七緒紘子さん

作家の卵 読書に飽きたらず作家の真似事をしています

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

2

交換

13/11/07 コンテスト(テーマ):第四十四回 時空モノガタリ文学賞【 復讐 】 コメント:2件 七緒紘子 閲覧数:1278

この作品を評価する

死後の世界が本当にあるなんて、死んでみなければわからないものだ。

私は死後の世界なんて信じていなかった。霊感なんて一切なかったし、幽霊も、UFOも、リトルグリーンマンも見たことなかった。それどころか神様さえ信じていなかった。私が死んだのは、神様を信じなかった罰なのだろうか?

そして神様は、死んだあとも私に試練を与えようとしていた。

私は暴漢に襲われて殺された。ある日の会社帰りの夜道で、突然後ろから襲われたのだ。抵抗する間もなかった。私は犯人を憎んだ。警察は犯人を捕まえることができなかった。私は警察の無能さを呪った。私は復讐がしたかった。しかし、死んでしまった私に何ができるだろう?

私はどうやら、幽霊というやつになってしまったらしい。生きているときには信じてもいなかったものに。でもなってみると、案外あっさりとこの状況を受け入れている自分に驚いた。幽霊になってみて気付いたのは、世の中結構幽霊で溢れてるな、ということだった。死んだ後もこうやって世の中に溢れかえっているんだったら、生きているときとそんなに変わらない気がした。

だって幽霊になっても、ちゃんと目も見えるし、人が話す声だって聞こえる。それどころか、憎しみや傷みなんかの感情だってちゃんと感じる。いったい死後の世界って何なんだろう?もう死んじゃったんだから、これ以上死ぬこともないし。これってつまり、永遠の命を手に入れたってこと?

なんてことを考えてたら、ある幽霊が話しかけてきた。ほら、幽霊だってちゃんと会話できるんだ。生きているときと違うのは、肉体がないことくらいだ。

「あなた最近死んだ方ですね?え、何故わかったのかって?幽霊になりたての方はオーラの色でわかるんです。ところであなたにお伝えしなければならないことがあります。あなたはこれからある選択をしなければなりません。このまま幽霊として永遠に漂うか、それとも別の命を得て現世に戻るかです」

私は驚いた。現世に戻る?つまり生き返るってこと?そんなのそっちを選ぶに決まってるでしょ!でも本当にそんなことできるの?するとまるで私の考えを見透かしたかのように、その幽霊はこう続けた。

「慌てないでください。二つ目の選択肢には条件があるんです。あなたはもう死んでしまったのですから、新しい命を得ることはできません。先ほど言ったように、別の命を得て生き返るのです。つまり今生きている人の中から一人を選んで、その人の命と引き換えにあなたは元の世界に戻ることができます。」

期待は一瞬にして失望に変わった。そんなことできるわけがない。誰かの命と引き換えに自分が生き返るなんて…。

そのとき、はっと心の中にある考えが浮かんだ。あいつだ。私を殺したあいつの命を引き換えにすればいいんだ。私は思いがけず復讐の機会を手に入れて喜んだ。

「当然の考えです。あなたには復讐する権利がある。ここには法律も道徳もありませんから、あなたは命を奪いたい相手を好きに選ぶことができます」

その幽霊はそう言って微笑んだ。しかしその微笑みは暗く、どこか歪んでいた。そうだ、私には復讐する権利があるんだ。私には恋人がいた。結婚の約束までしていた。愛していた。会いたかった。私の命を奪った相手の命を引き換えにもらったって、なんのバチも当たらないだろう。

私はその男の命を引き換えにもらうことにした。私は犯人の顔は見なかったが、男だということはわかっていた。私はふと疑問に思って、その幽霊に尋ねてみた。あなたは誰かの命と引き換えに生き返る選択をしなかったのかと。すると幽霊は答えた。

「生き返っても何もいいことなどありません。こうやって幽霊として永遠に存在している方がはるかに有意義だとは思いませんか?」

やがてその幽霊が私を殺した犯人のところへ連れていってくれた。「あの男です」と言われて、私はその男の顔を見た。私は愕然とした。その男は私が結婚の約束までした恋人だったのだ。幽霊が最後にこう言った。

「言い忘れていましたが、一度生き返ると次に死んだときには永遠にこの世界から消えてしまいます。幽霊ならば永遠にこの世界に留まっていられたのです。ではお別れです」

そう言うと、その幽霊は私の目の前から消えた。私の恋人は街の中を歩いていた。見知らぬ女と一緒に。すると突然、私の恋人は何かの力に引っ張られるように、激しく車の行き交う道路へと投げ出された。次の瞬間、彼の体は大型のトラックに撥ね飛ばされた。道路に横たわった彼の頭は潰れていた。

気が付くと、私は街の中に立っていた。道路には人だかりがして、悲鳴や助けを呼ぶ声が行き交っていた。私はふと、ショーウインドに浮かぶ自分の顔を見た。その顔は、私の恋人が死ぬ前に一緒に歩いていた女の顔だった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

13/11/18 芝原駒

拝読しました。
選択肢を上手く活かした作品でした。情景描写がほぼ皆無ながらも、主人公の自問自答がすらすら進み、読みやすかったです。

ただストーリ展開が行き当たりばったりで、もう少し考えさせられる何かが欲しかったというのが一読者としての感想です。特に案内役の都合の良さと、顔も知らぬ暴漢に夜道で襲われながらも「恐れ」より「恨み」を抱くことのできる主人公の現実離れさに違和感を覚えました。

次回作を期待しています。

14/02/16 リードマン

拝読しました。
なんというか書きたい事が先行してしまっていて、殻を破る事がまだできていない、要するに私みたいだなと感じました。もう少しだけでも構わないので、読者が付いて来れるような説明が必要だと思いましたね。
失礼しました。

ログイン