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タックさん

がんばる。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 明日の自分に期待は持たない。

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これは青春なんかじゃない

14/02/17 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:4件 タック 閲覧数:1300

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「おまえ、水瀬のこと、どう思ってんの?」

 投げた石が斜面を転がり、草むらの向こうに消えていった。背中に当たる夕日が、おれたち二人の影を濃くしていた。土手に座る二人。古臭い青春ドラマみたいだと思ったが、もう遅い。言葉をうけたヤツ――小林はしばし沈黙し、顔を赤くしている。夕日のせいじゃないだろう。なぜなら、こっちを向いた小林の顔は、日の当たらない部分も真っ赤だったから。
「……どう思うって、なにが」
「だから、素直にあいつをどう思うって聞いてんだよ」
「どう思うもなにも、友達だよ。それ以外に言いようがないだろ」
「……ふーん、ともだち、ねえ」
「なんだよ、なにが言いたいんだ。友達だよ、水瀬は。それ以上でもそれ以下でもないよ。やましいことは何もないよ」
 へどもど、もごもご小林。大きな身振り手振りがかえって怪しさを際立たせるってことに、いつになったらこいつは気がつくのだろうか。はあ、と一つため息を吐く。小林がいぶかしげな視線を向けてくる。風が髪を揺らし、染まった耳をさらけ出していた。
「じゃあ、言わせてもらおう。おまえ、ただの友達だって言ったよな。それ以外のなんでもないんだよな」
「ああ、そうだけど」
「じゃあ聞くけど、ただの友達としか思ってないやつと、おまえは休日に腕組んで歩くのか?」
 あからさまな動揺が、小林の表面を走り抜けた。
「お、おまえ、見たのか? な、なんで」
「たまたま用事があってな。それで通りを歩いてたら、いましたねえ、腕組まれてにやにやしてるおまえが! あれが、何とも思ってない表情か? おれには、そうは見えなかったけどなあ?」
「……ぐ、ぐぐ」
「あれ、図星? 嬉しかったのかな? もしかしてその後、お泊まりとかしちゃった?」
「な、なに言ってんだよ! するわけないだろ、そんなこと!」
「あららら? お泊まりって、別に変なコトじゃないですよ? なにを想像してるのかな」
「……ぐ、ぐぐぐ」
 うなだれる小林。後頭部が情けなく輝いていた。勝利の味を噛みしめ、落ちた肩を叩いてやる。微弱に震えるそれは、とてもあわれだった。せめても、と思いやる言葉をかけようとした際、小林が、牙を向いた。美酒に溺れるおれは、その兆しに気がつかなかった。
「……なあ、飯島」
「なんだ、小林。元気出せよ。嬉しかったものはしょうがないじゃんか」
「……そのことだけどさ、ひとつ、聞いていいかい? 水瀬の前でにやついてるのは、おれだけかな? 飯島よ、おまえこの間、水瀬に弁当作ってもらってたよな。それをだらしない顔で食べてたのは、どこのどいつだ?」
 ぐ、と腹にカウンター。リアルに胃がきしみ、背筋に氷を当てられたような寒気に襲われた。こ、こいつ、だれもいない屋上で食べたのに、なんで知ってるんだ。
「飯島くん、照れながら食べてたねえ? あーんもされてたねえ? あれあれ、普通の友達はそんなことするのかな。ましてや水瀬は……。けけけ」
「……ん、んん」
 反論、しようと思ったができなかった。なんせ決定的な現場を見られている。まさに決定的だ。言い訳ができない。小林は、見下すようにおれを見つめている。その顔はいつも以上に憎たらしい。
 だが、とおれは目を合わせた。小林、おまえの言葉はそっくりおまえに跳ね返るんじゃないか? お前も、にやにやの同士だろう。そう伝えると、小林は急速に萎縮し、背中はネコでもここまではいかんぞ、というくらいに丸くなった。しかし、いい気味だ、と思うことはできなかった。同じ境遇のヤツを、笑う気にはなれなかったのだ。

「なんだ、ここにいたの」
 背後の気配に、おれと小林は同時に振り返る。日光が目を焼き、シルエットが映るだけだったが、声で十分だ。そいつは斜面を駆け降り、おれたちの間に入り込んできた。
「先に帰るなんてひどいよ。遅くなるけど待っててね、って言ったのに」
 透明感のある瞳が交互に向けられ、なぜかぞくりとした。さっきの話を引きずっているんだろう。そう思い小林を見ると、その顔は再び赤く染まっていた。おれも同じかもしれない。だから、顔を背ける。
「さ、帰ろう? 暗くなるのは早いよー。青春ごっこは、また今度」
 二の腕に手が回される。その感触に心臓が高鳴った。違う、違う。必死に言い訳しながら、引っ張られるように立ち上がる。細い腕。端整な顔立ち。二人を従える笑顔は華やかで、それはもう風景と抜群に合っている。おれたちを連れ、元気いっぱいに土手を駆け上がる水瀬。その密着に、おれの心は不自由に弾んだ。
 長いまつげ。整った鼻筋。小ぶりな唇。――その下には、おれたちと同じ男子学生服。
 水瀬カズヤは、女子顔負けの微笑をニコニコと振りまいている。それを直視できないまま、おれたちは黙って歩を進めた。風がはこぶ香りに、胸をドキドキさせながら。


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このストーリーに関するコメント

14/02/18 泡沫恋歌

タック様、拝読しました。

なるほど、これは腐女子歓喜の展開ですね。
最近はこういうのは普通みたいなので、これで青春を楽しんでくださいと、二人のキャラに言いたい。

14/02/21 朔良

タックさん、こんばんは。
拝読いたしました。

もしかして…と思いながら読んでいたら、やっぱりこれはw 泡沫恋歌さんもおっしゃっていますが、そっち系が大好きな女子垂涎の…。
いやいや、青春を謳歌していてとてもいいと思います。

14/02/21 タック

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

これも、一つの青春かもしれません。本人たちが何も気にしないなら、きっと、楽しい学生生活を送ることができるでしょう。それはそれで良いのかもしれませんね。また、よろしければご一読ください。ありがとうございました。

14/02/21 タック

朔良さん、コメントありがとうございます。

少し腐った女子向け? の話です。三人が楽しいのならそれでいいじゃないか! と思いますが、本人たちはどうなのでしょう。やっぱり、気にしてしまうものなのですかね。また、よろしければご一読ください。ありがとうございました。

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