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ナツさん

昼ドラ系も、ほっこり系も、大好きです。 拙い文章ですが、読んでいただければありがたき幸せ… ぜひ、ご賞味ください・Д・ノ

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手紙〜父が残したもの〜

13/12/27 コンテスト(テーマ): 第二十三回 【 自由投稿スペース 】  コメント:0件 ナツ 閲覧数:1068

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    私はどこにでもいるごくごく普通のサラリーマンだ。明るい妻と可愛い娘が2人。とても幸せな毎日を送っていた。
    
そんな中、体の不調が気になり出したのは暑い夏の日だった。はじめは夏バテだと思って軽く流していたが身体中のだるさが耐えきれなくなって、夏風邪かと思い病院に行った。
    診察を受け薬を貰って帰ろうとしたとき、どうしようもないだるさが襲ってきて耐えきれなくなって倒れた。遠くで私の名前を呼ぶ声がした。
   
 目が覚める見知らぬ部屋にいた。病室だろうか…さっきかかった医者は小さいところなのでおそらく別の病院だろう。
    「目覚めましたか?」と看護師がやってきて、その後ろにはガッチリした体格の医者がいた。その医者の顔は何か大変な事を今にでも伝えたそうな顔だった。
「突然で申し訳ないのですが、ちょっと詳しい検査を受けてみませんか?」そうか、私はどこか具合が悪いんだな…なぜかこのときは自分でも驚くぐらい落ち着いていられた。そして急遽、詳しい検査を受ける事にした。

   どうやら相当悪いらしい。検査を担当する医者の顔はどんどん険しくなっていった。体をいろいろ調べられてから診察室に入った。
そして重々しい様子で私に病名を告げた。
「○○さん、あなたは恐らく肺がんです。肺がんには大きく分けて2種類があり、小細胞癌と非小細胞癌に分けられます。
小細胞癌は、癌の中でも比較的に少ない方で2割くらいと言われていて、進行具合が早く悪性度が高くなっています。
進行具合が早く悪性度が高いので、全身に転移しやすく再発する可能性も高いといわれています。
非小細胞癌は、癌のほとんどを占めており早めの検査で早期発見することで、治療や手術を行えば予後は良好になるといわれています。あなたの場合、前者です。しかし、幸いまだそんなに進行していないようなので…」

    自分が肺がんだと言われた上にいきなり難しい言葉を並べられた事で私の頭は真っ白になってしまった。さっきまでうるさかった蝉の鳴き声ですら耳に入ってこなかった。進行が早く、悪性度が強い?そんなに恐ろしい病気だったなんて…
    「そこですぐにでも治療していきたいのですが、ご家族の方をお呼びする事はできますか?」そんな事をしたら妻はきっとパニックになるだろう…
「すみませんが、家族には黙っておいてもらえませんか?少し一人で考えたい事があるので。」
「わかりました。でも、なるべく早くお伝えしてください。がん治療は家族の支えが欠かせませんから。」「はい…」

   予想以上に帰宅が遅くなったからやっぱり家族は心配していた。帰りが遅いだけでこんなに泣きそうなくらい心配するのだから、自分がガンだなんて言ったら倒れてしまうんじゃないか…
    隠し事なんてしたくない、そんな自分とそれを反対する自分の間で自分の気持ちに押しつぶされそうになった。なかなか寝付けず、時計の音が頭の中でずっとなっていた。

   いつもと同じように仕事に向かった。ふと思った、病気がひどくなれば職場にも迷惑がかかる。そうなる前にやはり、話しておかなければいけないんだと。ずどーんと重いものが胸の中に溜まっていくのを感じた。仕事もあまり手につかず、周りから心配されたけど、本当のことなんて言えるわけがなかった。

   治療のために病院に向かった。まだ家族には話せていないけど、早く取り掛かった方がいいらしくはじめることにした。そのうち副作用とかなんとかで目に見える変化が出てきてしまう。その時がきたら話すしかないか…
   点滴で抗ガン剤が自分の中に入っていく。これを打つだけで病気がなくなるならどんなにいいことか。それでもこのガンは特に再発率が高い。神頼みなんてどうかしてると思っていたけれど、今なら頼みたい…神様、少しでも長く家族の元でいさせてください。

   夢を見た。いつまでも病気ことを言えずに家族の元を去ることになってしまった夢を。「どうして?なんでもっと早く教えてくれなかったの…わかっていたら、わかってたらもっとできることがあったのに…!」終わりましたよと言う看護師の言葉で目が覚めた。
   あの夢は何だったのだろう?家族にだけ入った方がいいという意味なんだろうか?この時、打ち明けたい気持ちが喉を上がっていっていた。

   「おかえり!」飛びついてくる娘たち。彼女たちは仕事に行っていたと思っている。可愛い我が子にさえ嘘をつかないといけたいのは辛かった。吐いてしまいたくなった。
    「お母さん、話があるんだ。」そして私は遂に妻に話す決心をした。もう言うしかなかった。

   「実は…」話し始めると彼女は黙って聞いていた。話し終わると君は瞳に涙を浮かべて、思った通り今にも壊れてしまいそうだった。それでも言ったことに後悔はしなかった。これでいいんだと自分に言い聞かせていた。
  「それでいろいろ迷惑をかけるかもしれないし、生活も大変になるかもしれないけどごめんな…」すると、
「そんなこと気にしないで。それより言ってくれてありがとう。今まで一人で背負い込んで辛かったよね。ずっとあなたの事支えるから。」君のまっすぐな瞳に偽りはなくて、ただ純粋に自分の事を思ってくれてるんだと思ったら、涙が止まらなかった。
    あの日君を守ると誓ったのに守るどころか守られる事になるなんて。それでも君と生きると誓った事は絶対に破らない。少しでも長く少しでも元気に家族のもとで家族の思い出をたくさん彼女たちに刻んで欲しいと強く思った。

    日に日に弱る父をみて娘たちは少し不安そう。それでも自分たちに何ができるか必死に考えてくれて、幼稚園での出来事なんかを教えてくれる。絵本読んでと近寄ってくる様子からは全然まだ子供なのに、自分が辛そうにしてると黙って背中をさすってくれる。彼女たちは私が思っている以上に我慢をたくさんして、大人になろうとしている。それは決して背伸びをしようとしてるわけではなく、ただ純粋に自分の事を助けたいと思ってるんだろうに。

   この手がまだ動くうちにやりたいことがある。自分がいなくなった時、普段は我慢していても時々思い出して悲しませるかもしれない。遊びにだって連れていけないし、宿題だって見てやることができない。自分が父にしてもらったことを何一つしてやれないのだ。
    今までは誕生日を家族で祝っていた。それだって出来なくなって家族が一人かけてたらせっかくなのに楽しめない。だからせめて、一年に一通の手紙をプレゼントできたら、それが彼女たちにとってできるせめてものことだと思う。
   だから、二人の娘に毎年20歳まで、手紙を一つずつ残そうと思う。それが自分に残されたただ一つのことだと思うから。

   娘は8歳と5歳だ。しかし20歳までだと12+15で27も書かなければいけない。それは少し無理があった。ただでさえ、抗がん剤の副作用で耐えられない痛みを襲われる時があるのにそんなにもは無理だった。しかたなく、小中高大、20歳の五回メッセージを録音することにした。
   紙に書くのと声に出すのではしんどさはたいして変わらず辛いが、声に出すと心にしみ精神的に辛かった。

「○へ、
     小学校に入りましたか…もう慣れた?  友達はいる?父さんは  たくさん友達がいたよ。友達は時として最大の見方になる。だから、その子達が困ってる時は、自分にできる最大限の手助けをするんだよ。楽しい小学校生活になりますように。父より。」

「○へ、
     お誕生日おめでとう。その場にいれたらどんなにいいことか、隣で一緒に祝ってやりたかった。でもね、いつでもそばにいるから。隣で見てるから。高校生活楽しんで!父より。」

「◎へ、
学校は楽しいですか?◎は少し気が強いから友達が多くないかもしれない、そのことで悩むことがあるかもしれない。でもね、友達は量じゃないんだ。だから、今いる友達を大切にしてね。父より。」

「◎へ、
父さんからしたら少し悲しいけど、もう彼氏ができてるかもしれないね。◎の笑顔はみんなに好かれる顔だから、モテるかもね(笑)でも、自分を大切にしてくれる人なら父さんは応援するから、幸せになってね。父より。」

  少し疲れが出てきたようだ。あと少ししたらもう寝ようか。そうやって5つずつのメッセージが録音出来たとき、倒れこんでしまった。




「ハッピバースデートゥーユー!」
「お父さんのメッセージ聞いていー?」
「いいわよ。」
「…お父さんありがと…」


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