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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
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夢録 (ゆめろく)

13/12/10 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2319

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 夢はレム睡眠の時に見る。
 つまり一夜に4、5回起こる急速眼球運動(REM:Rapid Eye Movement)、その時右脳で視覚され、左脳により言葉が付加され、夢は認識される。
 だが明け方の最後の夢だけが記憶として残り、それ以前の夢はすべて忘失してしまう。

 その消えてしまった夢って、どんなのだろうか?
 もし、それが録画でき、再生できたら……、新たな自分を発見するかも。
 こんなアホな思いに取り憑かれたヤツがいる。その男の名は高見沢一郎、ごく普通のサラリーマンだ。
 単身赴任の安アパートに帰ればメッチャ暇。缶ビール片手にサスペンスを観るのが関の山。しかしだ、ここへきて中年のあがきだろうか、ヤケクソの一念発起。夢録画プロジェクトを一人キックオフさせたのだ。

 それにしても、やっぱり継続は力なり。こんな思い付きでも、なんじゃらかんじゃらと試行錯誤を繰り返している内に、夢は脳の高次視覚連合野に存在していることがわかった。
 あとは様々な図形を見て、その血流変化をマグネティック・リソナンス(磁気共鳴)でパターン化させる。それからそれらを映像化するアルゴリズム(情報処理)を組み立て、あとは様々なパターンをどんどん増やすだけ。これにより映像は見違えるほど鮮明となった。
 そして、ついに完成! 夢録マシンが。
 こうなれば、凡人の性、一度試し撮りをしてみたい。

「榊原、最近よく眠れてるか?」
 オフィスの昼休み、スタッフはマッタリと一服中。そんな中、高見沢は部下でもある後輩に、それとはなしに声を掛けた。
「いやー、先輩。ちょっと最近、変な夢を見ましてね、本当の自分がわからないんですよ」
 これぞ思う壺。高見沢は強引に「昔、周という人が胡蝶の夢を見たの知ってるか?」と、本題へと無理矢理突入させる。だが、こんな無茶振りにどことなく危険を感じた榊原、それでもここは先輩からの問い掛けだ。お愛想で、「その胡蝶の夢って、何ですか?」と返し、ニコリと笑う。
 これに気をよくした高見沢、ここぞチャンスと講釈を一節、とうとうと。
「周の夢に胡蝶なるか、胡蝶の夢に周なるかを、知らず。すなわち周は蝶の夢を見るのだけど、自分が蝶になっているのか、蝶が自分なのか、わからなくなるんだよなあ。要は、夢の中の自分が本当の自分? それとも現実にある自分が本当? ってことだよ」
「先輩、それですよ、私の迷いは。一体どっちなんでしょうね」
 ついつい首を傾げる榊原に、高見沢は一歩踏み出し、さらに……。
「いいか、本当の自分を見極めるためには、夢の世界の自分を知る必要がある。だから榊原の夢を録画して、再生してやるから。さっ、この電光帽子を被れ。そしてこの睡眠薬入りジュースを飲め」
「これって、ちーとヤバそう」
 榊原はびびり、「先輩、これから午後の業務があるのですよ」と反論した。だが、「これは商品開発の一環だよ。だから安心しろ」と、見え見えの職権乱用。
 それでも行き掛かり上、「わかりました」と榊原が返事したものだから、後は会議室へと連れ込まれ、電光帽子を被っての、2時間の心地よい睡眠を取ることになる。

「おい、収録は成功したぞ!」
 この呼び掛けに目覚めた榊原、「夢の世界の俺って、どんなヤツかなあ?」と意外に浮き浮きしている。単純なヤッチャ。
「さっ、再生するぞ」と、高見沢はプレーヤーにDVDを差し込んだ。すると、いきなりこの神聖なるオフィスシーンが表れた。そして、榊原の夢が映し出されたのだ。

榊原の夢の世界
「高見沢君、君の現実ワールドを収録することにしよう」
「榊原部長、許してくださいよ。そんな危ない映像、You Tubeにでも流れたら……、夏子に離婚されますよ」
 そこへ突然オフィスのマドンナ・可奈子が現れ、黒縁めがねを摘まみながら榊原に耳打ちする。
「部長、最近、この高見沢のオッサン迫ってくるのですよ。セクハラ疑惑で首にしてください」
「ああ、そうしよう。可奈子秘書」

 こんな榊原の夢の再生映像を観てしまった高見沢、頭に血が上る。
「おいおいおい、榊原、おまえの夢の中で、なんで俺の上司になってんだよ。それに可奈子がお前の秘書だって? その上、俺をセクハラで追放するって? お前はいつもこんな夢を見てんのかよ!」
 高見沢の脳天からは湯気が噴き上がる。それに榊原は申し訳なさそうに弁解する。
「高見沢先輩、実は私、最近、胡蝶の夢状態でして、現実の私と、夢の中の私、一体どちらが本当の私かわからなくなってるのですよね。でも、夢の世界の方が楽しそうですよね。あちらで御一緒しませんか?」

 高見沢はもう開いた口が塞がらない。そして思うのだった。
 消えてしまった夢なんて、曝いたところで、ろくなことがない。
 やっぱり夢は忘失してしまうこと、それが一番だ、と。


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このストーリーに関するコメント

13/12/10 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。

人は一晩に多くの夢を見て忘れているのですか、なるほど、起床直前の夢だけを記憶しているから、助かっているということですね。昔、続編の夢をよく見ましたが、あれはどうなんだろうと思ってしまいました。まあ、消えた夢はろくなものでないかもしれませんから、知らないのが良いということにしておきますわ。
でも、こんな器械あったら、深層心理がばれちゃうということかもですね。人には知られないのが無難かも。というより、人類にとってこれはないほうが良いのでしょうね。面白かったです、ありがとうございました。

13/12/11 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

高見沢さんは夢の世界でエライ目に会ってますね。

夢というのは案外、現実世界の願望に入ってるので・・・
部下の見た夢が、未来の高見沢さんの運命に
変わらなければいいんだけれど・・・( 〃´艸`)

13/12/21 鮎風 遊

草藍さん

うん、確かにあれば不幸になるかも。
しかし、ちょっと覗いてみたい夢の世界。

どこかの企業が開発中、
あと十年もすれば、出来るらしいですよ。

13/12/21 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

高見沢はどんな世界でも生きてゆけますから、大丈夫ですよ。
案外向こうの方が活躍するかも。

13/12/24 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

最近はほとんど夢を覚えていません。
なんかいい夢だったなあって思うだけで…残念。
でもあんまりいい夢だったとしても、現実とのギャップに
虚しくなりそうだから、忘れてしまうくらいが私にはちょうどいいのかもしれません。

13/12/26 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

そうですね、ほとんど忘れますね。
そこで夢録、試してみませんか。
ちょっとこんがらがりますが。

14/03/14 リードマン

拝読しました!
忘れてしまった夢は忘れるべくして忘れたのだといつも思うようにしています、が、やっぱり気になる(笑)

14/03/16 鮎風 遊

リードマンさん

コメントありがとうございます。

夢はほとんど忘れてしまいますね。
だけど、また同じ夢を見て、続編が展開することもありますから、
不思議です。

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