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黒川かすみさん

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鈍角三角形

14/02/15 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:2件 黒川かすみ 閲覧数:1508

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 純子と透、そして私は、小学生のころから中学3年になった今までずっと一緒にいる。家もお互い近くで、登下校は必ず一緒だった。さすがに高校に入るとそれも難しくなるだろうけど、それでも幼なじみとして仲の良いままでいられると思う。ふたりは誰より私をわかってくれるし、私も彼らを誰よりわかっている。なにより一緒にいて疲れない。それは三人とも同じ気持ちだと、そう思っていた。
「俺……凪のこと、ずっと好きだった」
 透からその言葉を聞いた時の空は、眩しいくらいに赤かった。放課後の教室で、退校時間を知らせるチャイムが鳴っていた。
 俺と付き合ってくれる?
 予想していた言葉だった。というより、感づいていた想いだった。透は、1年ほど前から私のことが好きだ。同時に、前に純子と話した内容を思い出した。

『あたし……透が好きなの』
 これも、知っていた。彼女を見ていて気づかない人間など、当人たちくらいだろう。
『うん。知ってた』
 私がそう言うと、彼女の予想していた言葉だったのだろう。大して驚いた様子もなく、やっぱり? とおどけたように舌を出して首を傾げた。この仕草があざといとは思うものの、同じ女子として嫉妬心がわかないのが不思議だ。純子だからこそ許される仕草だと思う。
『いつから知ってた?』
『……さあ。だいぶ前だと思うけど……純子ってわかりやすいし』
『あー、マジで? じゃあ向こうにもバレてるかな?』
『どうかな。……透も鈍感だから』
 ふたりとも他人の気持ちには特に鈍感である。透は3年生になって以前よりモテるようになり、ようやく自分が女子受けすることが分かってきたというほどである。さらに言えば、彼もかなりわかりやすい。見る者が少し見ればすぐにわかる程度には、わかりやすい。透は、私のことが好きだ。純子が透を好きになったころからだろうか。私は、透のことは特になんとも思っていない。強いて言えば、世話の焼ける奴としか思えなかった。
 ふと、ひとつの考えが頭をよぎった。
 ……もしも、透が私に想いを告げてきたら。私はそれを断るだろう。当然だ。私は透にそういった感情はもっていないのだから。
 でも、もしも私が透の告白を断ったなら、透はもしかしたら純子のところへ行くのだろうか。純子は、それを受け入れてしまうだろうか。――いや、きっとそうなるに違いない。そしてふたりは恋人同士になる。私は、ひとりになる。純子は透のものになる。
『……じゃあ、凪』
だから、
『協力してくれるよね?』
純子がそうたずねたとき、首を縦には振れなかった。

代わりに
「いいよ。付き合おう」
透の告白に、首を縦に振っていた。
 それから、純子と私は公立の進学校へ、透は私立の男子校へ進学した。卒業式の日、純子は泣いていた。私と透は、笑っていた。
 透に純子はわたさない。透だけじゃない。他の誰にだって、彼女を渡してたまるか。
 純子は、私だけのものだ。



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このストーリーに関するコメント

14/02/17 朔良

黒瀬 水晶さん、こんにちは。
拝読いたしました。

凪さんの気持ちがそちらにあったとは…。
意外な展開でした。
お互いがお互いの気持ちには気づかない。鈍感ゆえに形成され複雑化する三角関係…おもしろかったです。

14/02/23 gokui

 読ませていただきました。
 衝撃の結末。まったく読めませんでした。凪の感情をうまいこと隠して最後まで持っていきましたね。

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