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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
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銀河の果てで昭和ノスタルジー

14/01/21 コンテスト(テーマ):第四十八回 時空モノガタリ文学賞【 昭和 】 コメント:9件 光石七 閲覧数:1330

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 マコが僕の方を向いて目を瞑った。部屋には二人きり、ソファに並んで座ってる。これは……だよな? バラのような唇が僕を誘う。僕は両手をマコの肩に置いた。少しずつ顔を近づける――。

 ♪毎日毎日 僕らは鉄板の

……ムードを壊すなよ。マコはじっとしている。よし、無視して続行だ。

 ♪上で焼かれて 嫌になっちゃうよ
  ある朝 僕は 店のおじさんと

……ジジイ、やめろ。

 ♪けんかして 海に…… バターン!

「じいちゃん、大丈夫?」
慌てて廊下に出た。マコも心配してついてきた。
「おお、ちょっとつまずいただけじゃ」
じいちゃんがゆっくり起き上がる。怪我はなさそうだ。
「もう、年なんだし気を付けてよ」
「ちと歌に熱が入り過ぎたかの」
「あの変な歌に?」
「変な歌とは何じゃ。昭和で一番売れたレコードじゃぞ。モトには奥深さがわからんか」
「滅んだ星の古い歌なんて興味ない」
じいちゃんはかつて地球にあった日本という国の、昭和という時代が大好きだ。僕には理解できない。
「あの、『およげ! タイヤキくん』ですよね?」
マコが口を挟んだ。
「おや、知っとるのか?」
「伯父の家で聴いたことがあります」
「ほお、ワシみたいな昭和コレクターかの?」
「いいえ。――おじいさん、昭和コレクターなんですか?」
「そうじゃ。特に高度経済成長期は面白いのう」
「どんな物を集めてるんですか?」
マコの言葉にじいちゃんの目が輝いた。

「これはインベーダーゲームといっての。ゲームセンターの他に、喫茶店やスナックにも置かれてたんじゃ」
……家デートがじいちゃんのコレクション自慢に。何気にマコも楽しそうなのが癪に障る。
「こっちは『ひょっこりひょうたん島』のソフビ人形じゃ。全キャラクター揃ってないのが残念じゃが」
……ただの小汚い人形だろ。
「あ、ドン・ガバチョ!」
マコが歓声を上げた。
「よく知っとるの」
「地球史の先生が日本びいきで。……あの、あれもコレクションですか?」
「そう、全共闘で実際に使われたゲバ棒とヘルメットじゃ」
「機動隊と衝突した時の?」
「おお、詳しいの」
「先生が写真を見せてくれました」
「よど号事件とかあさま山荘事件とかも知っとるかの?」
「はい。大きな事件は一応」
……なんか盛り上がってない? 
「じゃあ、これが何かわかるかの?」
じいちゃん、調子に乗って金庫まで開けた。取り出したのは透明なケースに入った一枚の紙幣。
「500円札……?」
マコは首をかしげる。
「ただの500円札ではないぞ。昭和最大の未解決事件として名高い……」
「三億円事件!?」
マコの素っ頓狂な声にじいちゃんは満足げだ。話の通じる人間、あまりいないからな。
「その通り。盗まれた紙幣の一枚じゃ」
「どうしてここに……」
「ワシも人づてに手に入れたし、詳しい経緯は知らん。じゃが、公表された番号と見事に一致しておる。ワシのコレクションの中でも別格じゃ。事件の謎の一端を自分が握っているなんて最高じゃよ」
じいちゃん、天狗になってる。ちょっと釘刺しとこう。
「こんな紙幣、簡単に偽造できるじゃん。怪しげな奴に騙されて高い金払っちゃって」
「いいや、これは本物じゃ!」
ま、何度言ってもじいちゃんは聞かないけど。
「すごいですね。今は無い星の事件の手がかりがこんなところにあるなんて」
……マコ、本気で言ってないよな?
「ロマンじゃろう? もう一つ、とっておきがあるんじゃ」
じいちゃんが奥の部屋にマコを案内する。……あれを見せる気だな。随一の眉唾物。
「結構大きいですね」
布に隠れたそれにマコは興味深げだ。
「ワシの一番のお宝じゃ。誰にでも見せるわけではないぞ」
もったいぶりながらじいちゃんが布を外す。
「……日本人の……剥製?」
「誰だと思う? ヒントはこのキツネ目じゃ」
楽しそうなじいちゃん。
「キツネ目の男……グリコ森永事件?」
控えめにマコが答えた。
「大正解! レア中のレアじゃろ?」
満面の笑みを浮かべ、じいちゃんは胸を張った。

 部屋に戻ってマコに謝った。
「じいちゃんの趣味に付き合わせてゴメン」
「ううん、楽しかったよ」
「変な物ばかりだろ? 言っとくけど、500円札も剥製も偽物だから。じいちゃんが本物って言い張ってるだけで」
「わかってる。本物は伯父さんの家にあるし」
「そうか。……え?」
伯父さんは昭和コレクターじゃないんじゃ……。
「5代前の先祖が地球調査員だったから。サンプルを採取するのに、いたずら心でちょっと事件に手を出したって日記にもある」
「へえ……」
いたずらって……。
「本人は当時の日本を結構気に入ってたけど、将来の自然と科学のバランスを危ぶんでた。……この星は地球と同じ過ちを犯しちゃダメよね」
愛星心溢れるマコらしい。僕はマコを抱きしめた。


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このストーリーに関するコメント

14/01/22 朔良

光石七さん、こんばんは^^
拝読いたしました。
懐かしい歌から始まるな〜と興味津々で読み進めました。
昭和コレクターのおじいちゃんとってもチャーミングですね。収集品を見せて自慢せずにはいられないコレクター心の描写がお見事です。

残念ながら地球は滅びてしまってるようですが、こちらの星は、しっかりした若いカップルもいることですし、末永く繁栄していけそうですね。
とっても楽しめました。ありがとうございます。

14/01/22 光石七

>朔良さん
コメントありがとうございます。
老若男女問わず昭和を代表する歌といえばこれでしょう!(笑)
不足な点が様々あると思いますが、楽しんでいただけてよかったです。

14/01/23 光石七

>OHIMEさん
いつもありがとうございます。
タイヤキくんとひょうたん島、キツネ目の男を使いたくて無理矢理作った話です(苦笑)
昭和って様々な出来事や文化が詰まった面白い時代ですよね。便利さと引き換えに大事なものを見失う兆候もあったかと。
昭和生まれとして、私は何ができるかなあ……?

>猫春雨さん
昭和らしい人情的な話や大きな事件を下敷きにした話も案として考えたのですが、深まらず。ちょっとぶっ飛んだ(?)話に切り替えた次第です(苦笑)
激動の昭和という表現があるように、確かにエネルギーが渦巻いていた時代だったと思います。
コメントありがとうございます。

14/01/24 草愛やし美

光石七様、拝読しました。

このような昭和コレクターが表れる時代が……。なんということでしょう、わたくし、こういうのみな昨年捨ててしまいましわ実は我が家をリフォームしまして(; ̄ー ̄川 アセアセ その折に、処分したものが多数。

でも、剥製はございませんでしたが、三億円のジュラルミンケース風味のアタッシュケースありましたが。残念ですわ。
昭和のコレクターズ、この時代まで我が子孫が生き残っているかが、先に問題になりそうですが、今ある残っているものを大事にするように息子に伝えたいです。貴重なお話ですね、肝に命じて、家訓の作品としたいと思います、苦笑  面白かったです、ありがとうございました。

14/01/24 光石七

>草藍さん
いつもありがとうございます。
将来何がお宝になるかわかりませんが、今現在を生活するには捨てることも必要なわけで。
我が家にはお宝になるようなものは無いなあ……
面白かったと言っていただき、うれしいです。

14/01/28 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

まさか昭和というテーマでSFなんて、すごい発想力ですね。
昭和は遠くになりにけりと申しますが、まさかその星ごと
既に滅亡してしまっているとは、それはもうコレクションの値は右肩あがりでしょう♪
三億円事件、ありましたね〜迷宮入りなのでしょうね。
伯父さんのオチも楽しかったです。

14/01/28 光石七

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
一応(?)昭和生まれではありますが、昭和という時代を机上だけで掘り下げることができず、異星人なら荒唐無稽な捉え方でも許されるだろうと(苦笑)
迷宮入りの事件、異星人が関与してる……ってことは……ないですかねえ。

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