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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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鳶に油揚げ

14/02/07 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2699

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「お父さん、紹介するよ」
 慶太がリビングでくつろいでいると、背後から息子の拓夢が声を掛けてきた。えっと振り返ると、若い女性が息子に寄り添い立っている。
「花瀬玲奈と申します」
 ペコリと頭を下げ、長い髪をかき上げながら面(おもて)を上げた。端正な顔立ちに緊張が窺える。慶太はこの様子から察し、息子がやっと生涯の伴侶を見付けたのかと。
「拓夢ったら、お嬢さまを突然お連れするものだから……」
 妻の洋子が語尾を途切れさせたまま紅茶を運んできた。それから談笑し、一区切りついた時に、「ご両親は何をされているの?」と訊く。玲奈の表情が微妙に曇る。
「父は祐也、母は亜矢と申します。小さな会社を経営していましたが、三年前に二人とも他界しました」
 当然親として知っておくべきこと。だが、これを耳にした慶太も洋子も思わずのけ反った。それに拓夢が「えっ、玲奈のご両親のこと、知ってるの?」と顔を突き出す。
「ああ、二人とも会社の同期でね。亜矢さんは旧家のお嬢さん、祐也君は中途退社して、そこへ養子に入ったんだよ」
 慶太は一応答えたが、既に亡くなっていたとは仰天で、次の言葉が見付からない。そんな狼狽を気遣ってか、玲奈は「父と母が私をここへ連れてきてくれたのですね」と笑みを浮かべた。それから小指をピンと立て、カップを摘まみ上げた。その仕草を目にした洋子、そう言えば亜矢も小指を立て、いつもディンブラを飲んでいたわ、と玲奈に亜矢を重ねた。

 30年前、確かに四人一緒だった。そして奇妙なことに、二つの三角関係が同時進行していた。その一つは亜矢に対し男二人の組み合わせ、もう一つは祐也に女二人。要は祐也と慶太は亜矢にメロメロ、そして亜矢と洋子は祐也に首ったけだった。
 そんなある日、慶太はチャンスを得て、亜矢をディナーに誘った。待ち合わせ時間通りに亜矢が時計台の下に現れた。慶太が駆け寄ろうとすると、なんと既に祐也が亜矢の前に立ってるではないか。
 あっと言う間だった、亜矢は祐也に肩を抱かれ、どこかへと消えて行ってしまった。慶太はただ呆然と見送るしかなかった。
 そんな時に背中を突っつく者がいる。慶太が振り返ると、「鳶に油揚げさらわれたのね。私が代役してあげる。だからご馳走してちょうだい」と、洋子が涙を浮かべてる。これで慶太は、二つの三角関係は同時に終わったと確信した。
「ヨシ、恋に破れた者同士、美味しいもの食べて、元気だそう!」
 慶太は今にも涙を零しそうな洋子の手を取って、ちょっと奮発し、高級焼き肉店へと誘った。これが切っ掛けとなり、二人は急接近。意外にも一緒にいると気が安らぐ。相性が合うということなのだろう、恋の敗北者同士でも永遠の愛を誓う急展開となったのだ。

 そして今日、恋の敗北者の息子・拓夢が恋の勝利者の愛娘・玲奈をフィアンセとして紹介した。しかし、勝者たちは既に他界している。30年前の二つの三角関係、この喜ばしい『その後』を、彼らは知ることができない。なにかそこに運命の残酷さを感じているのは慶太だけではなかった、洋子もだ。
 それでも玲奈を囲み和やかな一時だった。それも終わり、がらんとしたリビングで、夫婦は虚ろな状態。それでも慶太がボソボソと呟く。
「不思議な縁だね。きっと祐也と亜矢が娘さんを拓夢に巡り合わせ、俺たちに引き合わせたのだよ。だから結婚させてやらないとね」
 だが、洋子は押し黙ってる。
「おい、どうしたんだよ。結婚に反対なのか?」
 慶太がせっつくと、やっと洋子が口を開く。
「もちろん賛成よ。でも、亜矢って、天国行っても、ホント好きなんだよね」
 慶太は何が好きなのかわからない。ポカーンとしていると、あなたは頭の巡りが悪い人ね、と言わんばかりの表情で、一言。
「三角関係よ」
 慶太はこれで余計に理解できなくなった。「三角関係って、30年前に決着ついてるんだぜ。それがどうしたんだよ」と、洋子の反応を窺う。すると洋子は今まで見せたことのない冷淡な笑みを浮かべて……「息子に絡む嫁、姑──その三角関係よ」と。
 あとはまるで堰を切ったように、「亜矢は玲奈さんを拓夢に引き合わせてね、過去の三角関係から構成を変えた、そう、それは息子と嫁と姑、その新たな三角関係を作ろうとしているのよ。さあ、どうなるかなってね、あの世から高みの見物するつもりなのだわ」と止まらない。
 慶太はこんな話しにウンザリだ。「玲奈さんとは仲良くしてやれよ」と不用意にも妻に釘を刺してしまった。すると洋子は涙を零し、口惜しそうに。
「だって拓夢はね、私の作品よ。玲奈さんって、母親譲りで、さっさとさらって行きそうだもの」
 慶太は妻の気持ちがわかる。そして、それとはなしに夫の思いを込めた言葉を掛けるのだった。
「鳶に油揚げさらわれたお陰で、幸せになれた……ってこともあるのだから」


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このストーリーに関するコメント

14/02/07 朔良

鮎風 遊さん、こんばんは。
拝読いたしました。

なにやらあっちにもこっちにも三角関係がいっぱい。その三角関係が子どもの代にまで発生するのが面白かったです。
母親と嫁との三角関係は、間に挟まれる拓夢さんが大変な思いをしそうですが、このご主人ならきっと大丈夫ですね。
鳶に油揚げさらわれたお陰で、幸せになれた、って、洋子さんにとってはなによりの言葉では? 今現在が幸せなのが一番です!
さすが鮎風 遊さん、諺や言葉の使い方が巧みで勉強になりました。

14/02/07 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

4人のなかで進行していた三角関係のくだりで、頭のなかがちょっと
混乱しましたが、要は振られたもの同士、きっと洋子は今でも亜矢の事を
よくは思っていないのでしょう。
そしてもうひとつ発生してしまいそうな三角関係には
早々に手を引いたそうが良さそうですね。

14/02/08 鮎風 遊

朔良さん

コメントありがとうございます。

案外、男と女にとって、大事なのは相性かと思いまして。
世の中、もうあちこちで三角関係だらけです。
それを乗り越えてきた二人、きっと幸せでしょう。

14/02/08 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

はい、早い話が、振られた者同士が出来ちゃったのです。
だけど洋子はいつまでも引きずって、女の戦いは今もってところかな。

そんな妻を、まあまあまあと宥めるのです。
どこかの夫婦であるような…。
そして新たな三角関係が。これはちと難問かなと。

14/02/08 泡沫恋歌

鮎風 遊さん、拝読しました。

恋愛は好き同士ラブラブでも、結婚は相性が良くないと続きません。
恋の敗北者同士でも一緒に長生きできて幸せですよ。

息子・嫁・姑の三角関係はいつの時代にもあります。
そこに孫ができたら四角関係ですから(笑)

14/02/09 草愛やし美

鮎風遊様、拝読しました。

うーん、複雑ですね、男女間、あるいは家族間。勝者である亜矢さんが、あの世からでもずっと顛末を見続けると考える洋子さんの気持ち、わかりますが、そう思ってしまう心はやはり敗者のものかと思います。
できれば、こういうことを全てさらりと忘れ去ればよかったのにと切なくなりました。でも、勝者の娘が縁を繋いでくるとは、因縁というか、なんというか、お気の毒でとしか言いようのない……。最後の慶太さんのひと言が救い、いい旦那さんですよ、洋子さん、目の前の幸せを大事にしてくださいと私は言いたくなりました。

14/02/15 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

この世で一番難しい三角関係は、息子を挟んだ嫁と姑。
ここには勝者はいませんね。

そんなことで、今回そこへ落としてみました。

14/02/15 鮎風 遊

草藍さん

恋の敗者は決してゲームの勝者のことを忘れないものかな。
今、幸せになっていたとしても、
やっぱり引きずって生きて行くものかなと思いました。

だからと言って、
現在の連れ合いが嫌いかというと、そうではない。

だつたら忘れたら、ということですが、それがね。
複雑なんですよ。

そんな心模様で味付けしてみました。

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