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綾瀬和也さん

北海道の競走馬生産・育成牧場で働く綾瀬和也です。地元は栃木です。宜しくお願いします。

性別 男性
将来の夢 ダービー馬生産
座右の銘 目標がその日その日を支配する

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三角関係 〜名古屋への切符〜

14/02/18 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:2件 綾瀬和也 閲覧数:1498

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 上田武司。22歳。高校三年のときにエースとして春夏連覇を達成。高校卒業後ドラフト一位で東京オリオンズに入団。
 斉藤行則。22歳。上田武司とは小学校から高校までチームメイト。四番ショートとして活躍。武司と同様にドラフト一位で大阪サンダースに入団。
 藤井晴海。22歳。二人とは小学校から高校まで一緒。中学校から野球部マネージャーとして二人を陰から支えた。京葉大学4年生。
 武司と行則は入団4年目のシーズンが終わった。シーズンオフ恒例の地元でのOB会に三人とも出席していた。
「相変わらずえげつないボール投げるね」
行則が壁に寄りかかりながら言う。隣には武司。
「お前も相変わらずえげつないスイングしてるよ」
武司も同じように壁に寄りかかりながら言う。二人ともビールの入ったグラスを手に持っている。
「とりあえず、沢村賞おめでとう」
そう言い、行則がグラスを上げる。
「そちらもホームラン・打点の二冠王おめでとう」
武司も同じようにグラスを上げる。二人のグラスがカチンと心地よい音を当てて合わさる。二人とも静かにビールを飲む。少し張りつめた空気が二人を包む。耐えかねたように行則が口を開いた。
「賭け、成立しねーじゃん」
「お前がバカスカ打つからだよ」
武司がボソッと言い、またビールを喉に流し込む。それを見て行則も同じように飲む。二人とも若干うつむきがち。また張りつめた空気が流れる。周りもかすかにそれを感じてか、二人に近づくものはいない。ただ一人を除いては…
「暗いなぁ」
二人が顔を上げる。昔からそうだ。この二人の張りつめた空気をこじ開けられるのはこの女だけだ。晴海がワインの入ったグラスを持って二人の前に立つ。
「人に酔ったんだよ」
苦笑いを浮かべながら行則が言う。
「人づきあいがうまいユキが?またまた〜。タケならわかるけどさぁ」
「ほっとけ」
再びうつむきながら武司が言う。この呼び方は小学校から変わらない。
「スーパースターに挨拶したいのにこんな感じだと誰も近寄らないよ〜」
お酒があろうとなかろうと、晴海のテンションはいつも同じ。
「とにかく年に一回なんだから楽しくやろうよ」
そう言い、晴海が笑顔でグラスを上げる。観念したように二人もグラスを上げる。三人のグラスがまた心地よい音を上げた。人気者の晴海、他の席に呼ばれてその場を離れる。その後ろ姿を見つめる二人。行則が溜息をつく。それを横目で見る武司。視線を感じた行則が口を開く。
「今年もなしだな。ただなタケ。あんないい子がいつまでも誰のものにもならないなんておかしいだろ」
「待ってるんだろ、お前を」
武司が相変わらずうつむきながら言う。それを聞き行則が初めて武司に正対する。
「お前かもしれねーだろ!」
行則の声に若干怒気が混じった。視線が二人に集まる。
「声がデケーよ」
苦笑いを浮かべながら武司が言う。落ち着きを取り戻すように息を履く行則。
「じゃあ、ハードル上げるか」
「ハードル?」
「ああ、タイトルだったら賭けにならねーんだ」
「じゃあどうするんだ?」
武司が残り少なくなったビールを飲み干すしてから言う。それを見てから行則も同じようにビールを飲み干す。
「お前は20勝以上。俺は3割、40本、100打点以上」
行則がグラスを隣にあったテーブルに置きながら言う。すると、
「嫌だね」
と、静かに武司が言う。
「何でだよ!」
行則の声に再び怒気がこもる。
「お前との対決、今年出来なかったろ」
対照的な武司の声。黙ってうなずく行則。
「一本でもヒット打ったらお前の勝ち」
相変わらずボソッと言う武司。行則が一瞬固まる。そして思い直したように、
「俺もなめられたもんだな」
と、苦笑いを浮かべながら言う。
「そんなことねーよ。お前の怖さは俺が一番知ってる」
そう言い、今度は武司が行則に正対した。その目は自信に充ち溢れていた。しかし行則は怯まない。
「面白い。どんな結果でも受け入れろよ」
「お前もな」
二人が初めて満面の笑みを浮かべた。それを遠目で見ている晴海。
『全く…いつまであんな賭け続けるのかしら』

 高校の卒業式。晴海は二人に言われた。
「藤井晴海を賭けて俺達プロで勝負する。勝負が付いたらどっちかが晴海に告白する」

『勝手すぎるでしょ…だいたい私の気持ちはどうなっちゃうのよ』
その時の光景を思い出し苦笑いをする晴海。この四年間、二人はまるでそれがモチベーションかのように勝ちまくり打ちまくった。
『まぁ私は…どっちでもいいんだけどね。二人とも大好きだし』
面白い事に、晴海は就職先を名古屋にした。その理由は東京と大阪のちょうど中間だったからだ。
『それにしても…私って幸せ者だよね』
思わず顔がほころんだ晴海。

 また次の勝負が始まる。名古屋への切符をつかむのは武司か、行則か…







 


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このストーリーに関するコメント

14/02/19 泡沫恋歌

一条圭吾 様、拝読しました。

初めまして泡沫恋歌と申します。

ひとりの女性を賭けて、野球で勝負する二人の男性。
もはや、恋を賭けてるということでモチベーションをあげているようにさえ
思えてきます。
二人とも、直接、晴海さんにどっちが好きか訊く方が早いと思いますが?
きっとシャイなのでしょう(笑)

恋の鞘当て、面白く読ませていただきました。
ありがとうございますO┓ペコリ

14/02/19 綾瀬和也

泡沫恋歌様 

コメントありがとうございます。

二人は野球しかしてきていないので、女の子は晴海さんしか知らないのでしょう。二人とも不器用そうですしね(笑)

また何か書いた時コメントいただけたら嬉しいです

よろしくお願いします

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