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タックさん

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雪は孤独の増す薬

13/12/07 コンテスト(テーマ):第四十五回 時空モノガタリ文学賞【 雪 】 コメント:2件 タック 閲覧数:1235

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 街の、ガヤガヤした感じが好きじゃない。特にこの時期、クリスマス前の浮ついた空気は歯噛みするほどうっとうしく感じる。無理にライトアップされた街路も、だらしの無い顔で道を行く大勢の人達も、なに考えてんのってくらい情けないし、見ていてツバを吐きたくなるくらいみっともない。なんか、明るさとか温もりを勘違いしているような気がする。集まれば温かいのかよ、とか思う。なんか、寒い。空気感と気温、両方の意味で。街全体が設定されたイベントを消化するために必死になって頑張ってる、そんなこの季節とこの街が、わたしは最近、本当に嫌いになった。
 
 空はとっくに暗くなってて、空気も朝とはまた違った冷たさを湛えてる。ちょっと前から雪も降ってきた。ちらちら、小さくて今にも消えてしまいそうな雪の粒。それが歩く人々の髪の毛に乗っかって、部分的な斑点になってる。雪って単体だと綺麗なのに、なんで頭に積もるとみすぼらしく見えるんだろう。わたしもそう見えてるのかな。少しだけ、自己嫌悪になる。

――意識してるんだ? 周りの視線。 一人でいると、言葉が自動的に生まれてきて困る。

――嫌いなら、ここに来る意味ないじゃん。わざわざ外の冷たいベンチに座って、道行く幸せそうな人達を見て、なに一人で愚痴ってんの? 帰ればいいのに。どうせ、用も何もないんでしょ? わたし二号はそう投げかける。……意地悪だけど、全部正解。わたしがここにいる理由。それは、街に来るようになってからずっと考えてること。でも、頭がもやもやして答えは出ないから、わたしは文句を言いながら街の一部であり続けてる。目の前を通る、顔も名前も知らない人達。だれもわたしの事を見ていない。それでいい。見てほしくなんかない(本当?)温もりもいらない(嘘だ)だれも、近寄ってほしくない。そう考えて、わたしは人から少しだけ離れた場所に座ってる。それが真実なんだ、きっと(だったら街じゃなくていいじゃん。嘘つき)
 
 さっき、二人組みの若い男に声をかけられた時も、話しかけられて少しほっとした――なんて死んでも思ってない。わたしは知ってる。人との関係なんて、いとも簡単に崩れさるんだってこと。好意は貯金できない。貯めたつもりになっても、相手が捨ててしまえばその時点で霧散霧消してしまう。人の気持ちなんて、そんなもの。不確かで、弱々しくて、紡いだ絆なんてすぐに無くしてしまえるほど、人は現金で、欲に忠実。声を掛けてきた彼らも、わたしとの繋がりなんて求めてない。もっと単純で、表層的な欲に動かされているだけ。くだらない、全部。何もかも寒い。街も、わたしも。綺麗なのは雪だけだ。そう思って、わたしは空を見上げた。その雪も、だいぶ量が少なくなってきてる。もうすぐ止むかも。腕時計を見る。もう結構いい時間だった。心から、少しだけ余裕が失われるのを感じる。わたしはそろそろ帰ろうかな、と思う。気が進まない。でも、おなかが空いたし、明日も学校がある。だから、帰らなきゃ。立ち上がって、少し高くなった目線で目の前を見据えた。……偶然は怖い。そんな時に限って、タイミングというものは合ってしまう。

……あ。目が、一点で止まる。人の群れの中に見知った顔。知らない女の人と腕を組んで歩く、わたしを育てた、今は滅多に帰らなくなった人。その人が、お母さんには向けなくなった表情で、華やかな通りを楽しそうに歩いてる。わたしに気づく事なく、その人は消えていった。聞き覚えのある笑いが、耳に残った。わたしは立ちすくんで、ただただ、無言で二人を見送っただけだった。

……流れる人並み。目の奥。熱い。やめて。声がする。喧噪の中、確かに響く、わたしの声。

――確認できてよかったじゃん。まさか、信じてたの? まだ、家族のこと見てるとでも思ってた?

――違う。そんなこと思ってない。否定するわたし自身の声。それはとても弱い。再びベンチに腰を降ろす。足に力が入らない。それを、ここに残る言い訳に使う。卑怯だ。分かってる。でも、帰りたくない。せめて、この鼓動が収まるまでは。わたしは木に吊るされた派手で下品な電球の束に目を向けて、綺麗、なんて心のこもらない言葉をつぶやいた。気持ち悪い。そう感じた。だれに? 何に? わからない。冷たい。寒い。頭が渦巻く感情に支配され始めてる。

――陰気な我が家の光景が浮かぶ。無表情で食事を支度しているお母さん。二人分。味のないご飯。わたしの帰りを、心配することも怒ることも無くなった、わたしの母親。

――どこも、嫌だ。全部、嫌いだ。じゃあ、わたし、どこに行けばいい? 手を強く握り締める。人々に愛想よく付着している雪のかけら。やっぱり、汚い。わたしは地面に残った雪をブーツの底でごしごしと擦った。それらは溶けて地面と同化し、何もなかったように消えていった。


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このストーリーに関するコメント

14/03/14 リードマン

拝読しました!
孤独を増すというのは真実だと私も思います

14/03/14 タック

リードマンさん、コメントありがとうございます。

雪、というのは雨より孤独をかきたてるものだと思うのです。なぜでしょうね。理由はよく分かりませんが。よろしければまたご一読ください。ありがとうございました。

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