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平塚ライジングバードさん

今生の私の実力では無理ですが、 来世かその次の来世においては、 物語で世界を変えたいと強く思っています! 制作者の皆さんが「こんな発想もあるのか…」と 目から鱗が落ちるような作品作りに努めます!!

性別 男性
将来の夢 将来の夢を堂々と語れるようになること
座右の銘 圧倒的物量は質を遥かに凌駕する

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メタ・トライアングル・ラブストーリー

14/02/24 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:9件 平塚ライジングバード 閲覧数:2009

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蝉の声が響いていた。
真っ青な空に、真っ白な雲。眩しすぎる太陽。
もうすぐ夏が終わるなんて信じられなかった。
でも、確実に終わる。
夏の終わりとともに、僕たちが紡いだ世界は終焉を迎える。
僕たちが悩みに悩んだ軌跡は、ひと夏の物語として昇華され、それはきっと素晴らしいハッピーエンドになるのだろう。

廃線となった電車のホームに腰掛けながら、僕は考える。
僕たちの未来もこのホームと同様に、ただ輝かしい日々だけを記録して再び動くことはないのだろうなと。
夏草が無作法に茂る線路を見つめながら、僕は咥えていたアイスを噛み砕く。
そして、打ち捨てられた線路の上を駆け出した。
終わらせてたまるかなんて呟きながら。



「ごめん。全く理解できないや。」
クラスメイトの俵夜未知は、そう言って苦笑した。
「君が告白すべき相手は私じゃないでしょ。」
僕には大好きな人がいる。彼女も僕のことを好きと言ってくれた。ひと夏を費やして、僕たちは両想いになった。
「君は、いったい何人泣かせれば気がすむの?小説の主人公にでもなったつもり?」
心臓が強く脈打つ。
僕と僕の大好きな人の間には、複雑かつ様々な関係性が絡み合っていた。彼女の元に辿り着くまでに、僕は何人の友人を泣かせただろう。あの子に対する強い感情だけが僕を前に進ませた。
今だってそうだ。
「未知、もう一度言うよ。僕と付き合ってくれないか。」
「本気?」
「ある作家が言っていた。成就した恋は語るに値しないって。」
「どういうこと?」
「この夏、たった一ヶ月の間だけど、僕は確かに小説の主人公だったんだ。三角関係をテーマにした物語のね。」



俵夜未知は、僕を屋上へと招いた。
「サイダーでいい?」
返事をする暇も与えず、彼女は僕に缶を放り投げる。
プルタブを押し込むと、勢いよく中身が噴き出した。
「あはは。定番、定番。」
そう言って、未知は笑った。
彼女は、SF研究部というインドアな部活の部長を務めながら、インドアとはかけ離れた外見、人間性を持っていた。
「で、どうして主人公だと思ったの?」
「この夏が物語として出来すぎていたから。それに…僕が迷った時は、予め決められた道を辿るかのように、常に最良の選択肢が閃いたんだ。」
「それで主人公って、飛躍しすぎじゃない?」
「そうかもしれない。でも、僕と彼女の物語はこれからなんだよ。これからたくさんの思い出を二人で作っていくんだ。もし、この世界が一つの作品だとして、『二人が結ばれたからストーリーは完結します』だなんてあんまりじゃないか!」
「そうは言っても、私と付き合って三角関係を歪な多角形にしたところで、ダラダラと物語が引き延ばされるだけ。何の解決にもならないわよ。」
「だから、僕は敢えてSF研究部の部長に告白しているんだ。」
僕はニヤリと笑う。
「成程ね。分かった。君とは付き合えないけど、君に付き合ってあげるよ。」
彼女は、僕以上に不敵な笑みを浮かべ、僕の肩を小突いた。



「物語は王道に敏感なの。夏休み、晴天、屋上、男女、告白。今まさに良い条件が揃ってるから、関係者が聞いてくれそうね。」
風の音に掻き消されそうな程の声で、未知は呟く。
そして、夏空に向かって両手をかざした。
「私の声が聞こえますか!」
広大な空に彼女は大声で叫ぶ。
「もし、この世界が三角関係をテーマとした作品だとして!」
「全ての物語は、三角関係として成立していると思いませんか!」
「すなわち、私たち作品内の登場人物、物語制作者、そして読者…その三者の関係性から成り立っているのです!」
「作中で三角関係が成立していなくても、それが物語という形で発信される以上、三角関係という構図から逃れられないのです!」
「だから…もし、この世界が三角関係をテーマとした作品だとしたら!」
「本作は、登場人物、作者、読者の関係性をメタ的に表した実験的創作ってことで問題ないですよね!」
明後日の方向に投げかけられた俵夜未知の言葉は、別次元への意見具申だった。



息を切らしながら、未知は僕に向かって親指を突き出した。
思わず、僕は彼女に抱きつこうとしたが、避けられた。
「抱きつく相手が違うっつーの!」
「ごめん、感極まって…。それにしても物語の主人公だなんて、僕の妄想なのかもしれないけど、それでもあの子と向き合う勇気が湧いたよ。」
「それは良かった。ただ、この世界が物語だとしたら、主旨が変わっちゃったから、君のひと夏の青春活劇は全面的にカットされるかもね。」
「あはは。構わないよ。誰かに見られると思うと恥ずかしいし。」
「それもそうね。で、あの子の所に行くの?」
「うん。本当にありがとう。」


未知と別れた僕は、全力で駆け出す。
頬を撫でる涼しい風は、夏の終わりではなく、次の季節の訪れを感じさせた。


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このストーリーに関するコメント

14/02/25 朔良

平塚ライジングバードさん、こんばんは。
拝読いたしました。

だから、題名がメタ・トライアングル・ラブストーリーなのですねぇ。
まさか、三角関係がお題の掌編でメタものが出てくるとは思いませんでした。さすが平塚さん、目の付け所が違いますね!

最初の段の夏の終わりの描写が、甘酸っぱい青春を思わせて秀逸です。それも、自分を小説の主人公とするメタの構成のひとつなのですね。
俵夜未知(何と読むのでしょうか?)という名前にもなにか仕掛けがありそうだなと思いつつ、解答はは思いつきませんでした^^;
すごく興味深く読ませてもらいました。面白かったです!

14/02/25 泡沫恋歌

平塚ライジングバードさん、拝読しました。

う〜ん。
作家の意図する深い部分が読解力のない私にはイマイチ分からなかった。
(o_ _)o))ゴメン

平塚ライジングバードさんの書くストーリーにはたくさんの罠が仕掛けてあって、
最初のトラップにひっくり返って、私は顔面強打しました。

まだまだ勉強不足で申し訳ありません。
いつも不思議な世界感には感銘を受けています。

14/02/25 そらの珊瑚

平塚ライジングバードさん、拝読しました。

学園ものかと思いきや。一筋縄ではいかない構築された世界観が平塚さんらしいなあと思いました。
といってもどこまで理解できたのか、わかりませんが。
俵夜未知さんは自分たちの世界が小説の中ということに唯一気づいてたんですね。面白かったです。
私もこの名前の仕掛けに(なんかあるはずだと)頭をめぐらせましたが、朔良さん同様わかりませんでした。

14/02/26 平塚ライジングバード

朔良さま

コメントありがとうございます☆
何とも中途半端な作品だったかもしれません。
平塚の狙いは、まさに朔良さんの仰るとおりで、実験的な三角関係を
描きたいというのが出発点でした。
ただ心残りが二点…(ーー;)

一つは、本作と別に考えていたコメディの方が面白かったんじゃないか
ということ。
↓ちなみにこんな感じです。

【タイトル】
「斉藤さんから斎藤さんを経由して齋藤さんに送られた荷物は、
斎藤くんの妨害に遭い、齋藤くんの元に引き渡されたが、
斉藤くんによって奪還された」

【あらすじ】
斉藤の「斉」に斉藤の「藤」と書いてサイトウと読む「斉藤」さんは、
ある日、恋人の齋藤さんに荷物を送るべく、コンビニへ出掛けました。
すると、コンビニの店員も斎藤だったため、必然的にサイトウ談義に
花が咲きました。
「齋藤さんと結婚しても名字が変わりませんねぇ。」
「いやいや表記が変わるから逆に面倒くさいんだよ。」

と話し込んだのも一ヶ月以上前の出来事。荷物はいっこうに彼女の元に
届きません。
奇しくも、世間では宅配便強盗が急増しており、警察は斉藤刑事を中心と
する捜査チームを結成しました。
斉藤刑事は早速関係者を洗い出しましたが、何と関係者全員の名字が
サイトウだったのです。
斉藤刑事は、合法、非合法を問わず、ありとあらゆる手段を用いて、
関係者を鳥取砂丘に集合させました。
その数1800人。
内訳は、斉藤が600人、斎藤が600人、齋藤が600人。
斉藤刑事は、ひとまず彼らを整列させることにしました。

その瞬間、奇跡が起こったのです。
「Oh…just beautiful triangle!!」
偶然日本上空を通過した有人宇宙船の乗組員が
謎の三角形を目撃したのです。

斉藤刑事が、なぜ三角形に整列させたのかは不明ですが、
宇宙から見れば非常にどうでもいいことです。
更に言えば、誰が犯人かなんて宇宙から見れば、非常に
どうでもいいことなのです。

唯一、間違いなく真実であるのは犯人の名字が
サイトウであるということ…


ええと。
色々とごめんなさい。
本作にしろギャグにしろ中途半端な感じになったみたいです。

もう一つの心残りは次の方のコメントに書きますっ。

14/02/27 平塚ライジングバード

恋歌様、コメントありがとうございます☆

いやいや、今回は(今回も)完全に自分の力量不足です。
三角関係の三者に意外性を持たせようと考えていたら、本作ができ
あがりました。
発想は置いておいて、作品として面白いかと問われたら、首をかしげる
ような内容かもしれません。
何はともあれ、顔面強打させてごめんなさい。
分かりやすい作品作りに心がけます。

ただ…一つ。
実は、今年の三月いっぱいで本サイトの卒業を考えています。
恋歌様を始め、御世話になっている方々には、申し訳ないのですが、、、
実は本サイトと諸々と同時に長編小説を書いていまして、ダメ元では
ありますが、プロ作家に直結する賞にチャレンジしたいと考えているんですね。

皆さんともっと楽しみたい、一緒に切磋琢磨したいという気持ちも
ありますが、仕事・プライベートともに大きな変化があったので、
そろそろ長編に本腰をいれないと…というのが正直なところです。

なので、もうしばらくの間だけ本サイトで私の駄文に付き合って
いただけると幸甚です。

14/02/27 平塚ライジングバード

珊瑚さま、コメントありがとうございます!!

稚拙な文章から、何かを読み取っていただけてとても嬉しいです。
恥ずかしいことを言ってしまいますが、読んでもらえるって
本当に幸せなことです。

朔良さんのコメントに書いたもう一つの心残りが、まさに俵夜未知
(たわらや みち)さんです。
これは恋歌さんへのコメントにも繋がるのですが、このキャラクターは
実はダラダラと書いている長編の登場人物だったりします。

過去に過去に作り込んだキャラクターを別作品に登場させるのは、
時折意外な化学反応が起きるんで、結構好きなんですね。
大抵失敗することが多く、本作もやっちまったー( ̄▽ ̄;)
…という感じです。設定・演出で読者をおいていったのに、
キャラクターも完全に独りよがりになってしまったことが、
何とも心残りです。

ちなみに、この機会に言ってしまうと、、、
『境界線上のメリーゴーラウンド』の伊勢先輩
『逆様信仰』の凛ちゃん
『彼岸シンドローム』の彼岸様および青行灯
『水月を追う犬、蒼天を仰ぐ猫』の遠山大悟
そして本作の俵夜未知さんは、
全て現在執筆中の長編小説の登場人物だったりします(苦笑) 。

14/02/27 平塚ライジングバード

珊瑚さま、コメントありがとうございます!!

稚拙な文章から、何かを読み取っていただけてとても嬉しいです。
恥ずかしいことを言ってしまいますが、読んでもらえるって
本当に幸せなことです。

朔良さんのコメントに書いたもう一つの心残りが、まさに俵夜未知
(たわらや みち)さんです。
これは恋歌さんへのコメントにも繋がるのですが、このキャラクターは
実はダラダラと書いている長編の登場人物だったりします。

過去に過去に作り込んだキャラクターを別作品に登場させるのは、
時折意外な化学反応が起きるんで、結構好きなんですね。
大抵失敗することが多く、本作もやっちまったー( ̄▽ ̄;)
…という感じです。設定・演出で読者をおいていったのに、
キャラクターも完全に独りよがりになってしまったことが、
何とも心残りです。

ちなみに、この機会に言ってしまうと、、、
『境界線上のメリーゴーラウンド』の伊勢先輩
『逆様信仰』の凛ちゃん
『彼岸シンドローム』の彼岸様および青行灯
『水月を追う犬、蒼天を仰ぐ猫』の遠山大悟
そして本作の俵夜未知さんは、
全て現在執筆中の長編小説の登場人物だったりします(苦笑) 。

14/02/28 草愛やし美

平塚ライジングバード様、拝読しました。

長編に挑戦されているので、頭がそちらに向いておられるのでしょうね、登場人物しっかり記憶しておかなくては、大賞を取られた時に、購入しまして、読み進みながら一人、「出た〜〜〜これ!俵夜未知」とほくそ笑みたい。秘密の共有ができる仕掛けなのですね。
この脚本のような、舞台設定の三角関係にも仕掛けがあるのでしょう。まずは、だらだらとしないために三角を断ち切るように時空を卒業されるのですね。頑張ってください、密かにそして、おおっぴらに応援させていただきます。>がまてよ、おおっぴらってどうやって? 苦笑

何かわけのわからないコメントになって参りましたので、私のコメントも、ここらでブチと切って終わりにします。ありがとうございました。

14/03/04 平塚ライジングバード

草藍様、コメントありがとうございます。
また、返信が遅くなってごめんなさい。

何ともコメントがしにくい感じになってしまいごめんなさい。
言い訳がましくなってしまうのですが、あまりの日々の忙しさに
ビビって、思わず「一度整理しよう」と真剣に考えてしまいました。

意外とすぐ戻ってくるかもしれませんが、環境的にも、自分の
器量的にも一度全てを白紙にして考えたいというのが、正直な気持ちです。
その上で、長編を完結させられたらなぁとも思います。

それにしても、今書いてる長編の登場人物です!という告白は、
何とも恥ずかしいことをやってしまった…という感じですね。
純粋な書き方トレーニングとして、自分が作った既存のキャラや
設定を他の作品に流用することは、別の側面が見えたりして
面白いですよ。

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