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t-99さん

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雪ん子の冒険

13/12/07 コンテスト(テーマ):第四十五回 時空モノガタリ文学賞【 雪 】 コメント:1件 t-99 閲覧数:1310

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高い、高い、雲の上から雪ん子が外を眺めていました。
きらきらきら、星より地面が、きらきらきら、輝いています。
「いったいなんだろう?」
気になった雪ん子はお母さんに内緒で、雲からこっそり抜け出してしまいました。
ひらひら、雪ん子はどこまでも落ちてゆきます。

地面に舞い降りると、光って見えていたのはたくさんの家の明りでした。
温かい光が街を包み込んでいました。
どこからともなく楽しい声が聞こえてきました。
「はっ、ははは」
雪ん子が窓を見ます。
お母さんと子どもたちがうれしそうに笑っていました。
ひとりぽっちの雪ん子は急に寂しくなりました。
「お母さんに会いたいな」
空を見上げましたが雪ん子お家は遥か空の上です。
「えーん、えーん。お母さんに会いたいよ」
どんなに泣いてみてもお母さんに声は届きません。
「どうしたの」
雪ん子のそばで女の子が心配そうに覗きこんでいます。
「空のお家にかえりたい」
女の子は泣いている雪ん子を手のひらにのせてあげました。
「わたしがお家に帰してあげる」
「ほんとう?」
「まかせて」
女の子は空高く雪ん子を「えい」とほうりなげました。
雪ん子が舞い上がります。
けれど、雪ん子は女の子の手のひらにすぐに落ちてきました。
女の子が何度ためしてみてもやっぱりダメでした。
「えーん、えーん」
お家に帰れない雪ん子は泣くばかり。
泣けば泣くほど雪ん子のからだが少しずつ小さくなっていきます。
「もっと高く上げないと」
女の子は住んでいるマンションに向かいました。
屋上で雪ん子を空高く投げることにしました。
「えーい」
前より高く雪ん子は舞い上がりました。
けれど空のお家に届きません。
何度ためしてみても雪ん子をお家に帰すことはできませんでした。
雪ん子は涙でますますからだが小さくなってゆきます。
そしてとうとう雪ん子は、女の子の手のひらで溶けて水になってしまいました。
「ごめんね、約束を守れなくて……」
女の子が合わせた手を開いてみると、雪ん子の姿はもう消えてなくっていました。

とぼとぼと女の子はお家に帰えりました。
お家ではお母さんがお風呂を沸かして待っていてくれました。
「寒いから、温まりなさい」
温かいゆぶねのおかげで冷たかったからだが、ぽかぽかあったまってゆきます。
けれど、心の中までは温かくなりませんでした。
「ごめんね、雪ん子」
女の子は両手で顔を覆いました。
自然に頬に涙がこぼれました。
「あれれ、ぼくのからだ浮かんでいる」
雪ん子の声がします。
女の子が雪ん子をさがします。
ふわふわしたゆげがお風呂場に溢れていました。
「本当に雪ん子なの」
「うん、ぼくだよ」
「どこにいるの」
ゆぶねの周りは不思議な煙のせいで全く見えません。
「ここだよ」
煙をつかもうとしても、ふわふわした煙はつかめません。
女の子がお風呂の窓を開けました。
窓から勢いよく煙が吐き出されていきます。
「わーい。お空にのぼっている」
「雪ん子。どこなの」
「ぼくは、ここだよ」
もくもくけむりは空に向かって、どんどんどんどん上っていきます。
「これでお家に帰えれるよ」
元気な雪ん子の声がだんだん小さくなってゆきます。
ロケットが吐き出した煙のように夜空めがけて上っていきます。
女の子はいつまでもその煙を見つめていました。


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このストーリーに関するコメント

14/03/14 リードマン

拝読しました!
心温まるお話でした。

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