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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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雪ちゃんとお地蔵様

13/12/16 コンテスト(テーマ):第四十五回 時空モノガタリ文学賞【 雪 】 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1931

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 雪ちゃんに、お友達が一人もいないのはね、雪ちゃんがお家から少しもお外に出ないから。 雪ちゃんのお顔の色はみんなと少し違っているんだ。お父さんと一緒で黒いの。それはお父さんが夏しかない国の人だから。お父さんは日本に来て初めて雪を見たんだ。綺麗だと感動したので雪の日に生まれた赤ちゃんに雪ってお名前をつけたの。
 元気だった雪ちゃんが急に笑わなくなって幼稚園に行かなくなった。お外に行きたくないって言うので、お父さんもお母さんも困ってしまった。環境を変えればいいと言われ、おばあちゃんの住む田舎に引っ越して来たんだけど、雪ちゃんは同じ。お外に出ないままだった。数日経って、おばあちゃんに、絶対いいことがあるからと誘われた雪ちゃんは、お寺に行くことになった。お外に出ると雪が降ってきた。
「あら、雪ちゃんの雪だ、綺麗だね」
 そう言われた雪ちゃんは、雪を見て泣き出してしまった。
「あたし、雪はイヤ! お名前も大嫌い。だって、前のお家の幼稚園で、お顔が黒くて変だとか、なぜお顔が黒いのって聞かれたの……どうして、あたしだけみんなと違うの、おばあちゃん、あたし悲しい」
 雪ちゃんは、泣きながら今まで誰にも話したことがなかったお話をおばあちゃんに話したの。
「雪ちゃん、お地蔵さまを見てごらん」 
 お寺についたおばあちゃんは、雪ちゃんにお地蔵様を見せたの。それを見た雪ちゃんはびっくり。だってお地蔵様のお顔は自分と同じ真黒だったから。
「このお地蔵さまはね、炭つけ地蔵様といって、とてもありがたいんだ。お参りに来た人たちがお顔に炭を塗ってお願い事をするんだよ。昔から、この村には、そうすると幸せになれるという言い伝えがあるんだ。お地蔵さまにその年できたお米の藁炭をお供えして、次の年に田畑に撒くと豊作になるんだ。ほら、お地蔵様の前に、藁墨が置いてあるだろう。これを、村の人たちは、お地蔵さまのお顔につけて豊作にしてくださいってお願いするんだよ」
「お地蔵さまは、平気なの?」
 雪ちゃんに聞かれたおばあちゃんは、にっこり笑った。
「お地蔵様は、真っ黒顔が嬉しいの、みんなの楽しい顔を見ることがお地蔵さまの幸せなの。雪ちゃんと同じお顔しているね」
 雪ちゃんはお地蔵様と同じと言われちょっと嬉しくなったんだ。その日はお寺の大掃除の日で、雪ちゃんもお手伝いすることになったの。村の子たちと一緒に雑巾であちこち拭き掃除。キュキュ磨けば、ほらピッカピカ。でも、頑張ったみんなのお顔は、ほこりがついて黒くなったの。それを見た太朗君が叫んだ。
「やった〜、炭つけ地蔵さまと同じ黒いお顔だ。きっと、いいことあるよ」 
 一斉に嬉しそうに歓声をが上がった。雪ちゃんは、それを見て楽しくなった。みんなでお顔と手を洗ったら今度はお餅つきだよ。ペッタン、ペタペタペッターン。村のおじさん達が蒸かしたお米を杵でつくとまたたくまにお餅ができた。次は、みんなでお餅を丸める番だよ、雪ちゃんは小さな手で丸めようとしたけど、とても難しくてうまくできない、困っていると和尚さんが言った。
「まん丸でなくていいんだよ、いろんな形があっても、それはそれで楽しいから」 
 見るとみんな、いろんな形のお餅を作っている。新ちゃんは、細長いのは食べやすいって言っている。真美ちゃんは、卵が好きだから卵型のお餅を作ったんだって。夢中でお餅を丸めていた雪ちゃんのお顔、お餅の白いお粉がついているよ、おばちゃんにお顔を洗っておいでと言われた雪ちゃんは、洗い場に走っていった。お顔を洗っているとどこからか声が聞こえてきたの。
『ねえ、雪ちゃん、お粉がつけばお顔は白くて、炭がつけばお顔は黒くなる。お顔の色なんて、気にしないでもいいと思うよ』 
 振り返ったけれど誰もいない。いるのは、お地蔵様だけ。お地蔵様が話しているのかな? 
『お餅の形がいろんなのあるようにお顔も一緒、人も同じ。いろんな人がいるから助けあえるんだよ。雪ちゃん笑うと可愛いね。もっと笑ってね、約束だよ』 
 雪ちゃんは、炭つけ地蔵様がお話したんだと思って、お地蔵様に向かって、ありがとうってお返事して笑ったの。お地蔵様も雪ちゃんと同じ真黒なお顔で笑い返したよ。
 それから、みんなでお餅をお腹いっぱい食べて一緒に帰ることになった。後からお寺に来たお父さんお母さんも一緒だよ。お空から、また白いものが、ちらほら。
「あっ、雪だ、綺麗だね。雪ちゃんの雪だね、いいなあ。そうだ、大晦日には、お寺に大きな鐘をつきにいこうぜ」
 照れながら太郎君が言うと、雪ちゃんは嬉しそうに笑った。
「私、雪ってお名前でよかった」 
 雪ちゃんの大きな声にお父さんもお母さんもおばあちゃんも、みんなにっこり笑ったんだ、お地蔵さまのお顔そっくりの笑顔でね。お正月はもうすぐ。雪の夜は静かにふけていくよ☆おしまい☆


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このストーリーに関するコメント

13/12/16 草愛やし美

右の画像は、無料素材、イラストACさんより、「ろくさん」のイラストをお借りしました、ありがとうございます。イラストACさんのURLは、http://www.ac-illust.com/です。

13/12/16 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

金子みすゞさんの「みんなちがって、みんないい」という詩を思い出しました。
子供の世界は正直でそれだけに時に残酷です。でもこんなふうに乗り越えていけるといいですね。
とってもかわいいお話でした。

13/12/17 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

ほのぼのとした心温まるお話ですね。
女の子なら顔の色を気にするのは当たり前ですが、顔の色が違っていても
人の心の色まで変ることはありません。

大人にとっても教訓になる良いお話でした。

13/12/17 朔良

草藍さん、こんばんは^^
拝読いたしました。

かわいらしくて、心温まるお話ですね。
小学校や幼稚園での読み聞かせに推奨したいです。
心のやわらかい子どものうちに、
『お餅の形がいろんなのあるようにお顔も一緒、人も同じ。いろんな人がいるから助けあえるんだよ。』
というのを、教えることができたら、差別とか減りそうです。

優しい気持ちになれるような、素敵なお話、ありがとうございました。

13/12/18 草愛やし美

そらの珊瑚さん、お立ち寄り感謝です。コメント凄く嬉しいです。ありがとうございます。
金子みすずさんのその詩、私も知っています。とてもいい詩ですよね。みんなちがって、みんないい──そうなんですよね、人は、たとえ血を分けた親子でも、指紋だけじゃなく似ているようでも違っています。違いを個性と捉えれば、きっと世界は大きく変わるのにと思います。確かな幸せに繋がればと願います。

13/12/18 草愛やし美

泡沫恋歌さん、いつもお読みくださって嬉しいです。

私は、創作を童話から始めました。だからでしょうか、童話を書いている時はほっとします。
実は、この作品は数年前書いたもので、元の作品は、3千文字以上ありました。2千文字に短くするのに大変苦労しました。童話向きにと、「です」「ます」調で書いていたものをどうしても短くできず、一度は諦めようかと思いましたが、何とかUPできほっとしています。
投稿しなくてもいいようなものですが、知的技なしの私ですので、脳みその鍛錬だと思い頑張って投稿させていただきました。コメントほんとうに励みになりました、ありがとうございました。

13/12/18 草愛やし美

朔良さん、嬉しいです。童話は大人の方には読んで貰えないかと思っていましたが、お立ち寄りくださってありがたいです。創作意欲になりました、コメントありがとうございます。

息子の級友が苛めにあった時、いろいろな意味合いで人と違っているとそういう目にあるのかと思いました。同じであることのほうが、かえっておかしいのではないかと思います。個性を大切に、差別なんてなく生きていける世界をと心から願っています。

13/12/18 草愛やし美

凪沙薫さん、お読みくださって嬉しいです、コメントに感謝です。

おばあちゃんって、素敵な存在ですよね。ここぞという時に現れて、思いつかないようなアイディアとか持っていたりして……。
いつの時代になっても、こういう助け人みたいな人がいてくれればと願います。いつの日か、こんな偏見のない世界がと祈っています。
いつも、心温まるコメントに励ましていただいております。読んでくださる方々のお蔭で創作を続けることができています。本当にありがとうございました。

13/12/18 草愛やし美

OHIMEさん、いつもお読みくださってとても感謝しています。読んでいただけることが私の創作意欲になっています。何とかこの年(62歳)になっても続けていられるのはひとえにOHIMEさんのように読んでくださる方がおられるお蔭です。
童話でも、大人の方々に読んでもらえたらと思って書いています。私は、初めての創作が童話だったこともあり、童話への思いいれがありますので、コメントいただけとても嬉しいです、ありがとうございました。

13/12/21 鮎風 遊

お正月はもうすぐ。
雪の雪ちゃん、楽しいお正月が来ればいいですね。
ほのぼのとしたお話しでした。

14/03/21 リードマン

拝読しました!
誰かをいじめなければコロニーを形成出来ないのが、未熟な人間のする事ですからね。

14/03/22 草愛やし美

>鮎風遊様、コメントをありがとうございます。
気づかなくて、返信が遅れまして申し訳ありません。この話はかなり前に書いたものを推敲して2千文字に起こしたものです。かなり長くて、時間かかりましたが、推敲するのも勉強になります。ただ、今は花粉で根気がなくあきませんわ。

>リードマン様、私のかなり前の作品にまでお立ち寄りくださってお読みいただきまして感謝しております。貴重なコメント嬉しいです、ありがとうございます。
いじめは悲しいですが、リードマンさんのおっしゃるようにコロニーに属しそれを守るという自己防衛もあるのかもしれませんね。なるほどと思いました。

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