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坂井Kさん

今年(2014年)は思い付きと勢いだけで書いてきましたが、来年(2015年)は、状況設定をもう少し固めてから書こうかな、と思っています。スティーヴン・キングによると、「状況設定をシッカリとすれば、プロットは無用の長物」らしいですから。

性別 男性
将来の夢 夢というより目標として、来年(2015年)こそ長編小説を書き上げたい。
座右の銘 明日はきっと、いい日になる。

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ボクも今日から擬音クン

14/03/05 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:4件 坂井K 閲覧数:1310

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 ダッダッダッダ。ズン。ジャジャーン。僕の後ろで声がする。ボクが後ろを振り向くと、やっぱり彼が立っていた。彼のあだ名は擬音クン。口から擬音を発しなければ、行動できない変な奴。もちろん本名あるけれど、誰もその名で呼びはしない。今のクラスは別だけど、彼とボクとは幼馴染で小1からの親友だ。

「オハヨウさん」と彼が言う。「オハヨウさん……」ボクも遅れて言い返す。「どうしたん? あんまり元気ないようやけど」「実はなあ、今日の昼からの授業でな、クラスの全員前にして、苦手な発表せなあかんねん……」「レポート完成してへんの?」「いや、完成はしてるんや」「なら心配はないやんか」

「知っているやろ? ボクはなあ、人前に出たら緊張で、大きな声が出せへんねん」フッフッフッフッ。彼が笑う。「一体何が可笑しいねん!」声を荒げてしまうボク。「ほらほらそれそれ、その声や。今出したぐらいの大きさの、声を出したらええだけやん」「そんな簡単にでけへんよ!」声を荒げてしまうボク。

 ボクは彼の目を睨み付け、後は無言で早歩き。タッタッタッタ。パッ。ドドッー。彼が後から追って来る。いつもは何も感じない彼の出す音、今日はイラつく。「擬音クン、今から学校に着くまでは、静かにしといてくれへんか」彼は寂しげな顔をして、「だったら、一人で先行けよ」そう言った後、立ち止まる。

 ボクは一人で早歩き。振り向かないで早歩き。教室に着き、外を見る。どこにも見えない擬音クン。授業開始のチャイムが鳴って、ようやく姿が見えて来た。口から擬音を発してる。聞こえないけど発してる。トットットット。チャッ。ババン。おそらくこんな感じだろう。(急いで来いよ、擬音クン)

 アッという間に昼休み。今日は一人で弁当だ。いつも一緒に食べている、擬音クンとは会いづらい……。エッホッホッホッ。ダッ。キキーッ。廊下の方から声がする。「よう、ツヨシ。一緒に弁当食べようぜ」今朝のこと、ボクは気にしていたけれど、彼は気にしてないようだ。「ゴメンな、今朝は」ボクは謝る。

「ええって別にあれぐらい。それよりさ、まだ発表で悩んどる?」「ああ、まあな」そう言やすっかり忘れてた。思い出したら手の平や脇の下から汗が出る。「せやったら、発表のとき勇気出る良い方法を教えたる」「あんのかよ? そんな都合のええ方法」「簡単簡単オレのように、擬音で気持ちを高めるんや」

「実はな、オレもチビのころ、臆病過ぎるチビやった。幼稚園まで行くのが嫌で、最初は毎朝泣いとった」「それホンマ?」「嘘を言ってもしゃあないやん。ホンマもホンマ、大ホンマや」トゥ。ジャジャーン。「あるとき漫画を読んでたら、こんな感じの擬音と共に、正義のヒーローが現れた」

「ヒーローは、恐れず敵に向かってく。――カッコええ。オレはヒーローに憧れた。『漫画のような音さえあれば、オレも勇気が出せるはず』そう思い、自分で音出すことにした。トゥ。ジャジャーン。タッタッタッタ。バッ。ダダーン。声出すと、身体の奥から力が湧いた。それ以来、毎日擬音を発してる」

「擬音には、そんな理由があったんか……」「ツヨシもな、擬音を口に出しながら、みんなの前に出るとええ」「どんな擬音がええんかな?」「何でもええねん。自らの気持ちが高まる音ならな」「――あかんわ。まるで思い付かん。擬音クンのを真似してええか?」「ええけどな、自作の方が高まるで」

 昼からの授業が始まり、発表の順番はすぐにやって来た。「タカダくん」名前が呼ばれ、立ち上がる。ボクは擬音を口に出す。ドゥッド、ドゥッドと歩き出し、ヴァン、ヴァヴァンと壇上に。よし行ける! シャッシャッ、シャウとプリント配布、みんなにプリント行き渡り、スタッタ、シャッで発表だ。

 レポートの出来そのものは、良いか悪いか分からない。だけど擬音を発するボクの気持ちは高まり、声は出る。ジュッパ。ダッタ。トゥー。順調過ぎるほど順調に、ボクの発表は進んで行く。一度も停滞することなく、ハッサン、テェアで終了だ。もしも擬音を言ってなきゃ、おそらく途中で詰まってた。

「擬音クン!」下校時はボクの方から声かけた。ホイホイホイホイ、ヨッ、ヴァヴァン。駆け寄ってくる擬音クン。「発表すんだ? どうやった?」ボクは右手の親指を、立てて擬音を口に出す。キラリンリン。「擬音を言えば力湧くって、本当だったよ。ありがとう」彼も親指を前に出し、新たな擬音を口に出す。

 ザッ、パンパーン。「こっちの方がええんちゃう」ニヤリと笑う彼とボク。「これでツヨシも今日からは、オレと同じく擬音族やな」「そうやね、だけど呼ぶときは、普通に名前で呼んでくれよな」周りの人に聞こえるように、少し大きく声出した。


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このストーリーに関するコメント

14/03/10 かめかめ

シュール

14/03/12 坂井K

コメントありがとうございます。
最初から最後まで勢いだけで書き上げたら、こんな感じになっていました…。

14/03/24 gokui

 読ませていただきました。
 宮沢賢治の小説を読んでいるような感覚でした。意味のない言葉を効果的に使うのって結構難しいんですよね。それをメインに持ってくるんだから、たいしたものです。
 女子校生は擬音で会話するって聞いたことありますが、会話に勢いをつけるためなんですね、きっと。

14/03/26 坂井K

コメントありがとうございます。
宮沢賢治を意識して書いたわけでは無いのですが、小学生のときに読んだ記憶のかけらが頭の片隅に残っていて、知らず知らずのうちに影響を受けていたのかも知れませんね。

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