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イノウエヒロトさん

好きな本の作者さんは時雨沢恵一さんと高橋源一郎さんです。 よろしくお願いします。

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洞窟モノガタリ

13/11/19 コンテスト(テーマ):第四十五回 時空モノガタリ文学賞【 雪 】 コメント:4件 イノウエヒロト 閲覧数:1163

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少年兵はひたすらがむしゃらに歩いていた。

たった一人少年として加えられた小隊で、吹雪の中、行軍中にはぐれてしまったのだ。

少年兵は重たい小銃と背嚢(はいのう)を放棄して豪雪の中を一人、歩いていくのだった。

しばらく歩くと、雪はどんどんと少年兵の体力を奪っていった。
吹雪は強くなる一方で、一面銀色の世界の中、少年兵の視界を奪い体力を奪うも、少年兵はただただ雪の中を歩きつづけていった。

少年兵は諦めずに歩みを止めない。
自らの使命の為に、こんな所で犬死などしてしまうわけにはいけないと一心で歩いていたのだ。

やがて、銀世界の中から、少年兵はぽっかりとした大きな穴ぐらを見つけた。
それは紛れもない、洞窟だった。
もしかしたら、ここにはぐれた小隊の仲間がいるかもしれない。

しかしそれは同時に敵が潜んでいる可能性も否定できなかったのだった。

急に迫りくる恐怖感に一瞬、少年兵は怯むが、同時に吹雪から逃れる為に、勇気を出して洞窟へ入ることを決心した。

少年兵は、腰のピストルを抜くと、慎重に、慎重に真っ暗な洞窟へと音を立てないように
恐る恐る足を踏み入れた。
体に積もった雪が少年兵の冷や汗と一緒に交わる。

ゴトッ。

暗闇の奥で、紛れもない、人為的な音が聞こえた。
少年兵は暗闇の奥に何か生き物がうごめいていることを確信した。

少年兵は息を飲み込んだ。
そして、意を決して言葉を、発した。

「ここに、誰かいるのか?」

少年兵の、まだ幼さの残る声が暗闇に響く。

相変わらず、吹雪は収まらず、外は白い雪が少年兵の足跡を見えなくしていく。

「はい、ここにいます。」

聞こえてきたのは中性的な声だった。

声の主もまた、大人とは思えないような声だった。

「お前は、○○の国ものか」

少年兵が聞きかえす。

しばらくして、返事があった。

「はい、○○の国のものです。」

「○○の者は敵国だから、俺はお前を殺さなければならない。」

「確かに、私はあなたの敵なので、私は戦わなければならないのかもしれません。
 ですが、こんな吹雪の中で、命を奪い合うのは馬鹿げていませんか?」

「そんなことはない、俺は、自らの使命の為に戦うことを決めたのだ。」

少年兵は、強い口調でそう答えると、ピストルを構えた。

「…」

相手からは何も返事はなく、沈黙した洞窟内を、ビュウビュウと冷たい風が通った。

「私はあなたと戦う意思はありません。ですが、あなたが私を殺そうとするなら、私にも考えがあります。」

すると同時に、暗闇の中から一筋の腕が伸びてきて、少年兵の銃を奪った。

相手は、洞窟の角に身を潜めていたのだった。

少年兵は、人を殺したことのない少年兵は、突然の出来事にびっくりして腰がくだけてしまった。

そして、暗闇の中から出てきたのは、少年兵と同じ位の背をした少女だった。

少女は銃を少年兵に構えた。

少年兵は恐ろしさのあまりに腕で顔を覆い隠す。

「バンッ!」

「うわっ!」

…静かな静寂の後、冷たい汗が、少年兵のほほを伝った。
ピストルからは弾は発射されなかった。

「って私があなたを殺すと思いましたか?私にはあなたを殺す動機などはありませんよ。」

「…」

今度は少年兵が沈黙になった。


聞けば、少女は○○国の山間に元々暮らしていて、町から帰る途中、吹雪で遭難しかけたため、この洞窟に避難していたということだった。

洞窟の中で、目の慣れてきた少年兵が少女を見ると、自分と同じ位の背丈をした、髪の短く、厚いコートを羽織ったたくましそうな子だった。

少年兵は少女のポケットから取り出した携帯食料をもらうと、すぐにカッ喰らった。


「…俺は、○○からの空襲で両親を亡くしたんだ。」
少年兵はポツリポツリと話し出した。

「独りぼっちになった俺はどうしても復讐がしたくて、大人たちに志願して無理やり隊列に加わったのに、このざまだよ。」

少年兵は暗闇の中で次第に悔しさがあふれて涙声になっているのに気がついた。

「…あなたは今まではこうすることのみが復讐だと思っていたのね。」

少女が返答する。

「だって…だって俺はどうしようもなかったんだッ!こうすることで痛みを相手にわからせてあげないとッ…!」

少女は無言のまま、少年兵の手を握った。

「…!!」

少年兵はその温かみに触れて、初めて自ら過ちを犯してしまいそうだったことに感じ始めた。
少年兵は無言で涙を流し続けた。

冷たい洞窟を冬の風が吹き付ける。
雪は一切を白く埋めてしまう。
そして…雪は、やがてすべてのものを溶かしていく。

少年兵はただただ流れる涙をこらえるのに必死だった。


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このストーリーに関するコメント

13/11/24 芝原駒

拝読しました。
少年兵の今後が気になるお話でした。

いくつか気になった点がありました。
 まず小隊の行軍目的が不明であったことです。敵兵の存在を主人公が警戒しているということは、おそらく前線なのでしょう。吹雪の中で三十から五十名程度を要する小隊が、あえて行軍を強行するのはよほどの理由があるかと思います。ここが描かれていれば、主人公が志願した理由と相まって話の背景が固まったのではないかと思います。
 また、主人公の言動の描写のほとんどに『少年兵は』、『少年兵が』、『少年兵の』という前置がありますが、省略できる部分や『彼』などで置き換えられる部分は積極的に違う表現を入れたほうが文章にメリハリが出るように感じます。
 加えて『雪は、やがてすべてのものを溶かしていく。』とありますが、この文章に疑問を感じました。雪を溶かすのは、熱や温かみであることを強調されるのはいかがでしょうか。
 最後に、セリフ末の句読点、改行の多用、三点リーダ、感嘆符・疑問符後のスペースなどの文章ルールや、『静かな静寂』、『沈黙になった』などの表現の推敲を御検討ください。

以上、拙いコメントですが御容赦ください。
次回作を楽しみにしています。

13/11/24 イノウエヒロト

芝原駒様

丁寧なご指摘と感想誠にありがとうございます。
小隊については私の設定が甘かったと思います。
文章ルールやその他ついても、ご指摘のとおり、次回から取り入れてみたいと思います。
本当にありがとうございました。

14/03/12 リードマン

拝読しました!
好きな作家さんの影響を強く受けた作品だと思います。

14/07/10 イノウエヒロト

リードマン様

感想ありがとうございます。
今後もマイペースで、色々なジャンルを取り入れて生きたいので、時々遊びに来てくださいね^^

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