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堀田実さん

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人は死んだらどうなるの?

13/11/13 コンテスト(テーマ): 第二十回 【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 堀田実 閲覧数:1932

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 ある日のこと。AはひさしぶりにレンタルDVDを借りて来たようだが、どうやら調子に乗りすぎてあまり必要のないものまで借りて来てしまったらしい。根っからの怖がりなのにも関わらず、少し歳をとったからといって怖いものが得意になっていると思ったらしいのだ。生まれながらの性格というのは、その根が深いものほどいつまでも残り続けるというのに。案の定、Aは一人で寝れなくなりBの部屋にとぼとぼとやって来た。

A「ホラー映画見ちゃったせいで寝れないんだ」
それを聞いてBは笑った。
B「大丈夫。霊も魂もないから怖がることないさ。幽霊なんて存在しないよ」
A「本当?」疑いの眼差しでBを眺める。「でもさっきから僕の背後に誰かがいてずっと見られている気がするんだ」
B「それはただの勘違い。気にしているから実際にそうである気がしちゃうのさ」
A「ふーん。そうかなぁ…」
しばらくの間沈黙があった。そのまま眠りにつこうと思ってもやはり誰かの視線が気になって仕方がなかった。本当に幽霊というのはいないのか。だとしたら今感じていることは何なのか思い悩んでしまった。そしてAはふと思った。
A「あれ?それじゃあ、人間って死んだらどうなるの?幽霊にならないってことは、死んだら目の前が真っ暗になってそれで…。あれ?でも真っ暗になるのもわからないんだよね…??わからなくなってきた」
Bはまた大きく笑った。馬鹿にされたようでAは腹が立ったが何も言い返す言葉が見つからなかった。
A「それじゃあ…Bはどう思ってるの。本当に霊も魂もなかったら死んだらどうなるっていうのさ」
語尾を荒げるのを聞くと、Bは目を瞑りゆっくりと質問に答えた。
B「じゃあAに聞こうじゃないか。君はどうして今死んでないと言えるんだい?」
A「???」
Aは答えの意味がわからなかった。その意味を解釈するのにさえ手間取った。そしてしばらくして反論した
A「何言ってるの?生きているから今ここにいるんじゃないか」
B「ふーん」相変わらず動揺のない落ち着いた口調で言った。「じゃあ、君が生きている証拠になるものを教えてくれよ」
Aは考えた。目を瞑ってしばらくの間息を止めてしまっているように感じた。真っ暗闇が目の前を覆う。考えている間というのはいつもそうだった。
A「そうだ」やっとの事で思いついた。「僕の心臓の音を聞いてよ。胸に耳を当てればドクドクと鼓動が聞こえるし、腕にそっと指を当てれば正確に脈を測ることだってできる」
Aは内心生きている証拠というものを見つけることができてホッとした。自分がまさか死んでいるなんて考えると一溜まりもない。
B「あれ?おかしいな」しかし思いに反してBはからかいを含んだ口調で答えた。「それが君の生きているって証拠だっていうのかい?」
A「そうさ。だって僕は生きているから心臓が動いているんだし、あつい熱を持った血液は休むことなく体中を巡っているんだ。」
B「ふーん。それじゃあ君っていうのは君という身体だっていうことなのかい?」
また解釈するのに時間がかかってしまった。しばらく言葉なく考えたが結局Bが何を言いたいのかさっぱりわからなかった。Bはみたび笑った。
B「君はやっぱり君の言っている矛盾に気づいていないようだね」そう言うと宙で指を回しながらさも簡単な問題だというように得意げに言葉を続けた。「わかっていない見たいだから教えてあげよう。君はさっき霊や魂があるって言ったんじゃなかったかな?」
A「うん、そうだけど…」
またからかわれた事が腑に落ちなかった。
B「そう、確かに君はそう言った。でも次に生きていることを証明しろって言った時、心臓の鼓動って言い始めたんだ」
Aはこくりと頷いた。「そうだよ。確かに僕はそう言った」
B「じゃあ聞くね」諭すようなゆっくりとした口調でBは続けた。「さっき君は霊や魂があるって言ったけど、少し視点を変えて見れば霊や魂があるという事は、人間の本体が肉体じゃなく霊や魂にあるっていう主張に行き着くものなんだ」
Aは意外な答えに驚いたが確かにそうかもしれないと思った。
B「でも君は人間の本体が霊だって答えたのに、生きている証拠を求めたら動いてる心臓って答えた。それにしては心臓っていうのは身体的な答えだとは思わないかい?」
A「確かに…」Aは反論することができなかった。
B「それは列記とした矛盾なんだ。君の霊や魂に本質があるっていう主張だと、ずっと、死後でさえも人間は生き続けるという主張になってしまう」
Aはどうしても反論したかった。まるで自分の価値観が否定されているような気がして居心地が悪かった。
「でもそれは詭弁じゃないの?体が死んだらそれは死んだっていうことなんだよ。それは一般的にそうじゃないか。Aは話をややこしくしているだけで霊や魂とは全く関係がないことだよ」
B「じゃあ聞くけど」少し不機嫌になったのかツンとした口調で言った。「君はどうやったら生きていることを証明できるっていうんだい?」
A「……」
B「いい?僕はイジワルで言っているんじゃないんだ。これはとても重要な問題なんだよ。僕たちは生きている生きていると思っていても、実は死んでいたってことになったら大変なことだろう。君がさっき見ていたDVDだと、死んだことに気づかない幽霊っていうのもいるらしいじゃないか」
A「………」
B「そう君は答えられない。もし霊や魂が存在するという主張で生きていることを証明するとしたら、『意識があること』という答えしかあり得なくなるんだ。『今僕は確かに見ている。物を考えられるし痛みだって感じる。それは疑いようがない』という答えだね。でもその答えというのは、霊や魂を想定してしているからこそ死んだあとにも生き続ける何かを自動的に想定してしまうんだ。つまり君はずっと生き続けなくちゃいけない。でもその意味での生きるというのはとても曖昧で、正確には生も死もないただあり続けるという状態でしかないんだよね。つまり生きても死んでもいないんだ。」
A「B……君が何を言っているのかわからなくなってきたよ」
B「難しく言い過ぎたかな?単純に言えば、霊は生きていても死んでいてもあり続けるということだよ」そしてゆっくりと、力強く言葉を選びながらBは続けた。「もちろんこれは霊魂があるということを想定した場合だけどね。でも僕は霊魂を信じちゃいない」

 それから長い長い時間が経ったような気がした。さっきまで話続けていた言葉の端緒端緒がカーテンやベッドの裏に溶けていってしまったみたいに、部屋にはしんとした静けさに満ちていた。
Aは質問した。
A「君は死ぬのが怖くないの?」
B「怖いはずないさ。だって死んだら怖いという思いすらなくなるんだもの。いいかい?君が永遠にあると思っている意識というのは常に受動的なものなんだ。何かの刺激があれば意識は鮮明に起こるけど、何もない場所では何も起こらない。夢を見ない眠りのことを誰も覚えていないみたいに、意識は何もないところでは働くことはできない」
A「ふーん。それってなんだかつまらないね。」
Bはまた笑う。
B「そんなことはないさ。だっていつも誰かが見守ってくれているんだもの。僕がたとえ夢のない眠りに落ちていったとしても、君や家族や友人がいる。たとえ地球がなくなる時が来たって僕らの銀河には宇宙人がいるんだ」


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このストーリーに関するコメント

14/03/10 リードマン

拝読しました!
見守ってくれている誰かの存在こそが生者の証! まさしく!
傑作ですね!

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