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妻と秘書と運転手

14/02/01 コンテスト(テーマ):第五十回 【 三角関係 】 ターザン山本賞 コメント:2件 五助 閲覧数:2085

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 夫

 やはり、妻は私の浮気を疑っているようだ。
 他社の創立記念パーティーに呼ばれ妻と共に出席した。壇上に上がりそれらしい挨拶をして、妻と一緒にパーティー食を少しつまんだ。私の秘書もすぐ後ろに控えており顔と名前が一致しない人物について適切なアドバイスを耳元でささやいてくれる。その彼女と私の仲を妻は疑っているようだ。
 一時間ほどたったところで、私の専属運転手がやってきた。
「社長、そろそろお時間です」
「おお、そうか、もうそんな時間か忘れてたよ。実はね」
 妻が怪訝そうな顔をしたので説明をと口を開いたところ、妻は不意に横を向いて。
「何か予定があるのかしら」秘書に向かって聞いた。
「はい奥様、この後、社内広報とのCM撮影の打ち合わせがございます」秘書はよどみなく答えた。
「そうなんだ。タクシーを呼んでおくから、それで帰りなさい。よし行こうか」
 危機を脱した。

 妻
 夫は女と別れたがる頃になると女のことを私に、匂わせるのだ。妻にばれたから別れよう。そうやって私を利用しているのだ。
 秘書の女は唇を夫の耳に息がかかるような位置で話をする。そんな聞こえないわけないでしょうに、現在の愛人はおそらくこの女だ。唇が少し厚めの鼻筋の通った女、若い頃の私に少し似ている。つまり夫の好みなのだ。別に、今更夫の浮気に対してどうのこうのという感情はない。ただ、私に代わり若い女が社長夫人ですなどと、のたまうことが我慢ならないのだ。この男の何を知っているというのだ。誰が支え、誰が一番我慢してきたと思っている。決定的な証拠を掴み消えてもらう。夫の耳元でささやく女を私は横目で観察した。
「社長、そろそろお時間です」
 二十代後半ぐらいの精悍な顔つきをした男が入ってきた。確か夫の運転手だったはず、そういえば最近よく見かける。
 夫は、おおそうかと、わざとらしく腕時計を見たりしながら、私に何か言おうとしたので秘書になんの予定があるのかと聞いた。夫の表情になんの変化もない。その辺りはさすがだ。
「はい奥様、この後は、社内広報とのCM撮影の打ち合わせがございます」と秘書は答えた。
 こちらも、たいしたものね。

 秘書
 社長に話しかけると、うん? という感じで私の方に耳を傾けてくる。私の声が小さいとか滑舌が悪いと言うことはない。社長の耳が悪いとかそんなことも絶対にない。パーティー会場だから雑音が多いからだとかもない。絶対意図的にやっているのだ。その所為で、最近では社長の耳元でしゃべるようになってしまっている。ただ、それ以上何かしてくることはないのでセクハラだとは言い難い。仕事は楽しい。秘書という仕事柄、経済界の大物と出会う機会がある。これはとてつもなく貴重な経験だ。だから仕事を辞めたくはない。困ったことに、奥様は私のことを社長の愛人だと思っているようだ。もちろん違うのだが、最近、ちょっと気になることがある。社長の予定に所々穴が空いているのだ。理由も言わずスケジュールを空けるよう指示されたりもする。さっきもおかしなことがあった。社長の運転手がパーティー会場に現れた。細身の肩幅の広いスポーツマンタイプのちょっといい男だ。その彼が、そろそろお時間ですと言った。一体何の時間だろうと、スケジュール帳をチェックしようとしたら、不意に奥様がこちらを見つめ社長の予定を聞いてきた。私は頭を引っかき回して、何とか答えた。
 これは、愛人との密会の時間と言うことなのだろうか。そのことを運転手が知らせに来た。変だな。愛人に会う予定を奥様がいる場でいわないだろう。あの運転手と社長どういう関係なのだ。
 
 運転手
 車の後部座席で社長は薬を飲んでいる。社長は病気である。治らない病気というわけではない、薬を飲めば八割方治る病気らしい。社長は、そのことをご家族にも会社の人間にも言っていない。治るんだったら、別に言う必要はないだろうと。治るんだったら言えばいいのにと思うのだが、後継者問題と社内権力闘争があるらしい。
 別に信用されているわけではない。病院に行くのに運転手は必要なので病気のことを隠すのは難しいと考えたのだろう。現に「君にしか、このことを言っていないからね」と釘を刺された。
 社長には何度か奥様にだけは言ってくださいと、懇願したが、妻に心配をかけたくない。妻には私が浮気をしていると思わせているから、大丈夫だよ。と、意味不明の返答がかえってきた。
 問題は、社長が薬を飲むのをよく忘れることだ。その度に僕が薬を飲むよう社長に促さなければならない。社長の命がかかっているのだ、先ほどのような場違いな場所でも出ていからざるを得ない。
 最近、奥様の僕を見る目が若干険しいような気がする。この頃ちょくちょく出没する若い運転手の男、まさかと思うが、あらぬ疑いをかけられぬか、不安だ。


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このストーリーに関するコメント

14/02/02 クナリ

てっきり、秘書と夫があれなのかと思ってしまいました。
真相に見当がつけられたつもりが、すっかり作者様の思惑通りに翻弄されてしまいました。
面白かったです。

14/02/20 gokui

 読ませていただきました。
 面白い構成ですね。それが生かされていると思います。最後に真相を運転手が語るというのも面白いです。

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