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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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五〇〇万年前の一つの勇気

14/03/05 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:2153

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 時は今から五〇〇万年前、アフリカの大地は熱帯雨林から乾燥したサバンナへと変化しつつあった。これによりジャングルは徐々に消滅し、まるで大海に浮かんだ島々のごとく、草原に小さな森が点在する状態となっていた。
 当然、年ごとに森で採れる果実も少なくなって行った。そして森の住人の類人猿たち、不幸の宿命を背負っているのか、食料が減少してもそこから抜け出せなかった。
 されども類人猿たちは母音の発声だけで互いに意思疎通をし、助け合って生きていた。
 ここにその一例がある。

 霊峰キリマンジャロを望む地に、ウウアアという小さな森があった。そこには未亡人のアアイと、その娘のアアエが慎ましく暮らしていた。しかし、最近バナナやドリアンの木が枯れ、並以下のひもじい食事しか取れずにいた。
 木の上から眺めると、2キロ先にオイオイと呼ばれる森がある。最後に残った豊かな森だ。そこへ行けば果物がたわわに実ってることだろう。飢餓状態にあった母と娘は、いつの日かあの森に移り住みたい、そんなことを夢見て、生きる希望を繋いでいた。
 だが、それは叶わぬことだった。なぜならサバンナにはライオンなどの猛獣が多く生息している。類人猿の不器用で遅い四足歩行で移動を試みても、すぐに追い掛けられ、餌食となってしまう。
 母と娘はもう為す術がない。ただ寄り添い合って、天国へと召されるのを待つしかなかった。
 そんな進退窮まった時に、「アアアーン!」の雄叫びが上がった。亡き亭主の友人、オオオが綱渡りをしてやってきてくれたのだ。
 オオオは死の間際に頼まれていた。アアイとアアエの女たちが飢えた時には助けてやって欲しい、と。オオオにとって、それは男の約束。早速、銜えてきたバナナを母と娘に渡した。二人は感謝の涙を流しながら分け合って食べた。
 それが終わり、母のアアイはきりっと背筋を伸ばし、オイオイの森を指差した。最初何のことかわからなかったオオオ、だがすぐにピンときた。後は徐に胸に手を当て、男の深い思いを絞り出したのだった。
── イオイエ エアウア ウウアイアイ ──と。

「先生……、先生! ちょっと待ってくださいよ。何なのですか、それ?」
 中年サラリーマンの高見沢一郎、働けど働けど給料上がらず、ここは気分転換にと市民講座に参加した。そして選んだテーマは『人類への進化』。
 今日はその初講義、一応オイオイの森を指差したところまでは面白かった。しかし、イオイエのなんじゃらかんじゃらの……ウウアイアイとは? さっぱりわからない。これでは先へと進めないぞと、無料講座だが、ここは厚かましく手を上げた。
「高見沢さん、グッドクエションですね」
 先生は胸の名札を覗き込み、親指を押っ立てて、余裕の笑み。それから「イオイエ エアウア ウウアイアイ」と復唱し、後は自信たっぷりに言い放った。
「すなわち── 義を見て せざるは 勇無きなり ──ってことです」

 えっ、イオイエが……、そんな翻訳あり? しかも、ことわざ?
 教室内のあちらこちらからドシッ、ドタンの異常な物音が一斉に上がった。要は聴講生全員がその意外性にズッコケたのだ。もちろん高見沢も椅子からゴロッと転げ落ちた。
 それにしても不思議なものだ、その続きが気になる。
「義を見てせざるは勇無きなり。とどのつまり、オオオはどんな勇気を奮い立たせたのですか?」
 この高見沢の追っ掛け質問に、先生はニタリとし、講義続行。

 オオオの勇気は、ウウアアの森から脱出し、危険なサバンナを横切り、オイオイの森へと友人の家族を移り住ませること。早速二人に手を差し伸べ、新世界を目指して第一歩を踏み出した。
 されどもそこはサバンナ、食うか食われるかの猛獣ワールドだ。アアイとアアエはブッシュに身を隠しながらの四足歩行。しかし、ナイスガイのオオオは違った。周辺に獰猛な獣が潜んでいないかを随時チェックするため、高難度の直立二足歩行を決行した。結果、オオオは1時間の二足歩行を完遂し、友人の妻と娘をオイオイの森へと無事エスコートしたのだった。

 ここまで受講した高見沢、だが、もう一つ腑に落ちず、あらためて挙手。
「先生、ハッピーエンドで良かったと思いますが、この講義のキモは……一体何ですか?」
 こんな直球を受けた先生は高見沢をギョロッと睨み、後は淡々と締め括った。
「人類の証は二足歩行。オオオは勇気を奮い立たせ、直立二足歩行でサバンナを踏破した。これこそが類人猿から人類へと進化した原点です。つまり、君たちが今、人として存在しているのは、オオオの義を見てせざるは勇無きなりがあったからなのです」
 な〜るほど、五〇〇万年前の一つの勇気が現代人の我々へと繋がっていたのだ!
 聴講生全員は起立。そして最初の人類、オオオの勇気に、拍手喝采を惜しまなかったのだった。


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このストーリーに関するコメント

14/03/05 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しました。

どこからこんな言語を思い付かれたのでしょう、えっ!ええーっと思いながら読み進みました。この類人猿の言葉を考え出すのに、(まさか本物じゃないですよね 笑)何時間費やされたのかと。要らぬことばかり考えて読み進んだ私をお許しください。
もしかして、鮎風様は、彼の有名なターザンの末裔様でしょうか? えっ、そうなんですか、やっぱり。苦笑 かってに乗ってしまいました、すみません。面白かったです、ありがとうございました。

14/03/05 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

この言語、
鮎風のミステリーワールドの標準言語でして、簡単ですよ。
ご参考に。

例えば
義を見て せざるは 勇無きなり
GIOMITE SEZARUWA YUUNAKINARI

ここから母音だけを取り出して
IOIE EAUA UUAIAI
イオイエ エアウア ウウアイアイ

てなことで、アイアオウ。

14/03/06 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

実はそんな理由で二足歩行になったとは驚きですね。

ある説だと、餌をたくさん取るために二足歩行になって両手を使える
ようにしたという、野生のチンパンジーを使った実験の記事を読んだこと
があります。

とにかく、二足歩行になって人類は脳が進化したと言われています。

オオオの勇気に、拍手喝采!!

14/03/06 笹峰霧子

一ブロックでは、それほんとのこと?と思いながら読み、
二ブロックでは、アとイとオの連語が続々と出てきて可笑しくなり、
最終ブロックで、高見沢氏の登場でやっと状況がわかりました。
とてつもなく面白いモノガタリでした。

14/03/07 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

人類への進化、いろいろな説があるのですが、
他に海の中で立って魚を獲ってて、ついついそのまま陸に上がったとか。

今がチャンスです、新説の。

14/03/07 鮎風 遊

笹峰霧子さん

コメントありがとうございます。

最初は説明風、そこから中途はコメディ、
最後は拍手喝采でなんとかおさまりました。

高見沢一郎をよろしく。

14/03/10 かめかめ

類人猿の物語、かなりイイ話ですよね。好きです。
こういう講義なら聞きに行きたいかも。

14/03/11 朔良

鮎風遊さん、こんばんは。
拝読いたしました。

ずっとジャングルの話で続くのかと思ったら、途中で現代の視点に戻ることで、話が分かりやすくなりますね。
母音を使った原始人たちのやり取り面白いです。
ひとりの原始人の勇気今の我々につながっているというのもなんだか素敵だなと思いました。
面白かったです。

14/03/15 鮎風 遊

かめかめさん

コメントありがとうございます。

近場の市民講座、案外こういうのをやってるかも知れませんよ。
よろしく。

14/03/15 鮎風 遊

朔良さん

コメントありがとうございます。

面白く読んで頂き、光栄です。
類人猿たちはきっとこんな言語で会話していたのでしょう。

よろしく。

14/03/15 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

二足歩行になった理由にこんなステキな物語があったとは!
オオオの勇気は人類に受け継がれてきたことでしょう。
面白かったです。

14/03/18 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

オオオの勇気に拍手を頂き、本人も喜んでいることでしょう。
面白く読んで頂き、光栄です。

14/03/23 光石七

拝読しました。
そうか、人類が二足歩行するようになったのはこんな経緯が……ってフィクションですよね(笑)
母音だけの名前やセリフも面白く、楽しませていただきました。

14/03/25 鮎風 遊

光石七さん

コメント、ありがとうございます。
いえ、フィクションっぽい事実です。
よろしく。

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