ
もしや、売れっ子作家様方も、このようなゴーストに魅入られているのでないかとか。(大汗) 私にも、ある日やって来ないかと切望していますが、著作権ですかあ、そこまで考えていませんでした。いや、それがありましたね。楽しいコメントありがとうございました。

>鮎風遊様、コメントをありがとうございます。
猟奇か童話かとなると、書けばどちらも面白いかもですが、売れるものとなると童話は狭き門になるのではと思います。
鮎風さんの本性が猟奇なのですか? でも、人間、突き詰めれば、そちらの傾向があるのではないかとも思えます。特にリアルでできないことを書くということで可能にできますから、その意味合いで一度は書いてみるのも良しと……。(Σ(− −ノ)ノ エェ!?こんなコメント返ししてもいいのでしょうか? あのその、あたふた)

>泡沫恋歌様、松本清張ですか、いいですねえ、私は誰にしようかしらん? でも先に降霊の技を学ぶのが必要になりそうな気もしています。そうそうゴーストというか霊が取り憑いて書けているという方の存在、聴いたことあります。その方は今はどうなさっているのでしょうね? やはり憑く霊次第ですから、有名になるのはなかなか難しいかもです。
断末魔は「ぎえぇぇ──」ですか、なるほど、売れるかどうかはそこですから、大事なことと……。笑

>OHIME様、お読みくださって感謝です。OHIME様は、もののけなど取り憑かずとも充分面白い作品を連発されていると思います。もののけも参ったとどこかへ退散するかと存じますよ。
この間、ゴーストライターの事件が世間を騒がせていましたので、そこから思いつきました。コメントありがとうございました。

>そらの珊瑚様、コメントをありがとうございます。
先日のあの会見には驚きました。別人28号かと見間違うほどの変身を果たされたあの方を見て、ある人は、「おすぎが太って、何の会見したいの?」と思われたそうですよ。苦笑 (確かに似てましたよねえ)
前半部分は、苦労しました、たぶん初めて書いた?ことにしておきますね。これも勉強と頑張りました。大汗

>kotonoha shizuku様、お忙しい中、お読みくださり感謝しております。コメントありがとうございます。
前半部分を猟奇ものにしましたのは、テーマが「勇気」ですので、生半可な内容のものでは、有名作家になったことを捨てることはできないだろうと仮定したからです。挑戦しました、大汗もので、どう書けばよいのかとかなり推敲しましたが、勉強?なりました。創作者は、ある程度、どんな分野でも書けなければとも思いますので……。
時空モノガタリの投稿には、残虐や性描写を禁じられていますので、違反すれすれを狙って書かせていただきました。いまのところ、作品の削除がないようでほっとしています。ひやひや物でした。

>朔良様、いや本当に、この轟編集長が最も勇気ある人かもしれませんね。愛社精神が素晴らしい、霊を呼び、自らが筆をとる――これが可能になれば一石二鳥ですよねえ、出版社から給与、作家として印税、ぉお!!(゚ロ゚屮)屮凄いことかも。降霊術師の選択次第?いや霊次第? いや、その前に、著作権が……。(クナリ様のコメントでハッとしました、そこはどうなるのでしょう、でも編集者ですから、その契約も込みでうまくできるかと、いろいろ算段しています 苦笑)貴重なコメントありがとうございました。

14/03/23 ドーナツ

はいどくしました。

ブラックユーモアだね。ゴーストライターも出てきて、いやぁ〜〜、旬の話題ですなぁ とにやりとしました。

どんなふうに話が展開するのか、いつもワクワクして 読ませてもらってます。

14/03/29 草愛やし美

ドーナツ様、お読みくださり、コメントありがとうございます。
そうなんです、あの旬の話題から思いつきました。あの方は人間のライターさんでしたが、ゴーストならどうだったのでしょうねえ。でも、曲自体は凄く素晴らしいと思っていましたので、こういう結果になったのが残念でしかたありません。何よりも作品が可哀想だと思います。
このまま埋もれさせるには惜しいと思うのは私だけでないと思うのですが……。

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