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リアルコバさん

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永遠の絶望

14/01/29 コンテスト(テーマ):第四十九回 時空モノガタリ文学賞【 絶望 】 コメント:1件 リアルコバ 閲覧数:1365

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《ちんちろり〜ん》『はい一の位は三です』
「よし32561963番ね、理由は失念っと  オッケーこれで終わりだよな」
 ひどく軽いノリでサイコロを振り、更にいい加減な声で物事を決めていく此処は、天界よろずの神の社務所である。まだ神社の与えられぬ若手の神たちが偶然の産物と云う幸不幸を割り振る場所である。
 ランダムに振られた番号は下界の人間一人一人に付けられた番号で、今日は年末ジャンボ宝くじの高額当選者の中から《換金を忘れる》と云う本人も気付かぬ軽い不幸に見舞われる者を決めていた。
「さて明日からが大変だぞ、これ資料ね、今年は一等七億円だったから去年より一億分増しね」
 平等が建前の神は当選者の数だけ不幸をどこかに与えなければならない。七億円分の絶望を数名に考えなければならないのである。

 幸せの割り振り方法は近年至極簡単になっていた。随分昔に気まぐれで与えた通貨という玩具を勝手に信仰し発展させた下界の俗人達は、既に金さえ与えれば大抵幸せになるのである。昔は本人の性格や環境を調査し、如何にしたら幸福感を得られるかけんけんがくがくと議論したものだった。
 ところが不幸となるとそうも行かない。これこそ十人十色千差万別老若男女その時々の気分で不幸感が違うのである。
「めんどくせぇなぁ、あれ絶望の人数は?今年宝くじの連番一等何人居た?」
《絶望》希望を絶たれることこれはそんじょそこらの不幸とは違い、もがき苦しまなければならない。そのシナリオを書いて閻魔大王の前でプレゼンし承認を取らなければならないのが《ジャンボ宝くじ絶望プロジェクト》の決まりである。

「40021362番はと、プルシコフジョセフ沢井・・・おい外人か?」
「いや日本国籍だろ沢井だもん」
「じゃいいか えぇと・・・あちゃ不幸だなこいつ、ボスニア難民で日本に帰化したが結婚に失敗、今無職で生活保護だよ」
「仕方ないじゃん当たっちゃったんだからサイコロの目は神もわからん」
「どうすんだよ、もう絶望的な奴にどうやってまた絶望を・・・」
 会議は紛糾した。
「希望を与えてから取り上げるってのがよくねぇ」
「おっそれ採用」
「じゃお前らこいつ担当ね、閻魔様は浪花節が好きだから泣かせる絶望考えてね」
「了解」
 かくしてセレブな未亡人と偶然な出会いをして燃え上がるも、実は結婚詐欺で多額の借金を背負う羽目になると云う安直な絶望は、意外な程閻魔大王にウケて直ぐに施行された。

『おぉ主よ・・・』
 沢井をモニタリングしていた係りが慌ててやってきた。
「えっ宗旨違い・・・」
 これは大変な事件である。与えられた不幸の恨みの矛先が違う神様に届いてしまう。担当ふたりは青ざめて本人資料を再確認すると、結婚式は神前で執り行われている。
「離婚して戻ったのか・・・」
 その時《ロシア正教会神事部》から怒りの連絡が来た。
 通訳が言うには《何してくれんねん、うちですでに絶望させた奴に信仰されぬ神がまた絶望を与えるっちゅうのはどう云うっこっちゃ、 この落とし前どうつけんねん》
 社務所は大騒ぎとなった。
「だから俺外人か?って聞いたじゃん」
「だって・・・でもほら結婚の誓はうちに奉ててんだぜ、これは神道でしょ」
「そうだよ帰化して日本人だしこいつは神道でしょ、ねぇ皆んな」

 神の世界は建前上平等である。従って下界の民主主義同様に合議制であり多数決が採用される。
「過去にこの手のトラブルで戦争になったよな」
「それはまずい。今下界は核だらけだぞ」
「そうだよ確か3億3前年前は猿人と原人の宗旨振り分けの件で世界中の神がもめて地球は氷河期になったぞ」
「あぁここは穏便に済ませるべきだな」
「よし、うちから先様に100名ほど宗旨変えさよう、それで話をつけよう」

 神社持ちになれるのはごく一部、それでなくとも永遠の命の神々は新しい神社や祠が立たない限り出世はなく、新興宗教の神へとトラバーユするものすら出る昨今である。内心競争相手が減るということは歓迎すべき事柄である。
「で、お前らには地獄に落ちて閻魔番になってもらいましょ」
「えぇ・・・」
 感嘆の声は無視され多くの神に睨まれた二人の神の姿は見る見る魑魅魍魎となりやがて消えた。

 人間の命には限りがある。その命の尽きるまでは絶望を与えられても希望を持つことが出来る。運良くサイコロで選ばれれば絶望の淵から直ぐに幸福の絶頂まで駆け上れる。しかし彼らには永遠であった。
「おぉよく来たな、こないだの面白かったぞ、お前らには釜煮番を命ずる」
 彼らは神としての未来を奪われた。そして憎しみと欲望だけに苦しむ人間の屍を煮るだけの邪鬼となった。
 
 神の命は永遠である。そして希望を絶たれた神の絶望も永遠なのであった。


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このストーリーに関するコメント

14/02/08 gokui

 読ませていただきました。
 神の世界でも人間と同じように宗派間で争いがあるんですねえ。人間界に戦争がなくならないわけです。
 なんだかダメ社員が左遷される話みたいで面白かったです。

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