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雪婆

13/12/07 コンテスト(テーマ):第四十五回 時空モノガタリ文学賞【 雪 】 コメント:1件 五助 閲覧数:2358

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 風もなく、雪はただゆっくりと落ちていた。押し降り積もった雪の下には、数え切れないほどの死と、春に向かって蓄えられた命がある。雪景色が広がっていた。

 長い白髪を顔の前に垂らし、白い割烹着を来た老婆が雪の中、小さい目で辺りをうかがいながら、静かに移動していた。老婆の肌は雪に劣らず白かった。皺は十分に刻まれていたが、皮膚には、まだ張りがあり、顔を覆っている髪は落ちてくる雪をはじき飛ばすような銀髪であった。
 老婆の歩みは遅い。白い長靴を履き、白い割烹着を着た白髪の老婆の姿は遠目から見ると、それが人と認識するのは難しかった。雪を踏む音はまるでしない。
 雪の上に枝が広がっていた。まだ若い桜の木だ。幹はほとんど埋まっていた。降り積もる雪を支えるため、どの枝も垂れ下がり耐えていた。
 老婆は徐々に近づいていく。
 家も雪で埋もれていた。いくら雪をかいても、雪は屋根を覆った。古い家だ。だが老いてはいない。太い柱がお互い支え合い屋根をそこに積もる雪を支えていた。話し声がする、家の中に人が集まっている。
 庭に男の子がいる。
 赤い長靴を履いて、耳まで隠れる、とても暖かそうな帽子をかぶっている。雪のたまを作ったり、それを投げたり遊んでいる。頬が赤く、少しはしゃいでいた。
 老婆は膝をつき、四つんばいになった。そのまま一個の白い固まりとして雪の中を静かに移動した。白い雪の上に、数匹の蛇が絡み合いながら一つの方向に移動したかのような跡が残った。
 男の子は一人だった。大人達はなにやら難しい話をしている。生まれて初めて見る銀世界、にもかかわらず、まるで、かまってもらえない。与えられた膨大な時間と雪に埋もれ境目の見えない広い土地で一人遊んでいた。ゆきはたのしい。でも、ときどき不安になる。雪玉がぽんと上がり、舞いながら、下に落ちる。そこもまた雪で、玉は広がるように潰れ一体となった。男の子は気づいていない。
 雪面を這いずる白い固まりは男の子のそばまで来ていた。雪の中に体をうずめるように、男の子をじいっと見つめた。ひとふさの白い髪が雪の上に落ち、雪と絡み混じった。
 老婆はゆっくりと頭を持ち上げた。白髪に付いた雪がぼろぼろと落ちる。静かに息を吸い込む。
「わぁ」
 老婆は声を張った。
 孫はたいそう驚いた。


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このストーリーに関するコメント

14/03/14 リードマン

拝読しました!
そりゃ驚くだろうなぁ(苦笑)

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