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ナツさん

昼ドラ系も、ほっこり系も、大好きです。 拙い文章ですが、読んでいただければありがたき幸せ… ぜひ、ご賞味ください・Д・ノ

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君と見たあの空

13/12/20 コンテスト(テーマ):第二十二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 ナツ 閲覧数:1323

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     冬の足音が聞こえるころ、一人の少年が住む家もなく途方にくれていた。彼の名はダニエル。父は早くに亡くなり、女手一つで育ててくれた母も去年疲労の上で倒れた。もう大人になる兄弟が何人かいたが、誰も彼の面倒を見てくれる人はいなかった。どこも家庭を持っていて尚且つこの不景気では弟の面倒など見れないというのだ。今日明日の食事もままならず街をさまよう毎日。
「お前も一人か?…一緒だな。」ミャー
     何時ものように路地裏のゴミ箱を見ていると足元で動く小さなもの。しゃがんでみると子猫だった。自分と同じ境遇なそいつを見て心が痛んだ。手に持っている捨てられた食べかけのハンバーガーをちぎってあげる。特に不振がる様子もなくすぐに懐いた。
「相棒になるか?…名前は…そうだな…キースだ。」
キースと名付けられたその猫は嬉しそうに“ミャー”と一言鳴いて足にすり寄ってきた。

   キースはとても賢い猫だった。どんな時もダニエルの歩幅に合わせて歩いた。ダニエルも時にはキースを抱いて行動した。2人はいつも一緒だった。
    ある日のこと、いつもは公園のベンチで寝泊まりしている彼らだったがその日は大雨で屋根のある場所を探していた。すると目の前に白い建物が
「教会だ…入っても大丈夫かな?」
誰かに怒られたら謝ればいい。一晩のことだ。そう思いドアをかけて中に入った。
ステンドグラスで装飾された部屋の中は、神秘的で。それでも何処か落ち着ける雰囲気がある。一番前の席に座り、ガラスに伝う雨粒を眺めていた。
『どうしたのですか?』
どこからか聞こえてきた美しい声。しかし、振り向いても周りを見ても誰もいない。
「だれ?」
『恐れないてもいいですよ。』
姿の見えないその人には不思議と恐怖や不信感は抱かなかった。その透き通るようなでも温かみのある声は神様なのかな、そう思っていた。
「貴女はだれ?」
『そうね…キースって呼ばれてるわ。』
「え…」
キースを見つめる。ミャーと相変わらず鳴くので信じられずにいた。するとキースはすり寄ってきて膝の上に座った。
『あの日、初めて会った日から幸せだったの。』
「…うん。うん。僕もだよ。」
この場所柄なのか不思議なことが起こっているのに受け入れてる自分がいた。心が落ち着くのだ。“彼女”といると。
『一度だけていいから、話したかった。ありがとうって言いたかった。』
「うん…でもどうしてお別れみたいなこと言うの?」
返事はなかった。雨音は少し止んだようだが、この沈黙にはその音でさえ大きいようだ。

   何ヶ月か前のこと、キースはよく離れるようになっていた。帰ってくるのも遅くなって何処に行っているのか気になって後を追ってみた。
すると出会ったあの路地裏の奥へと消えていったのだ。走ったけれど追いつかず、行き止まりに行ってもいなかった。
隣で寝ているホームレスのおじさんに聞いてみた。猫は何処に隠れるのか。すると彼は諭すように言った。
…猫は飼い主に死に目を見せない。…
どういう意味かわからなかった。聞いてもそれ以上は何も教えてくれなかった。けれど、なぜかさみしい気持ちになって帰ってきたらとびきり優しく接した。
    晴れた日は一緒に日向ぼっこをして同じものを食べた。するとキースはいなくなることは少なくなった。

「ねぇ、あの時どこに行ってたの?」
『猫しか知らないところよ。貴方には行くことは出来ない。』「もういなくならないよね?」
『ごめんなさい…』
キースは弱々しく謝った。ここで自分も返事したら何もかもが終わってしまう気がして、黙り込んでしまった。沈黙を破ったのはキースだった。
『本当に楽しかった。貴方のこと忘れない。』
「そんなこと言っても忘れちゃうんでしょ?!もう僕を1人にしないで!1人にしないでよ!」
『貴方は1人じゃない。私はいつもそばにいる。寂しくなったら空を見て。思い出して。あの日々を。』
そう言うとキースは膝からおりて出口に走った。ダニエルも後を追った。今度こそ見失ったら最後な気がした。走って走ってもう少しで抱き上げることができる距離になった時、急にキースは振り向いて
『いままで本当にありがとう。』そう言った。
すると強い風がどっと吹いて思わず目をつぶる。開いた時には彼女はいなかった。

    どれだけ時が過ぎただろうか。死んだように無気力になったダニエルは当てもなく歩いていた。そしてついに疲れ果てて座り込んでしまった。
「キース。どこに行っちゃったの?」
流れてくる涙を止めようと空を見上げた。そこには彼女と過ごした時と同じ空が広がっている。
…泣かないで…
そう聞こえた気がした。涙はいつの間にか止まっていた。ぐっと拳を握る。
「生きなきゃ。思い出と一緒に。キースと過ごした証だから。」
…がんばって…
空はいつかは晴れる。明日を迎えるために。
ダニエルは歩き始めた。明日を迎えるために。
『ミャー』
何処かで子猫が鳴いた。


                                          Fin…


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