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ナツさん

昼ドラ系も、ほっこり系も、大好きです。 拙い文章ですが、読んでいただければありがたき幸せ… ぜひ、ご賞味ください・Д・ノ

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もう一度、逢いたい。

14/02/17 コンテスト(テーマ):第五十一回 時空モノガタリ文学賞【 奇跡 】 コメント:0件 ナツ 閲覧数:1050

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何千、何万、何億人もの人が行き交うこの世界で出逢える人の数は決まっている。

「だからね?出逢えたのは奇跡なの。」
君が口癖のように言っていた言葉を今更のように思い出した。


「その辺にしとけよ。な?」
同僚の中西に酒を止められイラっときた。
「なんだよ?いいだろ別に。」
ふと隣を見るとホットグラスに入った赤い液体を持つ女性が彼氏らしき人と話していた。
…ホット・カンパリ…女性の好きな甘い酒だ。
「桜子さんのことだろ?いつまでも…」
頭に映し出されるのは、隠していたはずの忘れられない記憶。
「ほっとけよ!…そんなんじゃねぇ…し。」






二年前、付き合ってた彼女に急に別れを切り出された。ホット・カンパリが好きな彼女の名前は桜子と言った。理由もなく納得はいかなかったが、連絡先も変えて引っ越してしまった彼女を探す術はなかった。部屋に一人残された俺はあまりにもちっぽけに思えた。



しばらくして家に一本の電話が入った。
「もしもし、山中と申します。桜子の母です。」
「はじめまして…あの…ご用件は…?」
彼女の母親だという女性の声は震えていた。どうして今、お母さんからかかってくるのか全くわからなかった。「…桜子にあってもらえませんか?」
俺は電話を終えると上着と財布と携帯だけ持って走り出した。

「…なんで…来たの。」
走ってたどり着いた白い部屋にいた彼女の腕には幾つもの管が繋がっていて、機械の正常な音だけが鳴っていた。
「お母さんね?…知られたくなかったのになぁ…あたしね、もう長くないんだって。嫌でしょ彼女が死ぬなんて。」
「お前…」
「本当はね?もっと一緒にいたかった。でも…もういいの。最初で最後の彼氏が貴方でよかった。」
窓の方を向いて言った彼女の顔はわからなかった。
声を掛けることもできずにその場に立ち尽くしていると彼女は言った。
「何億人っている人の中から出逢える人の数は少ない…だから出逢えたこと全てが奇跡なんだよ。」
「お前は…俺と出会って良かったと思う…?」



俺の声は多分震えていた。手汗がびっくりするぐらい出ていて、なぜか緊張していた。
「もちろんだよ!」
くるっと振り向き、満面の笑みで彼女は笑った。病院のパジャマの袖で涙を拭き、
「もう、さいっこうの奇跡だよ…」
俺は彼女を自分の腕の中に埋めた。…痛々しいほど痩せた背中に手を回すと病状の悪さが痛いほど伝わった。そしてその小ささに驚いた。力を強めれば壊れてしまいそうだった。
言いたいことは喉元まで上がってきていたのに何も言えずただただ抱きしめた。声に出せない想いがこの腕から彼女に伝わるように。



その一週間後、彼女の母親からまた電話が入った。そして彼女の死を告げた。母親もまたあの日の彼女のように壊れそうだった。
「…ありがとう…本当に出逢えてよかった。」
式では泣かなかった。口ではああ言ったものの現実を認めたくなくて焼香を終えると逃げるように式場を出た。





「俺…さ。いつかまた会える気がすんだ。だって逢える人って決まってるって言うじゃん。あいつと俺は逢うべきなんだよ…絶対。」
「…そうだな。逢えるよきっと。すぐにじゃなくてもさ、いつか絶対逢える。俺が保証すっから。」
「なんでお前だよ!」


グラスの氷がカラン音を立てると同時に開いた入り口のドアから懐かしい声が聞こえた。
「ホット・カンパリ下さい。」


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