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もやしっこさん

こういうの何を書けばいいのか分からないので割愛します。

性別 男性
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赤ずきん君

13/11/09 コンテスト(テーマ): 第二十回 【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 もやしっこ 閲覧数:1008

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夏が顔を出そうとしているかどうか迷っているような日に、僕はおばあちゃんの家にお見舞いに向かっている。
薄い布のシャツ一枚しか着ていないから動きやすくて爽やかな気分になれるはずだったんだけど、心配症な母さんが目立つようにと、どこからか取り出した赤頭巾を僕の頭に結びつけたのだ。でも、僕は男なのにという不満も母さんの心配気な顔には敵わないから素直に僕は赤頭巾を被っている。
おばあちゃんの家は、村から少し歩いた森の中にあるのだけど、正直な所、僕達と一緒に住んでくれればお見舞いも楽になるのにって思う。余生ぐらいは静かに過ごさせてくれとおばあちゃんは口酸っぱく言うけど、会いに行かないと文句を言うのはどっちなんだか。
森までの途中に美味しそうな木の実を付けた木が一本生えていて、僕はそれをたんと取りポケットに入れておいた。さっきからお見舞い品が入ったバスケットの中が気になって仕方なかったからだ。木の実でも食べなくてはやってられない。いくら風景が緑一色だからってお腹だけは落ち着かないものだ。


森の入口は、出口かもしれないけど、いつもよりも鬱蒼としていた。いつもならどこかの木こりが明るく仕立てあげているのに、これはどういうことなんだろうか。もしかしたら、森を間違えてしまったのだろうか。
僕はそそかしっくはない方だけど、考え事をしていると周りに目がいかなくなるらしいから、森を間違えてしまうことだってあるのかもしれない。とりあえず、どうにかしてこの森が正しいものかを考えなくてはならない。おばあちゃんも家までの道に看板でも立ててくれればいいのに。
すると、後ろから可愛らしい声が聞こえてきた。
「あの、あなたもこの森に用があるの?」
振り返ってみると、そこには僕と同じように赤頭巾を被った女の子がいた。赤頭巾が可愛らしい顔をすっぽりと包んでいて、薄く染まった頬に似合っていた。
僕はこの森に用があるかもしれないということを丁寧に説明した。たいがいの女の子が物分りの悪いというのもあるけど、親切は返ってくるのだからすべきだ。おばあちゃんに口酸っぱく言われたことだ。
しかし、彼女はどうして僕のことを変なものでもみるかのように見ているのだろうか。恥ずかしいから鏡でじっくりと見たわけではないが、僕の見た目はそれほど悪い方ではないし、確かに女の子のような顔立ちだが、それは珍しいことなのか分からない。
あ、女の子。
そこで僕は自分が赤頭巾を被った男の子、いわば赤ずきん君であることを思い出した。そして、目の前にいるのは絵に描いたような模範的な赤ずきんちゃんではないか。何ということだ。これではまるで僕が、目の前の理想的な赤ずきんちゃんにも負けないような可愛らしい、女の子勝りの顔立ちをしていることを鼻にかけて、皮肉るように赤頭巾を被っている男の子ではないか。これは参った。
こんな風に困惑しているよりも、赤頭巾を取り外すことが第一にすべきことであるのは明白だが、一行前の通り困惑しているのだから仕方が無い。
「その赤頭巾似合ってるわよ」
と彼女は言い、それをきっかけにお腹を抱えて笑った。それが下品な笑い声であれば、僕のこの様もピエロの化粧のような意味になるだろうに、彼女は鈴の音のような声で笑っている。何のためにお腹を抱えているのだ。お腹から声を出し、僕を安心させてくれ。それでは、お洒落をしようと背伸びをしている男の子を笑う母親みたいではないか。おかげで母親の心配気な顔を思い出したせいで、赤頭巾を外し辛くなった。
相も変わらず考え事をしていたが、それだけが脳ではないので、彼女に赤頭巾を被る理由を弁明した。
「おかしなお母さんね。でも、似合ってるのは本当よ、ふふ」
彼女は最後っ屁ならぬ最後っ笑を残して、自分のことを話した。どうやら、彼女もおばあちゃんのお見舞いに来たようなのだ。最近のお婆さん達には森で余生を過ごすのが流行なのかと変に思ったが、僕のお婆さんと彼女のお婆さんは同一人物らしいのだ。要するに、僕と彼女は従兄弟ということだ。これ以上の説明は割愛する。
というわけで、僕はお見舞いを行く必要が無くなったわけだから、彼女に深々と一礼をし別れ文句を丁寧に述べて、お見舞い品のバスケットを差し上げ踵を返そうとしたが、そうは問屋が卸せないものが世の常らしい。これもおばあちゃんが口酸っぱく言われたことだ。
僕は彼女を連れ立っておばあちゃんの家に向かった。途中、木の実を食べていたら、彼女が物欲しそうに見ていたので、木の実の場所を説明し数粒ほど手渡した。彼女が、食べ歩きと拾い食いに関して注意してきたので、家から持ってきたと言い直し立ち止まってあげた。
立ち止まると途端に森を感じられて不安になった。自分の小ささが身に染みる。彼女の赤頭巾がどことなく目障りに思えた。


森の入口から少し歩くとおばあちゃんの家に着いた。相も変わらず、月並みな家だった。絵本に出てきそうな木でできた家だ。
僕は大きな声でおばあちゃんの名を呼び、玄関のドアを開けて、自分の家のように遠慮なく歩いた。効果音をつけるなら、ずどずどと言いたいが、実際の音はひょこひょこなのだから可愛らしいものだ。
おばあちゃんの部屋の前に着き、数回ノックをしもう一度声をかける。すると、嗄れたおばあちゃんの声が返ってきた。これは意外だった。お話好きのおばあちゃんの喉がここまで痛めつけられるなんて、たいそう酷い病なんだろうな。移ったりでもしたら一大事だぞ。おばあちゃんでさえ嗄れるのだから、僕の声はひょっとしたら獣のようになるかもしれない。そして、お母さんにも移り村中が獣の声で溢れるようになったらもう大変だぞ。勘違いした本物の野獣が来るかもしれない。そうなれば、僕達の村はお終いだ。ということは、結果的におばあちゃんは森に住んでいて良かったのだな。いや、でも森に住まなきゃそもそも病に罹らなかったのではないか…。
なんてことを考えていたら、彼女が平気な顔で扉を開けようとしている。咄嗟に僕は彼女の手を握り扉を開けるのを阻止した。彼女が目を見開いてこちらを見ている。
病が移るといかに大変なことになるかを伝えようとするが、結論から言う方が得策か悩む。どうやら彼女はおばあちゃんの病の酷さを軽くみているようだから、そのことを説明しなくてはならないが、そんなことをまず言ってみろ。病気に移るのが嫌だと勘違いされ飽きられ顏で扉を強引に開けられるのが落ちじゃないか。かと言って、村の潰滅から説明すれば
突拍子もないことを言うことになるだけだ。
そうこうしているうちにおばあちゃんが僕達を部屋に入るように催促してくる。
仕方が無い。女は度胸ならば男も度胸だ。なるようになるだろう。
彼女の手を握りながら扉を開けると、ベッドには大きな膨らみができていた。おばあちゃんが布団に包まっているようだ。
「おばあちゃん、酷そうだけど大丈夫?お見舞いに来たよ」
と彼女が言った。僕も適当な言葉をかける。
すると、おばあちゃんが、よく顔の見えるようにこちらに寄ってくれというじゃないか。近くで聞くとなおさら獣のような声で、これはおばあちゃんの喉だから声が出せているのではないだろうかと思った。僕の喉ならば、声を発そうというものならば、思わず悲鳴を上げるほどの痛みが喉に走るだろう。つまりは、永久的な痛みが喉を襲うわけだ。
彼女は悲しげな顔をして、おばあちゃんに近づく。心の底からおばあちゃんに同情しているのは彼女もらしい。僕もこうみえて悲しんでいる。残念だけど、僕は孫だからね。
それよりもさっきからかなり獣の臭いがするのは、おばあちゃんの声からに触発されて僕が臭いを思い出しているだけなのだろうか。
「まあ、なんて酷い顔色なの、おばあちゃん。可哀想に。私の顔なんかで良ければいくらでも見てください」
そう言いながら彼女はおばあちゃんにより近づいていく。
正直に話そう。僕には、さっきから見えるおばあちゃんの顔が、どうにも狼のように見えるのだが、これは気の迷いか気の狂いのどちらだろうか。僕がおかしいのか彼女がおかしいのか。おやおや、おばあちゃんもとい狼さんが大きな口で彼女を食べようとしているじゃないか。でも、彼女の笑顔は不自然ではない。むしろ、不自然なほど満面の笑みだ。
僕が唖然としている間に彼女は狼さんに食べられた。僕からすれば石並みに硬いであろう頭を、柔らかい、お腹周りの贅肉かのように狼はかぶりついた。味わうように咀嚼をし、美味しい物を食べる前のように喉を鳴らして飲み込んだ。次に、上半身に取り掛かろうとする。
僕は逃げ出した。


なんてことを考えているうちに、森の入口に、出口かもしれないけど、着いた。いつもと違い鬱蒼としているけど気のせいだ。


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このストーリーに関するコメント

14/03/03 リードマン

拝読しました!
なんというか、猟師さんがいなかったのがマズかったんですかねぇ

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