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ゆうか♪さん

埼玉在住で、気が向いたら小説や詩やエッセイなどを書いています。                                                                                          下手の横好きで未熟者ですが、読んで下さった方がほっとするようなものをメインに書いていきたいと思っています。                                                                                                 たまに気分が沈んでいる時は暗いものも書いたりして、読者の気分を落とす危険性も……汗                                                                                                        こちらでは短編しか投稿できないので、その他の長編などは、ノベリストに投稿しています。                                                http://novelist.jp/member.php?id29090

性別 女性
将来の夢 色んな想いを描きたい。そして、それを読んだ方が何かひとつでも心の糧になるものを得てもらえたら・・何よりの幸せです。ヽ∩_∩ノ
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遠距離恋愛のその先は…

12/05/28 コンテスト(テーマ):第七回【 結婚 】 コメント:0件 ゆうか♪ 閲覧数:2511

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「もう終わりにしようか」
雅也の口から出たその言葉を、優美は少し伏し目がちにして聞いていた。
遠からず聞かされるだろうと覚悟はしていたけれど、だけどやっぱり聞きたくはなかった。できれば雅也の気が変わる何かを言いたかったけれど、言葉が見つからないまま、一旦開きかけた口をそのまま閉じてしまった。
冗談だよと笑って欲しい――その思いで胸はいっぱいだった。
しかし雅也は、何も返事をしないでただ俯いている優美の態度に、次第に苛立ちを感じてきた。
「だって仕方ないだろう? 元々無理だったんだよ! 遠距離なんて」
「でも……」
優美は、まだ愛してるのに…と続けたかったが、言っても無駄だろうとわかっていた。
いきなりここで会おうと雅也からのメールが届いた時、すでに雅也の気持ちが決まっていることを感じていた。
このレトロなカフェは、若者たちがよく利用する今流行りのフランチャイズの店と違って客も少ないし、本当にコーヒーを愛する僅かな常連客が、ゆったり流れるJAZZを聴きながら静かに時を過ごす場所だった。そして、初めてのデートの時に雅也が連れてきてくれた場所でもあった。

出逢ったあの日から三年。雅也との沢山の思い出を大切にしてきたのに――そう思うといきなり涙がぽとりと落ちた。そしてそれは、関を切ったように溢れては落ちた。
「お、おい! 泣くなよ」
雅也は慌てて声をかけると、すぐさま周囲を見回した。
「俺が泣かしたみたいじゃんか」
顔を上げた優美の目には、困った顔の雅也が見えた。
「ごめん」
「とにかく、もう泣くなよな。泣いたってしょうがないんだから」
そう言うと雅也は目の前のコーヒーをぐいっと飲み干し、
「じゃあ俺行くから」と、急いで席を立ち、レジを済ますと優美を振り返ることもなく店を出て行ってしまった。
残された優美はハンカチで涙を拭い、一つ大きく息をつくと、冷めたコーヒーカップに手を伸ばした。

雅也は24歳、優美は21歳。二人は共に東京に住んでいて、付き合い始めてからは週に二回はデートしていた。ところが優美が短大を卒業して就職したその年、雅也は仕事の都合で岡山に転勤になってしまった。それは悲しい現実だったけれど、だからといってそのせいで別れることにはならないと、その時の二人は信じていた。
だがしかし、岡山での雅也の仕事は想像以上に繁忙を極め、毎日だった優美との電話やメールのやり取りも、3日に一度が週に一度となり、ついには月に一度となってしまった。
さすがに優美は、雅也の浮気を疑った。そのせいで優美からのメールは頻度を増し、返事がないと時間構わずに電話を入れた。
最初の内こそ雅也は電話に出て、返事ができなかったことを詫びたが、それが度重なると、次第に優美の存在を重いと感じるようになった。そしてそれからは、優美から電話があってもわざと出なかったりした。
優美の不安や焦りが徐々に大きくなって、切なさに潰されそうになった頃、雅也から一通のメールが届いた。それには一言だけ「もう疲れたよ」と書かれてあった。

カフェで置いてきぼりにされてからの一年、優美は雅也を想って、逢いたくて逢いたくて涙が零れて眠れない夜もあったし、またある時は、もう雅也のことを考えるのはやめよう。どうせ元には戻りっこないのだから……と自分に言い聞かせ、深いため息をつくこともあった。けれどそのどちらも考えなかったことはなかった。

人は失って初めてその大切さに気付くことが多いと言われるが、それは大抵『後悔』という言葉で締められてしまう。

今、懐かしいカフェの前に立って、優美は不思議な感慨に打たれていた。
一年前のあの日、ここで雅也からの別れの言葉を聞いたのだ。
そして今日は……。今日は一体どんな言葉を聞くのだろう。
昨夜遅くに雅也から届いた一通のメール。そこには、
「元気ですか? もう一度会って話がしたいんだ。明日、一年前のあの場所で、あの時と同じ時間に待っている。優美が来るまで待っているから」と書かれてあった。
優美は散々迷った挙句、結局返事はしなかったが、やはり来てしまった。そして店の前で立ち尽くすこと10分。果たして雅也はそこに居るのだろうか。少し震える手で、優美はそっとドアを引いた。

それから約二時間後、二人が揃って店から出てきた時、優美は雅也の腕をとり、その左手の薬指にはちっちゃいながらもダイヤのリングがキラキラと誇らしげに光っていた。そして少し潤んだ瞳と上気した頬が、その幸せを十分に物語っていた。

人と人との出逢いと別れは、一体どこでクロスするようになっているのだろう。おそらくそれは、目には見えない交差点を、ほんの一歩踏み出した瞬間に訪れているのかもしれない。
これからの人生、優美は雅也とはぐれないように、いつも手を繋いで交差点に踏み出そう。そう思ったのだった。


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