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笹峰霧子さん

毎日一眼レフで写真を撮っています。 只今俳句を勉強しているので毎日更新しています。 https://kei9594wa.exblog.jp/

性別 女性
将来の夢 今年は健康志向で生活が回っています。 もっと元気になって余生の孤独を楽しめるような工夫をしたい。
座右の銘 周りと共調しながらも 何事にも動じない心境。

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夢子の居場所

14/02/28 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:8件 笹峰霧子 閲覧数:1463

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「このあいだのことなんだけどね」
沙織は思い出したように唐突に言い、更に続けた。
「あのとき明ちゃんが言ったじゃない?独りっ子は人間じゃないって。私、そういうこと平気で言う者のほうがおかしいと思うのよ」

「そうねぇ。彼女は自分の旦那さんのことを言ったつもりだって後から慌ててフォローしてたみたいだけど」
 夢子は沙織の言葉に同意して頷きながら、あのとき明ちゃんが言ったことは誰よりも覚えているよと内心思っていた。ぐさっとくるほどのショックではなかったけれど、自分も独りっ子だから明ちゃんの言葉に良い気はしていなかった。

 明ちゃんはいつもどきっとするようなことを平気で口にする。夢子も彼女の言葉に不快な思いをしたことが何度かあった。 でも夢子は明ちゃんがそんな人だと思っていたから、彼女が言うことを良いとか悪いとか話題にする域には捉えていなかったのだ。


 夢子は他の場でもたまに人前でふいを突っつかれることがあった。
 誰かが夢子にからかい半分で何か言ったとき、周りはなんとなくしらっとした雰囲気が流れ、誰もそのことに関しては口を挟まないのだ。

 時々そういういやな思いをするので、夢子はグループの付き合いには参加するのを避けるようになった。

 家に帰ってその話をすれば慰められるどころか、「きみはいじめを受けやすいタイプだからな」とけんもほろろなのだ。


 別のグループでは、俊子さんがいつもいう。
「夢ちゃんはほんとに独りっ子って感じね。うちの息子も独りっ子だけど……」
 俊子さんのことを夢子は良い人だと思っていて心許していると、時々プライバシーに侵入しちくっとやられる。

「……ってことはどんないみですか」
「まあ、裏表がないというか……、それにちょっとわがままかな」

 そんなふうに言われても、いつの場合だって夢子は反論することもせず聞き流しているのだ。テーブルを囲んでいるあとの四人は黙ってふたりの問答を聞いている。


 夢子は付き合う友達みんなのことを尊敬していた。
 自分よりはるかにしっかり者でどっしりかまえていると思っているからだ。……というより、みんな他人からつっこまれる隙のないほど身構えている人たちばかりのような気がしていた。

 それにしても……、と夢子はときどき思うのだ。
 どうしてあの時なにも言わずに、後になって明ちゃんの言ったことおかしかったと批判するのだろう。そのとき本人に向けて自分の考えを言うのがまずいと思ったのだろうか。

 あの場にいた六人の内、何人が明ちゃんの言葉を批判していたのだろう。
 みんなその場のボス的存在の言うことに物申すことは避けてんだ。自分にその矛先が向けられるのを怖がってるんだ。


 夢子は世の中の人達が自分を良く見せたり、他からやられたりしないようにということばかりに意識を向けているのが無性にいやだった。

 その場のみなと異なる意見を持つ人へ加担すると周りの人に何と思われるか、そんなことをしていると他人から仲間はずれにされるのではないかということばかりを考えている。


 夢子が在籍しているグループはいくつかあったが、その中でもそれと同じことはあった。
たしかに誰もが納得すること、もしくはボス的なひとに追従する発言をしていればなんの被害も受けなくて済む。
 「寄らば大樹の陰」……ということか。

 良いものは良い。
 でもそれを良いと決めるのは誰なのだろう。わずか数名の場で、たとえあとのほとんどが別の意見であったとしても、それは比率だけの問題であって、果たしてそれが絶対値だといえるのだろうか。

 人が嫌ったり批判していることはどこかおかしな所があるかもしれない。だが考えようによってはその中にも真実があるかもしれないし、その中にこそ妥協しない得難いものが含蓄されているかもしれない。


 これまで夢子は弱者に加担することへの恐れを感じたことはなかった。むしろ狭い社会で天狗になっている者への不快感のほうが強かった。

 ――赤信号みんなで渡れば怖くない
とかなんとか、それは結局世の中への追従を認めているようなもの。



 夢子が自分自身の夢を見るようになったのはそれから数年経っていた。
 何度となく誘われもしたが、自分の個性がまかり通らない場へ行くことは決してなかった。
 
 自分の夢を描くことが執筆することによって叶えられると知ったのもその頃だった。
その世界では誰にも追従することなく、どんな夢でも構築できる。
夢子は勇気をもらった。
 自分自身を表現する手段を得ることによって、どの世界にも足を踏み入れられるという自信……。

 夢子は今はもう単なる夢を見ているのではなく、地に足をつけて胸を張って堂々と歩いているのだ。



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このストーリーに関するコメント

14/03/01 泡沫恋歌

笹峰霧子 様、拝読しました。

人間関係の難しさですが、こういう遣り取りは何処にでもありますよね。
その場にいない人の悪口をいうのは主婦たちの集まりでは普通です。

人に好かれようと思えが自分を殺さなければならない。
自由に振る舞いたければ、人の評価は気にしない。
嫌われてもいいと思わないと遣りたいことはできません。

創作も自分が楽しんでやっていけば良いと思うのです。

14/03/01 笹峰霧子

泡沫恋歌さま

コメントをありがとうございます。
どんな場でも本音をいわず黙って人の窮地を傍観している人たちのなんと多いことでしょう。そして内心ではしっかり批判している。

面と向かって言われるのも厭なものですが、そういう状況を黙ってみているというのは現代の子供社会にも見られる現象ですね。

大人なら切り抜けるすべは色々ありますが、子供なら閉じ籠りにならざるを得ないのでしょう。

14/03/05 草愛やし美

笹峰霧子様、拝読しました。

人間関係は難しいですね、一人っ子だから云々、あの人は自己主張が云々、社会にいる限り避けられないものだと思いますが、鬱陶しいなあと私も思います。
創作の世界は自由です。でも、時々、私は、あり得ないものを書いていてふと、凄い嘘つきかもと苦笑したりしています。ファンタジーやSFは全くそういうの感じないのですが、一人称で人生なんかを扱ったものなど、そういうの考えてしまいます。まだまだ夢子さんにはなれてないのだなあとこれを読んで痛感しました。苦笑 頑張らねば、ですね。

14/03/05 笹峰霧子

草藍さま

コメントをありがとうございます。
滅多にグループには入りませんが後で疲れます。(笑

最近は人と話すより独りで歩いたり車に乗っているときが快くて、車の中では好きなCDを買ってきてきいています。

創作はやはり虚構のモノガタリを書く時が楽しいですね。
草藍さんの作品のようなファンタジーとかSFを書く力はありませんので、
身近なことにヒントを得て、自分ではない人物を自分のことのように書くのは楽しいです。

14/03/07 鮎風 遊

ゴーイング・マイウェイというか、極める道でしょうか。
夢子さんに迷いがなくなったかと思います。

良いことだと思いました。

14/03/07 笹峰霧子

鮎風 遊さま

コメントをありがとうございます。
夢子の決意は私自身の夢でもあります。

創作を始めて数年になりますが、その世界では意思表示もできて
他で発散しなくてもやって行けるようになりました。

14/03/09 そらの珊瑚

霧子さん、拝読しました。

人間関係の煩わしさは、グループになればなるほどありますね。
大人になれば、自分とは合わない人と付き合なければいいのですが
学生時代となると、なかなかそれも出来ません。

創作の世界はまさに一人で紡ぎ出す自由がありますね。

14/03/09 笹峰霧子

そらの珊瑚さま

コメントをありがとうございます。
グループも大勢ならその中の一人としていられるのですが、
5,6人の集まりは私は苦手なんです。

三角も苦手でしたが、この頃は自分と合う人を選ぶようになったので
やっと楽しめるようになりました。

児童、生徒、学生、若いママ時代……、
それぞれに難しい世界だと思います。

創作は自分の意思を作品に表現できるので、大いなるストレスの発散にもなっているかなと思われます。

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