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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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ぼたもちのひみつ

13/11/09 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:15件 そらの珊瑚 閲覧数:1951

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 女なんてつまンない。それは母さんを見ていていつも思っていたことだった。
 女なんてやっかいだ。今は自分にむけて思ってる。どんより重いお腹とその下のどろっとしたヘンなイワカン。
 初潮は初めての月経。その言葉は学校の保健体育の時間で習って何であるのかは知ってた。毎月一回子宮のかべがはがれて卵子と一緒に血になって出てくるって。ぐえっグロい、キモすぎる。それが自分の体の中で今まさに起きているなんて。なんで女に産まれたんだろ。正直ヘコむなあ。
「ねえちゃん、なんでねてんの?」三歳年下の小学三年の弟がのんきに聞くからイラッとする。男はあっちいってろ、しっ、しっ。しばらくおまえとは遊ばないよ。大体なんだよ、トランプで負けそうになると泣いて並べたふだをぐちゃぐちゃにして『今のは勝負ナシだー』まるで赤ちゃんじゃないか。『ボクしんけいすいじゃく、とくいなんだ』ってどの口が言うんだろうね。そんな弟をせめると、母さんは私にむかって目配せする。まあまあ、お姉ちゃん、負けてあげなよ、っていうように。おまえは猫とでも遊んでろっ。
 大体男って産まれたってだけで父さんはなにげに『あととりむすこ』と弟の事を呼ぶ。そのたび私がちょっぴり傷ついているなんてこれっぽっちも思ってないだろう。まして弟をねたんでいる事さえ。いつか嫁にいってしまう娘ってのは大切度からいって息子にはかなわない気がする。
 女ってやっぱりつまンない。
 父さんは夜おそくに会社の人をつれて帰り夕ご飯はとっくに終わったのにそのたび母さんは又台所で食事を作って出さなくちゃならない。それなのに「いやあ、グサイでして」って母さんのことを言う。グサイ……それが愚かな妻って書くって知ってからますます父さんのことをキライになった。もっとわかんないのは、そんな風に言われても笑っている母さんだ。「もうあんた達は寝なさい」って言うから私と弟は先にねてしまうけど、きっと最後にねるのは母さんだ。父さんがいつものごとくよっぱらってねてから、後片付けもして、じいちゃん、ばあちゃん家族全員が入った後のぬるい風呂につかってねるんだろう。  
 それでも朝は誰よりも早く起きて朝食やら弁当作りで忙しい。父さんは「おーい」の一言で母さんに新聞を持ってこさせ、くつをみがかせ、くつべらを手渡しさせ(すぐそばにあるんだから自分でやれよ)あげくのはては玄関さえ自分では開けない。
 母さんを見てるとあの子を思い出す。学校で飼ってる小さなはつかねずみ。起きている時はいつもおもちゃの中に入ってくるくる回り続けている。何が面白いんだか。たまには休めばいいのに。

「お姉ちゃん、今晩お赤飯炊こうと思うんだけど……」母さんの言葉におもわずギョッとする。
「絶対やめて!」赤飯を食べ家族で私の初潮をお祝いする図。父さんに『おめでとう』なんて言われたらどんな顔したらいいのよぅ。今から家出してやるから!家族だって個人じょうほうほご法は使うべきだ。
「そうよねえ。母さんもあれはチョットねえ」母さんも赤飯を食べて初潮を家族で祝う主役をやらされたという苦い思い出があると教えてくれた。
「だからね……。これだったらみんなに知られないでしょう」まるでいたずらをたくらむ子供みたいに母さんは私の耳に内緒話するようにささやく。
「あの時は母さん嫌だなあって思ったけど今思い返すといい思い出よ。だってあの日があったからお姉ちゃんを産む事が出来たんだから」
 今日は母さんが不幸なねずみではなくて幸せなねずみに見える。
 
 夕飯はいつもより少なめの量だった。母さんのねらい通り弟が「これじゃ腹いっぱいになんないよ」とごねる。
「だったらこれ食べる? たまには食後のスイーツっていうのもおしゃれかなって思って」出てきたのは母さん手作りの『ぼたもち』だった。なんだよ、ちっともおしゃれじゃないやと、ぼやく弟と一緒に食べる。つぶあんの中に隠されていたのはお赤飯。
「いがいとイケる! お赤飯入りぼたもち」弟はあっというまに三つも平らげた。じいちゃんばあちゃんも美味しいと食べている。
「俺はいいよ、酒にぼたもちじゃうまくねェや」父さんが言うと
「いいえ、あなたにも一個は食べてもらいますよ」いつになく強気の母さんに父さんは一瞬ぎょっとして、でも結局食べた。私は笑いをこらえてた。母さんが目配せする。ほらね、誰も気づかないでしょ。お、め、で、と、う。声は出さなかったけれど口の動きでそう言っているのがわかった。やっぱりはずかしいけど、いつかこのぼたもちのひみつの事を私も幸せな気分で思い出す日が来るのかな。
「ねえちゃん、トランプやろうよ」「負けても、ずる、なしだよ」「もーわかってるさ」
 だけど負けたら泣いて今のは勝負ナシってまた言うんだろ。まあ今夜くらいはおおめに見てやるか。そんな気分だ。





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このストーリーに関するコメント

13/11/10 笹峰霧子

どの家庭にでもあるような平和な家族のひとこまを、主人公のちょっぴりユーモラスで青春時代特有の反抗的な語り口で書かれたモノガタリ。
味わいがあり自分の思い出も重なって…、一気に読ませていただきました。

13/11/10 草愛やし美

そらの珊瑚さん、拝読しました。

そうなんですよね、あの儀式は嫌ですよ〜、何でお祝いなんだか、大人になんかなりたくないそんな思春期に。大人に早くなりたいって人もいるだろうけど、私は嫌で仕方なかった。実際からかわれた。うちは姉妹だけだったので、まだましだったかも…この主人公のように弟だと余計嫌だろうと思います。女であることが目出度いなんて、まあよく考えれば子を儲ける特権みたいなものを持ったお祝いなんでしょうね。でもあれは、男はんにはわからんと思う。恥ずかしい年だもの。
素敵なお母さんの配慮が、とても温かいですね。このお母さんがいてこのお家は回っている。最近は母や父の位置づけも、少し変わってきてますね。昭和の匂いのする話で、ほんわかする終わり方でいいなあと感じました。

13/11/10 鮎風 遊

ええ、びっくりしました。
弟、まるっきり俺じゃん、と。

懐かしかったです。

13/11/10 murakami

いいお話ですね。
私も弟がいて、小さなころに男の子のほうがかわいがられてずるい、とよく思っていたので、共感いたしました。

おはぎの中にお赤飯という、お母さんのやさしい気遣いが心に残りました。

13/11/11 泡沫恋歌

珊瑚さん、拝読しました。

女なんてつまンない。
確かに私らが子どもの頃には「男尊女卑」が普通にあって、女だということで、
いろんな行動に制約がありましたよね。
男のわがままや横暴をサラッと受け流せるのが女性の力量みたいなところがあって、
そういう出来た女性が多かったので、家で男性はリラックスできたから「企業戦士」
今風にいうと「社畜」に徹する事ができたんだと思います。

うちは貧乏だったのでお祝いとか、何もして貰えなかったけど3つ年上の姉が生理用品の
使い方をトイレで詳しく説明してくれた(笑)

そんな古い過去を思い出して感慨深い作品でした。

13/11/13 そらの珊瑚

笹峰霧子さん ありがとうございます。

私も自分自身の思い出も織り交ぜながら(弟はずるの名人でしたから)
書いてみたりしてみました。
過ぎ去ってみると、なんてのどかで平和だったんだろうって思います。

13/11/13 そらの珊瑚

草藍さん ありがとうございます。

思春期まっただなかで、お赤飯はちょっと辛いですよね。
時代的には現代をイメージしていて、言葉使いとかそうしたんですけど
そう言われてみれば、ちょっと昭和ぽかったかもしれませんね。

13/11/13 そらの珊瑚

鮎風 遊さん ありがとうございます。

負けず嫌いだったんですね♪
うちの弟とおんなじです。

13/11/13 そらの珊瑚

村上さん ありがとうございます。

私と同じですね!
実際食べたことはないのですが
一応甘いあんこで包まれているので、スイーツってことにしちゃいました。

13/11/13 そらの珊瑚

恋歌さん、ありがとうございます。

そうそう、愚妻なんてもう死語なんでしょうけど、どれだけ亭主関白を許しているかが妻の技量で、それが大きければ大きいほど家庭が正しく回っている、そんな夫婦の立ち位置はやっぱり昭和の匂いですね。
同性のきょうだいっていいですね。うらやましいです♪

13/11/13 そらの珊瑚

OHIMEさん ありがとうございます。

そうなんですか、それはざぞびっくりされたことでしょうね。
今の小学校では男女一緒に性教育はするようですが
昔は女子だけ体育館に集められて、別々でしたっけ。
昔は手作りのスイーツといったら、あんこ系の和菓子が多かったと思います。

13/11/18 ドーナツ

拝読しました。


親の気持ちとしては うれしいでしょうね、でも、娘からしたら、、ね。
すごうよくわかります。特に、父親に知られるのは恥ずかしかったです。

今思うと、懐かしいですね。

とってもあったかい気分に浸れるお話をありがとございました。

13/11/19 そらの珊瑚

ドーナツさん、ありがとうございます。

子供から女へ変わっていく入口ですから、子供もそうでしょうけど
男親もきっと気恥ずかしいでしょうね。
でもやっぱり家族としてお祝いする気持ちは大切にして、
控えめにお祝いするのがいいのかなあ?

14/03/10 リードマン

拝読しました!
大傑作ですね! 女性が主役の時代にしたい!

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