1. トップページ
  2. 隣の彼女は甘いだけ

汐月夜空さん

切ない話が好きな空想好きです。 なんでもない日常がなんでもある日常に変わる物語を読んだり書いたりするのが特に好きです。 ブログの方でも小説やエッセイ、ネタなどを書いておりますので、よければどうぞ。 twitterの方は私生活も含めて好き放題呟いてますので、汐月夜空のことが気になる方フォローお願いします。 ブログ:http://ameblo.jp/shiotsuki-yozora/ twitter:https://twitter.com/YozoraShiotsuki

性別 男性
将来の夢 物書き
座右の銘 日々前進

投稿済みの作品

1

隣の彼女は甘いだけ

13/11/18 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:1件 汐月夜空 閲覧数:1288

この作品を評価する

「おお! なんていう素晴らしいものをお持ちなんだ! 見たかよコウヘイ!」
 お昼のショッピングモールで、落ち着いて昼食に臨めるレストランを探して早一時間。やっぱりこの時間帯のレストランで落ち着こうとする方が間違っているんだよなあ、とうんざりしている康平の横で平次はテンションマックスではしゃぎまくっていた。
 平次の視線の先は、もうすぐ冬だというのに胸元までがっつりと空いた、大学生くらいの女性が着たピンクのセーター。ぎろ、っとした鋭い視線がぶつかったのを感じ、うっかり横目で見たことを後悔してしまった康平の目から見ても、確かに大きく見事なものが二つ綺麗に並んでいたように思う。
「見てないよ」
「嘘だろ⁉ あれを見なかったなんてこれから先の人生の半分を損したぜコウヘイ!」
「ハ、軽いな、平次の人生は」
「いや、ほんと、まじで。いやー、良い景色だったなー」
 目を閉じて恍惚としたため息をつく平次。康平はその横で、こっちがため息をつきたいよ、とポケットの中の手を握りしめた。
 がやがやとした喧噪は、午後一時を過ぎた今でもやまず、その勢いを増すばかり。二周、三周と巡ったレストラン街はお腹いっぱいの天国組と、空腹で苛立つ地獄組にスッパリ分かれていた。
「ねえ、平次。そろそろ諦めて別の場所に行かない? 僕もう、歩くのに疲れ……」
「おおおおお! ぱっつんぱっつんのパンツに浮かぶ、なんという引き締まったヒップ! そこから繰り出される太もものフォルム! 美しい! そして、その前を歩く女の子は――へそ出しだ! ウエストの艶やかな肌がビューティフル! ん? 今香ったのは何の香りだ? 柔らかくも心に響く薔薇の香り、エレガント! いやー、来てよかったなー!」
「……そう」
「ん、なんか言ったかコウヘイ。俺様は今、生まれてこの方一番満喫しているところだ。邪魔しないでくれないか」
「うん、まあ、平次はそうなんだろうけどさ。なんていうかさ、君確か、彼女、居たはずだよね?」
「うん? それがどうかしたのか?」
「それがどうかしたのか、って……」
「お、ほら、空いてるぜコウヘイ! 良い事っていうのは重なるもんだなー」
 平次が指差した先にはたった一つ行列客の居ないうどん屋の姿が。康平はハイハイと適当に頷いて先に進む平次の後ろに続いた。



「で、さっきの話だけどよ、俺様に彼女が居たら、周りの女性に見惚れちゃいけないって話なのか?」
「いや、そこまで言うつもりはないけど……」
 康平は目の前にある桶からうどんを掬いだし、汁の中へと放り込む。かも南蛮のつけ汁はファミリーサイズの釜揚げうどんを入れても薄くならずに美味しい。平次は口いっぱいにうどんを頬張って喋るので、見た目に少し行儀が悪かった。
「あのよー、コウヘイ。美しいものは美しいし、しょっぱいものはしょっぱいし、甘いものは甘いんだぜ?」
「は?」
「それを我慢するっていうのは、違うだろ?」
「それはつまりあれ? 自然なことだから良いだろってこと? 普通、恋人はそうは思わないと思うけどなー……」
 首を傾げる康平に、平次は毅然とした態度で答えた。
「いやいや、そりゃ俺様だって我慢は出来るぜ、人間だからな。だがよ、そんな我慢ばっかりの中で選ばれて、一体全体何が嬉しいっていうんだよ。俺様には嫉妬するやつの気持ちはさっぱりわかんねーな。そんな思いを抱くよりも、あんなに素敵な人よりも私は大切にされているんだ、って思った方がみんな幸せだろうぜ」
 康平は頷かない。
「でも、私のために我慢してくれてるんだ、嬉しい、って気持ちも僕には分かるけど……」
「あほか。だから日本人は少子高齢化してるんだろ。我慢させて嬉しいなんて自分勝手にもほどがあるだろうが。そんな発想ばっかりしてるから自分に自信が持てないやつが増えていくんだろ。我慢の中から生まれた親愛に満足できる奴なんかいるかっての」
 強い言葉だ。康平はそう思った。平次はいつもこんな風に真理をついたようなことを言う。でも、それで納得できない人が居ることを康平は知っていた。何より自分がそうだから。
「甘いものを甘いというのは当たり前なの? それなら、今よりももっと甘いものが現れたとき、平次はどうするの? より甘い方をとる?」
 康平は平次の彼女をよく知らないけれど、親友の彼女ともなれば面識くらいはある。数えるほどしかあったことのない女の子だけれど、いずれ別れるくらいならば今別れておいた方が良いんじゃないかと思うくらいには、可愛げのある女の子だった。
 平次は豪快な笑みで答えた。
「なあコウヘイ、甘いだけじゃ飽きるだろ? スイカに塩をかけるように、歳月を共に過ごした思い出は甘さをより引き立てるんだ。俺は今まで見た全女の中で、あいつよりも自分にあった甘さを持つ女を知らないぜ」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

14/03/12 リードマン

拝読しました!
色んな意味で男らしい男ですね(苦笑)

ログイン