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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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奥義『再会、そして……』

14/01/04 コンテスト(テーマ):第四十七回 時空モノガタリ文学賞【 再会 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2195

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 長い坂を登り詰めた所に、赤いトンガリ帽子の一軒家がある。その古びた洋館の住人は、一年前にリストラに合った森口翔平。
 とにかく宮仕えは懲り懲りだ。だいたい人付き合いは苦手、もちろん群れることも大嫌い。そんなことから、まるで世捨て人のごとく、偶然にも叩き売られていたこの家を購入し、移り住んだ。
 不便。しかし、この町では一番高い所にあるためか、晴れた日には青空に覆い包まれた町並みが眺望できる。また家はそこそこ広く、快適で、ずっとここで一人暮らして行こうと決めていた。
 それでも下界との縁は切れない。風邪を引けば医者に行かなければならないし、食料や日用品も必要。そのため時々坂を下りて行った。
 当然、俗界では金がいる。そのために翔平は株売買のデートレをやり、日銭を叩き出す。こんな生活、世間の常識からすれば、若い男が汗水流さずにと決して褒められたものではない。
 だが、あの日の、ごり押しの再会から翔平の暮らしはすべて変わった。


「あなた、いる?」
 玄関から女性の声が。しかし、朝一番の取引中だ。翔平はパソコンの前から離れられない。それにしても滅多に人は訪ねてこないのに、あなたとは、一体誰だろうか?
 気にはなったが、「上がって、待っててください」と画面に目を釘付けさせたまま返した。
 それに応えて、「いいわよ」と女が言ったような、言わなかったような、それでもスリッパを穿いて、リビングへと向かったようだ。
 それから30分は経過しただろうか、翔平は一段落し、女が待つリビングへと入って行った。
 しかしだ──女がいない。
 どこへ行ったのだろう?
 奥を覗いてみると、なんと女は、台所に立って手際よく煮炊きをしているではないか。翔平にとってそれはあまりにも意外で、我が目を疑った。それでも精一杯問い掛ける。
「えっとえっと、どちらさんでしたっけ?」
 背後の翔平に気付いた女、振り返りざまにニコリと笑い、さらりと言い放つ。
「あらっ、私よ、妻の百花よ」

 妻、妻、妻?
 唐突に発せられたこの言葉に、翔平はびっくらこいた。
 だいたい翔平は、彼女いない歴、堂々の十五年、色恋に縁のない独身男だ。妻なんて……信じられな〜い。
 動転でオロオロする翔平に、女は声を1オクターブ上げて、実に嬉しそうに、さらに一言。
「再会できて、良かったわ」
 翔平は訳がわからない。
「百花さんでしたよね。ところで、その再会って?」
 翔平にとって、こんな質問がやっとこさ。
「あなたは勝手に籍まで抜いて、私を置き去りにして、雲隠れしてしまうんだから。探し当てれば、こんな隠遁生活に入っちゃっててさあ。一旦は離れ離れになった私たち夫婦、やっぱり固い絆で結ばれてたってことね、だから再会できたのよ。さっ、もう良いでしょ、あなたの好きな芋の煮っ転がしを今作ってるから」
 この女、いや百花が畳み掛けるものだから、取り付く島もない。それでも目一杯、「芋の煮っ転がしって、俺、好きじゃないんだけどなあ」と反発したものの、「ウッソー! 絶対に、あなたの好物よ」と一蹴されてしまう。
 こんな百花の強引さに翔平は全身全霊打ち砕かれ、これは成り行きというものなのか、まっえっかと一緒に暮らし始めたのだった。

 しかし、人生とは可笑しなもので、こんな謎めいた再会でも、一つ屋根の下で暮らすと、ひょっとすれば百花は……以前、俺の女房だったのでは……と思えてくるから不思議だ。
 その結果、元妻と名乗る百花に家も貯金も牛耳られ、女の指示に従って、デートレでなく畑仕事で汗を流す。挙げ句の果てに、電動チャリンコを買い与えられ、下界へと働きに出される日々となってしまった。
 この家で一人のんびり暮らそう、こんな当初の夢から一転した。だが、翔平はこれを苦痛と思わない。それは百花との生活が愉快で、心潤わせてくれるからだ。

 そんなある日、翔平は新聞で知る。
 それは最近流行りの結婚詐欺。過去に会ったこともないのに、再会ですよねと馴れ馴れしくすり寄ってくる。そして、そのとどのつまりが全財産持って行かれる、と。
 世間ではそれを──再会詐欺──と呼ぶ。

 百花は俺を、再会詐欺で騙したのかも?
 翔平の脳裏に疑念がちらつく。そんな様子を窺っていた百花が静々と歩み寄り、横に腰掛ける。
「離れ離れになった私たち、再会できたでしょ。そこからもう一歩前進しましょ。だからここに判を捺してちょうだい」
 百花から差し出された書類、それは婚姻届だった。翔平はとにかく驚いた。しかし嬉しい。これで現実に百花と夫婦になれるということだ。
「嘘から出たまことってことだね」
 翔平は顔をほころばせながら捺印した。その婚姻届を手にした百花は、笑み一杯に言い放つ。

「嘘の再会からまことの結婚へと繋げる、これこそ再会詐欺の奥義なのよ」


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このストーリーに関するコメント

14/01/04 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

再会詐欺なら、引っ掛かってみたい男性も多いかも知れませんね。
気立ての良い妻なら願ったり、叶ったりですよ。

新春から楽しいお話ありがとうございます。

14/01/05 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

再会詐欺にあってみたい。
こんな行き当たりばったりの生き方もよろしいかと、
願望が入ってます。

14/01/07 草愛やし美

えっ!? 鮎風遊さん、こんなことが……。

恐ろしきは、男女の道でしょうか。翔平さん、わかっているのに、その上、まだ騙されるなんて。でも、結構幸せそうですか。幸せ代金としては、この後、お高くつきそうな気がしています。たぶん、婚姻届は書いただけで、役所には出されないかもでしょうね。
面白い再会で、おろおろしながらも楽しく読みました、ありがとうございました。

14/01/09 鮎風 遊

草藍さん

縁は異なもの味なもの

こんなどきどき、おろおろで結ばれるのも良いかなと。
初笑いのつもりで、書かせてもらいました。
よろしく。

14/01/09 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

わかっていて、だまされる、なんと懐の深い男の人でしょうか。
幸せを祈ります♪
面白かったです。

14/01/13 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

「懐が深い」のより、暖かい方が好きでして……、
だけど、寒くても、こういう成り行きあこがれてます。

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