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五助さん

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翻訳強盗

14/02/25 コンテスト(テーマ):第五十二回 時空モノガタリ文学賞【 勇気 】  コメント:6件 五助 閲覧数:2076

時空モノガタリからの選評

「翻訳強盗」というアイデアが斬新でとても面白いと思いました。「筋肉ゆきだるまみたいな奴」の通訳をしているだけという「私」の主張の真偽はともかく、彼のジタバタ具合がとても面白かったです。
「言うこと聞かなきゃ、フライパンに火をかけとけ」「生まれ故郷の地球の裏側から飛び込んで、お尻の穴に入ってやろうか」「振り返ったら、オレンジジュースを一晩凍らせて、モップの毛の部分を割り勘で払ってやるぞ」という、「この国の比喩」が意味不明で可笑しいですね。「二千字で出せる勇気なんて、たかが知れてますよ」というのも妙に説得力もありました。
「言わされているだけ」「無実」だと言い張る「私」ですが、端からみたらどう見ても、ただの怪しい人ですよね。かわいそうですが、彼の言い分が信用されるのは無理そうですね。

時空モノガタリK

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「金を出せ、などと私が言いたいわけじゃないんですよ。彼が言っているわけで、私がそれを通訳しているだけなんです。もちろん、もちろんそうです。共犯者なんかじゃありません。たまたま、通訳を頼まれただけなんです。レストランにいる奴らの国の言葉がわかるか、なんて言われて、大丈夫ですよ。なにか用事があるんですか、通訳しましょうか。なんて安請け合いしちゃったからこんなことに、ああ、大変だ。早くお金を出せって、早くお金を出さないと、お尻をぶっ叩いて、半分にするぞ、とか言っています。
 嫌だって、あなたね。私だってこんなことを言いたくないですよ。でも、私の後頭部を見てくださいよ。ほら、拳銃を突きつけられているんですよ。みなさんも撃たれたらどうするんですか。かまわないってあなたね。何、男気出してるんですか。あなたはかまわなくてもみんな困るでしょ。私も撃たれたくないんですよ。格好いいこと言ってる場合じゃないですって、後で警察に連絡すればいいじゃないですか。はは、みんな嫌だってさ、どうしましょ。

 あの、失礼ですが、みなさん鞄をお借りできないでしょうか。ええと、私が言ってるんじゃないですよ。私の後ろの、肉の塊みたいな男性が言ってるんです。そいつらの鞄を奪って金目のものを奪えって、私が言ってるんじゃないですよ。えっ、嫌だって、みなさんまたですか。あなた方に覚悟があっても私にはないんです。私の頭に拳銃が突きつけられているんですよ。言うこと聞かなきゃ、フライパンに火をかけとけ、なんて言われているんですよ。ええと、ようするに、頭を、後頭部を銃で撃たれると、私の目玉が飛び出てしまって、その目玉で目玉焼きができるから、先にフライパンに火をかけとけって言いたいんですよ。場所がレストランだけにね。うまいと思っているんですかね。映画の見過ぎですよ。
 はっ、嫌ですか、あくまでも言い張るんですね。財布もだめ鞄もだめ、お金もなにも出さない。いいでしょう。彼に伝えますから。

 ひぐっ、いいい、痛いよう。なんで私が殴られなきゃいけないんですか。私が拒否した訳じゃない、あなたたちが拒否したんじゃないですか、それなのになんで私が殴られるんです。くそう、どうすりゃいいんだ。えっ? 戦うですって、協力して? ご冗談を、相手は銃を持っているんですよ。しかも筋肉雪だるまみたいな奴ですよ。勝てっこないですよ。なにかいい作戦があるんですか? 
 ふむふむ、ほぼ、わたしですね。ほぼ私が危険な目に遭いますね。却下です。絶対嫌です。勇気を出せって、何を言っているんですか。二千字で出せる勇気なんて、たかが知れてますよ。とっかかり程度でいいんじゃないですかね。いや、私が言ってるんじゃないですよ。言わされているだけですからね。

 大変です。怒ってます。後ろの人、相当怒ってます。むちゃくちゃ、やばいですよ。いいですか、落ち着いて聞いてくださいよ。彼の言葉をそのまま伝えますからね。一人ずつ、てめぇらの、生まれ故郷の地球の裏から飛び込んで、お尻の穴に入ってやろうかと言ってます。怒ってます。相当怒ってます。やばいです。最後通告です。この国の比喩だからわかりにくいかも知れませんが、相当怒ってます。最上級です。
 えっ、なんです。後ろを絶対見るなって、見ませんよ。撃たれたらどうするんですか。振り返ったら、オレンジジュースを一晩凍らせて、モップの毛の部分を割り勘で払ってやるぞって言われているんですからね。意味ですか。わかりませんよ。私も聞いたことのない比喩です。えっ、警官がいる。どこに、扉の辺りに、わかりました。見ないようにします。突入とかしてくれるんですかね。そうだ。奴の気を引きましょう。皆さんお金を出してください。そうすれば奴はお金に釘付けです。私も解放されるかも知れない。
 ええー、こんなに持ってるんですか、すごいな。観光ですか。あそこ行きました。滝の所、きれいですよ。えっ、なんです。わかりました。お金を詰め込んだ鞄を渡した瞬間ですね。そこで突入と、警官が紙に書いているんですね。間違いないですね。じゃあ、お金渡しますよ。ほれ!

 うわぁあああ、なにするんですか! なんで私を逮捕するんですか! ちがいますちがいます。犯人はそいつだけです。お金を集めてたって? それは作戦です。共犯者じゃないですって、皆さんからも言ってください。私は無実だって、通訳しますから」


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このストーリーに関するコメント

14/02/26 黒糖ロール

拝読しました。
設定が面白くて、楽しませてもらいました。

14/02/26 はりやまさん

面白かったです。
全て一人の男の会話で続いてて、オチも良かったです。
なんか実際に外国で起こりそうだなって思いました(笑

14/02/28 クナリ

テンポがよく、なんとも面白かったです。

14/03/01 朔良

五助さん、こんにちは
拝読いたしました。

その国独特の言い回しって、外国の人がきいたら奇妙に聞こえるでしょうね〜。
すごく読みやすくて面白かったです!
2000字で出せる勇気としては十分ですよねw

14/03/01 草愛やし美

五助様、拝読しました。

めちゃくちゃ面白いじゃないですか、途中に入る2千文字の勇気ってたかが知れているに苦笑いしながら、いや、これだけ出せれば充分でしょうと、私も言いたいです。楽しく読ませていただき、ありがとうございました。

14/03/10 かめかめ

問答無用で面白かったです

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