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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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意外な守護者

14/02/01 コンテスト(テーマ):第二回OC【 馬 】  コメント:2件 石蕗亮 閲覧数:1613

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 私は魔法使いの弟子である。
今日も今日とで師匠の経営する喫茶店で師匠の友人の悪魔にからかわれながら修行の毎日である。
その日はやけに講義にのめり込んでしまい、気が付くと外は闇の帳を下ろしていた。
「急いで帰らないと!」
慌てる私を制止して師匠と悪魔ザランブールは店の窓から外を眺めた。
私も一緒に外の景色に目を向けると闇の中に白い靄が漂っていた。
「煙霧だな。」
「これは出るだろうね。」
ザランブールの言葉に師匠が応えた。
「家まで送ろう。ザランブール留守を頼むよ。」
師匠がそう言うとザランブールは了承し嬉しそうに自分の珈琲を淹れ始めた。
その匂いは彼の好きなコピ・ルアックだった。

 師匠は黒い和装のような外套を纏うと怪物の顔のような模様の杖を携えて店の外へと降り立った。
全身黒で統一された服装に師匠の白髪と伸ばした白い顎鬚が揺れると
それはまるで闇にたゆたう煙霧のようで、そのまま外の景色に溶けてしまうのではないかと思ってしまった。
「なんで今日は送ってくれるんですか?私ももう高校生ですから夜道くらい一人でも大丈夫だとおもうんですけど。」
「ん〜、そうだね。普段ならそれで構わないんだけどね。今日は日が悪い。」
「日が悪い、ですか。今日って特別な日でしたっけ?」
「君は何かと見えてしまう性質(たち)だからねぇ。
人外の存在が見えているということは、その存在との間にあるべき壁が薄れ二人の存在する二つの世界が繋がっていることを表しているんだ。」
「それってつまり、こちらが見えているってことはあちらも見えているけど、こちらが見えていないときはあちらからも見えていない、ってことですか。」
「そう、その通り。だから【あちら側の奴らは見える相手を選んで見つけてこちらの世界へ出てこようとする】んだよ。」
「うわ、マジですか!?怖いなぁ。」
「その前兆としてね、こんな風に世界を曖昧にしてしまう濃霧や煙霧が出るんだよね。」
「えっ、それって、この霧靄のこと…。」
私が言い終わる刹那「ひひひひぃーん」と馬の嘶きが聞こえた。
その声は私たちの正面から聞こえた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
荒い息も聞こえてきた。
師匠は立ち止まり正面の闇とそこにたゆたう煙霧を凝視している。
私も立ち止まり(というか師匠よりも前へは怖くて行けなかった)、師匠の見つめる先を凝視した。
白い靄が押しのけられるように揺れ流れてその奥から馬の顔が現れた。
しかし続いて現れた体躯は馬のものではなかった。
全身毛深く覆われているが筋骨隆々のマッチョな人の体であった。
しかもよく見ると馬の額には角があった。
目は吊り上り赤く光っていた。
息は荒くこちらを睨みつけている。
私は何事かと馬頭人躯の存在から目を離せないでいると
さらにその後ろからもう1体現れた。
今度は同じような体だが首から上が牛だった。
闘牛のような牛の頭だった。
同じように吊り上った赤く光る目でこちらを睨んでいた。
「し、師匠!あ、あれはいったい!?」
震える声を絞り出して私は師匠に現状の答えを求めた。
「先に現れたのは馬頭鬼(めずき)、次のは牛頭鬼(ごずき)。地獄の獄卒だよ。」
「な、なんでそんなのがここに居るんですか?っていうか鬼なんですか?」
「そう。彼らは普段は地獄の入り口である地獄門の門番で死者が現世に舞い戻らないように見張っているんだよ。」
「いやいやいや、師匠!?ここ現世ですよ!地獄じゃないですよね?何でこんな所にいるんですか?」
私が大きな声で師匠に突っ込むとそれに合わせたかのように馬頭鬼と牛頭鬼はこちらに突進してきた。
 空気を震わせ周囲の煙霧を押しのけ2頭は瞬時に私たちの目前まで来ると
どんっと地響きを立てて地面を蹴って私たちの頭上を飛び越えた。
背後に どすん と着地の振動が響くと
 ぎゃぁぁぁ!
と皺枯れた悲鳴が上がった。
振り返るとそこには先月獄中で自殺した連続通り魔殺人犯の姿があった。
「実はね、店の外から君を見つめる死霊の彼を見つけてね。きっと君を襲いに出てくると思ったんだよ。」
師匠はそう言うと杖を振って霧を払うような仕草をした。
すると霧の先に大きな赤い土壁の門が現れ、重そうな音を立てて開いた。
馬頭鬼と牛頭鬼は連続殺人犯の死霊の両腕をそれぞれが掴むと引きずって門の中へと入っていった。
2頭の鬼は師匠へ頭を下げると門を閉じた。
再び濃い煙霧が辺りを覆うともう門は見えなくなってしまった。
「こんな濃い霧の夜は異界と通じやすくなってしまうから注意しなきゃいけない。だから私はいつもこんな夜はこれを持ち歩く。」
師匠はそう言うと杖を見せてくれた。
杖の頭の怪物模様は馬頭鬼と牛頭鬼の顔だった。
「彼らは私の前鬼と後鬼という、護法の鬼なんだよ。」

師匠の人外っぷりを目の当たりにした夜だった。


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このストーリーに関するコメント

14/02/04 そらの珊瑚

石蕗亮さん、拝読しました。投稿ありがとうございます。

地獄の門番がまさか馬と牛とは! 人間と馬と鬼のキメラのようですね。
霧というものはまさに異界とつながってしまいそうな怖さがありますので
このお話の舞台としてぴったりだと思いました。
ちょい怖ファンタジー、面白かったです。

14/02/06 石蕗亮

そらの珊瑚さん
お久しぶりです。
オーナーお疲れさまです。
今回も2000文字に収めきれずいろいろ省いてしまいました。
馬頭、牛頭の説明も、前鬼、後鬼や護鬼の説明も無いわかりにくい作品になってしまいました。
読んでいただきありがとうございました。

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