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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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ぺたんこトライアングル

14/02/21 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:10件 光石七 閲覧数:1775

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 奈結は保健室のベッドで目を覚ました。
「大丈夫か?」
傍らの篤樹の輪郭が徐々にはっきりしてくる。
「あっくん……」
「カエルの解剖は奈結にはきつかったか。グロいの苦手だもんな」
篤樹が奈結の頭をそっと撫でる。奈結は自分が生物の時間に倒れたことを思い出した。
「もうすぐ4時間目始まるから、俺戻るわ。奈結も元気になったら教室来いよ。昼、一緒に食おうぜ」
篤樹は奈結のベッドを離れた。
「先生、もうしばらくお願いします」
養護教諭に挨拶して篤樹は保健室を出て行った。養護教諭が奈結に話しかける。
「越原君、ずっと相川さんに付き添ってたのよ。優しい彼氏ね」
(優しい彼氏……)
奈結の胸がちくりと痛んだ。篤樹の本当の恋人は自分ではないから――。

 奈結と篤樹は幼馴染で同い年だ。住んでいるのが同じマンションということもあり、家族同士も交流がある。内気で引っ込み思案な奈結を、篤樹は昔からリードしたりかばったりしてきた。奈結は篤樹を慕うようになり、次第にそれは恋心へと変わっていった。
 中学2年の時、篤樹はある女子から告白されたが、きっぱり断った。
「俺には奈結がいるから」
こうして篤樹と奈結はカップルだと認識されるようになった。高校でもそのように見なされている。奈結は幸せだった。自分の想いをはっきり伝えたことも「付き合おう」と言われたこともないけれど、そばにいるのが自然で、それが嬉しくて……。篤樹も同じ気持ちだと思っていた。手を出してこないのは自分を気遣ってくれているのだと信じていた。あの子の存在に気付くまでは――。

 奈結は4時間目の途中で教室に戻り、午前の授業が終わると篤樹と弁当を広げた。
「よかった、食欲あって」
篤樹が安堵したように言う。
「相変わらず仲いいなー。独りモンには目の毒だわ」
クラスメイトがからかい気味に教室を出て行く。奈結は箸を置き、篤樹を見た。
「……あっくん、あの……」
「ん?」
「……いいんだよ? 無理に私といなくても」
「別に無理してないけど?」
「だって……あっくん、ホントは私のこと……」
「俺、奈結のこと好きだよ? 嫌いな奴と一緒にいるわけないじゃん」
優しく微笑む篤樹。奈結は目を伏せた。――わかってる、あっくんは嘘をついてるわけじゃない。だけど……。
「食べないの? ニラ入りの卵焼き、好きだろ?」
篤樹に促され、奈結は再び箸を手にした。

「篤樹、奈結ちゃん来たわよ」
数学の問題を解いていた篤樹は、母の声を聞いて立ち上がった。自室のドアが開くのを待つ。すぐに見慣れた少女が部屋に入ってきた。
「篤樹、お待たせ」
抱きつかれた篤樹は、嬉しそうに少女の背に手を回した。
「ユナ……」
ひとしきり抱き合うと、今度は唇を求め合う。
「……辛かったんじゃない? 保健室で二人きりのチャンスもあったのに、私が出てこないから」
体を離した少女が、挑発するように篤樹に問う。
「呼んだら出てきてくれた?」
「さあ? ……別に奈結が相手でもいいじゃない。体は同じなんだし、キスでもsexでも」
「俺の気持ち知ってて、そんなこと言うわけ?」
篤樹はもう一度ユナの唇を塞いだ。
 ユナは奈結のもう一つの人格だ。篤樹が知ったのは中学1年の夏休みだった。宿題を一緒にしていると、突然奈結が体をすり寄せてきて驚いた。呼び方も普段の「あっくん」ではなく「篤樹」。それ以降、ユナはしばしば現れるようになった。馴れ馴れしいかと思えば急に突き放すような態度。手玉に取られるような感覚が新鮮で、篤樹は蠱惑的なユナにすっかり魅了されてしまった。内向的すぎる奈結が篤樹への思いを募らせる中で生まれた人格なのかもしれない。ユナはユナの意志で表に出てくるようだが、夕方を過ぎてからのことが多い。また、今のところ篤樹の前以外では鳴りを潜めているらしい。
「あ、言おうと思ってたんだけど、この間みたいにキスの途中で奈結に代わるの無しにして。あれで奈結もユナに気付いちゃたし」
篤樹が腕の中のユナに言った。
「私は自分のしたいようにするだけよ。たまには刺激があってもいいじゃない? ……そうだ、篤樹以外の男と付き合うのもアリかもね。城戸先輩とか、ちょっといいかも」
「ダーメ、俺だけのユナでいて」
篤樹が腕に力を込めた。
「もう、独占欲強いわね。奈結ごと自分に縛り付けてんだから」
ユナが笑いながら篤樹の胸を小突く。
「奈結のことも嫌いじゃないんだぜ? でも、ちょっと物足りないっつーか……」
「私に満足させてほしい?」
「そういうこと」
二人は微笑み合い、ベッドに倒れ込んだ。


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このストーリーに関するコメント

14/02/22 朔良

光石七さん、こんばんは。
拝読いたしました。

三角は三角でも角のひとつははもうひとつと同じ…。最後まで読んで題名に納得がいきました。
男の子ってやっぱりこういう小悪魔な女の子に翻弄されたいのでしょうか^^; 奈結もユナも魅力的で、二人を独占してる篤樹くんはある意味幸せ者かも…。このぺたんこな三角形のバランスが崩れないように祈ります

14/02/23 光石七

>朔良さん
コメントありがとうございます。
タイトルの意味、通じたようでホッとしました。
男の子の心理はよくわかりませんが、惹かれる女性のタイプは大まかに分けると清純派と小悪魔の二種類だとか。
奈結がかわいそうだなと思いながら書いていて、篤樹的にはウハウハ状態(笑)だということに気付いていませんでした。

14/02/23 草愛やし美

光石七様、拝読しました。

三角形のもうひとつの角は、誰なのだろう?こんなに一緒にいてもいいのだろうか、などとかってな(苦笑)心配をしながら読み進み、この設定のオチに衝撃を受けました。これもありですよねえ、同じ仲間?でいながら、相反している二人の間で翻弄されながら、それが刺激になるというのは、三角関係ならではの気持ちだと思います。
ここからどうなるのかしらと、ミーハー的な興味本位の気持ちになった私です。面白かったです、ありがとうございました。

14/02/23 黒糖ロール

拝読しました。

オチが私には意外で、でもすんなり納得するところもあり、
面白かったです。
タイトル見て、ぺったんこな胸の人の話だと思った自分が恥ずかしいです。

14/02/23 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

奈結のことを思うとなんだか非常に可哀想。
もしかしたら抑圧された想いが別人格となってしまったのかなあと思いました。
面白かったです。

14/02/23 gokui

 読ませていただきました。
 篤樹は、奈結もユナも好きって事なので、そのうち二つの人格はまた一つになるかもしれませんね。っていうか一つになって欲しい。そうすればハッピーエンド?

14/02/23 光石七

>草藍さん
コメントありがとうございます。
ハラハラして頂けたようで、登場人物たちも報われます。
彼らの今後は……どうなるんでしょう? 私もわかりません。

>黒糖ロールさん
コメントありがとうございます。
オチに意外性を感じてくださり、うれしいです。
“直線に近い三角”を表す言葉として“ぺたんこ”を思いついたのですが、胸という発想も面白いですね。

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
確かに奈結は可哀そうですね…… でも、篤樹のそばにいたい気持ちもあると思います。
好きという思いが募り募っていくけれど口に出せない、伝えられる自分になりたいという奈結の願望がユナを作ったのかもしれません。

>gokuiさん
コメントありがとうございます。
篤樹は二人とも好きだけど、よりユナのほうに強く惹かれていると思っていただければ。
奈結とユナが一つになるとすると、ユナのほうが強そうですね。

14/02/24 泡沫恋歌

光石七様 拝読しました。

ああ、そういうことだったんだと驚きました。

篤樹くんは奈結とユナとふたりの人格の女性の間で揺れているのでしょうね。
これはひとりで二倍お得な三角関係かも知れない。

面白いお話、ありがとうございます。

14/02/24 光石七

>OHIMEさん
いつもありがとうございます。
篤樹、狡いッすね(苦笑)
それぞれの心情をもっとわかりやすく描写できればよかったのですが、難しかったです。
生き生き、みずみずしい……ですか? いえいえ、最近は息も絶え絶えになりながらなんとか仕上げている状態ですので。OHIMEさんのように力のあるお話を書けるようになりたいものです。

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
自分でも「一粒で二度おいしい」というフレーズを思い出しました(苦笑)
面白かったと言っていただき、うれしいです。

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